相手にどう思われるか考えて仲間を選べよ!
ちびまるフォイ
実力で選ぶならやっぱりこの力
「魔王様、せんえつながら申し上げます。
先ほど四天王のひとりが倒されたとのこと」
「なんだと。私が見ていない間にずいぶんと頼りない存在になったものだな」
「めんぼくございません」
「ここに四天王を集めろ。私が喝を入れてやる」
「それが……」
「なんだ? 言ってみろ」
「他の四天王もとい三天王はすでに逃げ出したとのこと」
「なんだと!?」
「彼らが言うには、最上階に最も強いメンバーを配置するより
最初に最強を配置したほうが、戦闘回数減らせるし得だから、と」
「え、つまり、最強が序盤に負けちゃったから
以降のみんなは戦意喪失したってこと!?」
「おおせの通りで……」
「ふぬけすぎる!! なんということだ!!」
「魔王様、どうか冷静に!」
「ええい! 四天王と銘打っておいて
1人しかいなかったら魔王である私の評価にも傷が入るではないか!」
「いえそのようなことは……」
「いいや! 勇者どもに"ププ。魔王のやつ四天王の1人しか雇えなかった"と思われたくない!」
魔王は玉座から立ち上がって宣言した。
「新四天王を作るぞ! 世界の腕利きの魔物どもを集めるのだ!!」
かくして四天王オーディションが始まった。
すでに1人倒しているがあれは門番という設定をあとづけし、
勇者側にはこれから四天王がやってくるぞ、と話を通す予定である。
こそくである。
けれどそれが許されるのは魔物だから。
「えーー、みなさん、たくさんの応募ありがとうございます。
これから、私の魔王軍に入るべき四天王を決めます」
四天王候補の魔物たちは血気盛んに目をギラつかせた。
「四天王に入るためにはそれなりの実力が必要だ。
そして、それは前の四天王よりも強い力が求められる。
そこで私がこの先に用意したさまざまな試練を超えたものだけが
新四天王として私の魔王軍に迎え入れてやろう」
魔物たちは歓声をあげた。
魔族としてうまれたからには四天王として輝くのが誰しもの夢。
魔王軍の四天王オーディションが開始された。
それから魔王はゴール地点へと移動した。
「ククク。どんな猛者がやってくるかな」
「魔王様、今回の試練はずいぶんと厳しいかと」
「前の四天王はあまりにヘタレすぎたからな。
あれぐらいの困難を超えてこそ新四天王としてふさわしい」
「あ! 魔王様! ひとりめが来ました!」
煉獄の炎をものともせずにやってきたのは、怪力自慢の魔物だった。
「ウォーー!! ニンゲン全員ぶっころーーす!!」
「ククク、なんという覇気。そして力だ。
魔力はなくともこの圧倒的なフィジカル。
まさに四天王の一角にふさわしい」
「こまけぇことはわがらねぇ! ニンゲンぜんいんころーーす!」
「頭が足りない部分はありそうだが問題はないな。
さあ、この四天王シールを貼るのだ」
「ウォォーー!!」
1人目の魔物を見送った魔王と秘書はうれしそうにした。
「魔王様、あの魔物の腕力はそうとうなものです。
これは幸先のよい四天王オーディションとなりましたね」
「そうだな。ククク、戦慄する勇者の顔が浮かぶわ」
「あ、2人目が来ました!」
絶対零度の森をゆうゆうと抜けてきたのは、筋骨隆々な魔物だった。
「グォォーー! ニンゲン食ってやるーー!!」
「魔王様、今度も強そうですよ!」
「あ、ああ。頼もしいな」
続いて3人目がやってきた。
「ギャオオオ! 勇者ころすゥゥゥ!!」
「魔王様みてください! なんて強そうな牙と爪でしょう!」
「う、うん……」
そして最後の4人目がやってきた。
「ゴアアアーー!! すべて焼きはらってやるーー!」
「魔王様! 今度もその……強そうですよ!」
「もういいわーー!!」
魔王は四天王が横一列に並んださまを見て耐えきれなくなった。
「魔王様、一体何がご不満で……?
こんなにも強そうな4人が揃ったじゃないですか」
「こんなに画的に変化のない四天王があるか!」
四天王が一同に介しているはずなのに、
どいつもこいつも同じ見た目に見えてしまう。
「ニンゲンころーーす」
「ニンゲン食ってやるーー!」
「勇者ころぉぉす」
「焼きはらってやるーー!」
「全部いっしょだよ!!」
あまりに脳筋に全振りした四天王を見て魔王は耐えきれなかった。
けれどその後も四天王候補生は誰も来ない。
「しかし魔王様、あの試練を超えたわけですし実力はたしかですよ」
「実力はね! でも広報的にどうなんだ!」
「広報といわれましても……。たしかにどいつもこいつも
腕力しか取り柄がないのは事実ですが、魔王軍としては……」
「私はいやだぞこんな四天王! 最終階層までいってもまったく敵のデザイン同じなんだから!」
「しかし、別ベクトルの魔物を四天王に雇ったとして、
実力がともなわなかったんじゃ、それこそ四天王として問題では?」
「グヌヌ……。それはたしかに……」
実力を優先すれば、あまりに一辺倒な四天王になる。
かといって、絵面を優先すれば実力がおろそかになる。
二者択一に迫られたとき、魔王がひらめいた。
「思いついた。どちらも満たすとっておきの策があるぞ!」
「そんなことができるんですか?」
「ククク。表の四天王を用意するのだ。広報用の四天王をな」
「へ?」
「表向きは個性豊かなメンツを四天王として揃えておくのだ。
で、実際に魔王城に来たら、こいつら脳筋クインテットが相手をするというわけだ」
「……それ詐欺っぽくないですか、魔王様。
パンフレットを見てきたら実物ぜんぜん違う的な」
「バカを言え。どうせ生きては返さん。
四天王のラインナップを見て文句があっても、
それを伝えることはできんさ」
「さすが魔王様。なんというか卑劣です!」
「ククク。個性などうわべのものにすぎない。
実力で正しく評価できてこそ、本物のリーダーというわけだ」
その後、魔王軍には「表の四天王」として顔貸し要因が募集された。
巨漢で怪力の魔物。
妖艶で精神攻撃が得意な魔物。
老体でありながら魔法を操るもの。
影に住み正体を表さない謎の魔物。
という配役で四天王が顔採用で用意された。
人間界には彼らが四天王ということで情報を流しておいた。
なお、実際には脳筋4匹の大連戦が控えているなど知るよしもないだろう。
「クックック。これで魔王の四天王選出がダサすぎると
下等な人間どもに思われないだろう」
「魔王様ほどのお方なら人間からの評価など気にしなくてもよろしいのに」
「そういう問題ではない! なんか気分的に嫌なのだ!」
魔王がダダをこねたとき、魔王城の扉が開いたことをアレクサが伝えた。
「ククク。来たようだな勇者め」
「大丈夫でしょうか……?」
「やつはきっと私の個性豊かな四天王の対策のため
さまざまなメンツを揃えて準備してきたのだろう。
そこを脳筋一択の四天王が粉砕してくれるだろう」
「そうですね」
「ゆくぞ。勇者があわれに死ぬところをこの目で見たいからなぁ」
魔王は嬉しそうに最初の四天王がいる階層へ飛んでいった。
そこでは今まさに四天王との戦いがはじまんとするところだった。
「ウォーー! 人間ころーーす!!」
怪力自慢の四天王が大きく吠えた。
「なんて力だ! みんな! 協力して倒すぞ!」
勇者は剣をかまえて後ろの仲間たちに声をかけた。
「おう!! 魔物をぶっころしてやる!」
大きな斧をかついだ戦士がうなづいた!
「まかせろ! この拳はすべて破壊する!!」
丸太のように太い腕を持った武闘家がかまえる!
「っしゃああ! 叩き切ってやる!!」
身の丈以上もある大剣を構えた男が叫んだ!!
「僕たちの力で四天王を倒そう!!」
ムキムキの勇者が胸筋でマントのボタンをはじけとばした!!
魔王はそのメンツを見て叫んだ。
「お前、少しは個性かぶらないメンバー選べよ!!!!」
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