8 ストーンゴーレム参戦
『警告! 時間経過ニヨリ封印ノ間Iカラボスガ移動シマシタ。
クルガ・オルデンガボスニ接触! 直チニ支援ニ向カッテ下サイ!』
は、え、ええええええ!?
時間経過とかあるんだ!? 早く言ってくれないかなぁ!?
でもまずいよこれは、クルガさんとは言え、いきなりボスに攻撃されるような状況。
しかも音からしてこれ、絶対にゴーレム系統でしょ。
近接武器は絶対に向いてないモンスター代表の。
つまりは、こういう、ことです答えは、クルガさんのもとへ急げぇえええええ!!
恐らくクルガさんが突破したと思われる残りの部屋を駆け抜ける。
これでも速度はこの迷宮基準で200あるんですよっ。
正直、基準値とかその値がどれくらいあるのかわからないから、速いほうなのか遅いほうなのかよくわからないけど。
「クルガさんっ、無事ですかぁ」
人影が見えたから、声をはってみた。
と、どうやらクルガさんは私の予想が的中したようで、ゴーレムの最下位種のストーンゴーレムと交戦中だった。
「ぐ、ぅ……」
そして意味が分からない。
なんで短剣でストーンゴーレムのこぶしを受け止めることができるんだろう。
……軍人だから? あ、我ながら意味が分からない。
うぇえ、怖いけど援護入るしかないよねぇ。
クルガさんとストーンゴーレムが組み合っている直線から垂直方向に回り込み、全力で助走をつける。
とおりゃあ!
「いっけ……!」
必殺、飛び蹴り。
戦闘能力皆無なんだけど、蹴り技だけは人並みにできる。
かつ、骨が折れてもかまわないってぐらいのスピードで突っ込んだので、無事ストーンゴーレムの力がそれ、クルガさんが押し切った。足がすごく痛い。
「ナイスアシストだな、イリシャ」
「お褒めにあずかり光栄でーす。というわけでほい、クルガさんにプレゼントです」
ゲットした魔法銃をクルガさんに渡す。
いつぞやに見た表示から、多分だけどちゃんともう使えるようになっているはず。
クルガさんに解説をしたことがあったけど知識上知っているだけだから、使ったことはない。
つまり、ちゃんと使えなかったらどうすればいいかわからない。
どうかちゃんと使えますように。
っていうか、この迷宮のこのフロア。
ボスがストーンゴーレムで、このモンスターは何度も言ったように遠距離が圧倒的に有利なモンスターです。
で、このフロアの隠しボーナス? みたいなのが遠距離武器の魔法銃です。
いやっらしい迷宮だなここは! 状況的にボーナス必ずとっとかないと積むじゃん!
「おお、文字で見たがよく見つけたな」
放り投げたら危なげなく受け取ってくれた。さすが軍人。
関係があるのか知らないけど。
「まぁ、戦闘面はクルガさんに頼りきってるんで、頭脳面は頑張らないと。チームメイトとは対等でいたいですしね」
「イリシャのその考えはとても同意する。引き続き俺は戦闘面で頑張るとしよう」
結構いきなりボスと遭遇したけれど、クルガさんが落ち着いているおかげで、私も落ち着いて対応できる。
今も、振り下ろされた腕を後ろに飛びのいてなんとか避けれた。よし、うれしい。
ゴーレムの特徴として一撃が重い。本当に重い。
そして恨めしいことに、一撃が重いからと言って速度が遅いわけじゃない。
そして材質にもよるが、基本ボスとしてでてくるゴーレムは鉱石系統が非常に多い。
なぜなら硬いから。突破されないための要としては非常にバランスが良くて倒しにくい相手である。こんちくしょう。
そんなゴーレムにも弱点はある。
ずばり核。
……んなもん大概の一般モンスターにはついてるのが普通だろうがァ!
と、とあるモンスターの専門書みたいな本にそう書いてあったのを見て場所を考えず絶叫したことがある。
もちろんそんなのを読んでいるとなると場所はギルドにある、とある図書館。
図書館のルールとして静かに過ごしましょうというわけだから、当然しかられた。
ちゃんと反省した。でもさぁ、そんなこと書いてある本が悪くない?
っていう責任転嫁もした。ごめんなさい。
でもその本は本当に事実しか書いてなくて、ゴーレムと普通に渡り合おうと思ったらつるはしでも持っていくしかない。
武器につるはしとかゴーレム専門過ぎて他の魔物と戦いづらいから誰もやらない。
そもそもゴーレムは迷宮の中でも初めのほうしかあまりでてこない。
奥のほうになるとエメラルドゴーレムとかそういうのもでてくるけど、めっちゃレア。
その分倒した時のドロップアイテムが豪華なんだけどね。
で、まぁ、そんなどうしようもないかに思えるモンスター・ゴーレムなんだけど、体のどこかについてる核は破壊しやすい。ゴーレムの体の中では比較的。
それでもボスという職についていない一般モンスターの核よりは壊しにくい。
まぁでもそこ狙うしかほぼ倒しようがないからそうするしかないんだけど。
で、モンスターって基本どんな種類でも核のある場所には個体差があるんですが……。
現在目の前にいるストーンゴーレムは、どこにあるかというと、まず体の構成からか。
上半身と下半身で分かれていて、上半身は下半身からちょっとだけ浮いてる感じ。
で、その体のつなぎ目に紫色の正八面体の結晶があって、中には白い光が閉じ込められている、と。とてもきれいです。
で、そのきれいな結晶が核となっています。
つまり壊さないといけません。もったいない。
で、この説明をクルガさんにしないとかな。
前線という名のただただ注意を引く係を私に任せ、すぐさま後方支援にまわったクルガさんの、戦いなれてる感に感心しながら、必死でゴーレムの腕をよけ続ける。
ゴーレムってでかいんですよ。
いわゆる人間でいう肩にあたる部分もかなり高い位置にあるんです。
てことは腕を振り下ろした時に、こぶしが床についたら、腕の下にすきまができるからそこにいればいいと思うじゃん?
ゴーレムって近づきすぎると腕を横ふりしてくるんだよね。
攻撃範囲すっごい広いやつ。本当それきたら避けられない。
だからあまり近づきすぎないように気をつけねばなりませぇん。
っていうのもあって、ゴーレムと交戦するときには基本遠距離攻撃手がいることがおすすめだね。
んじゃ、伝えるか。
「クルガさん! 腕とかに防御されると思うんですけど、あの紫の石狙えます?!
あの石が核なんですが、注意ひいてないとずっと防御されてどうにもならなくなっちゃうんで、私は前線にいなきゃいけないんですが、私狙わないでうまくできますか?」
バク転でこぶし叩きをかわす、曲芸師にでもなった気分。
変な動きを我ながらしたけど、バランス崩しててこんな動きになっちゃったんだよね。
体力温存しときたいから、派手な動きはしたくないんだけど、どうも戦闘センスがないみたいだ。この自虐何回目だよ。マゾヒストなわけじゃないんだけどなぁ。
そうやってぴょんぴょん避けていると、私たちの周りをぐるぐる回りながら隙を狙っていたクルガさんの方向から、独特な破裂音が響いた。
よっし、普通に使えたみたいだね、あぶないあぶない。
そのあと、ちょっと私の位置からは腕が邪魔で弾を目で追うことはできなかったんだけど、すぐあとに核にバシッとピシっの間みたいな音がして細かいひびが入ったから、ちゃんと直撃したみたいだ。
「どうだ? これで問題ないか?」
後ろから涼やかな声が聞こえる。すかさず、第2撃が飛んで無事ヒットしてる。
すご。
「ばっちりです!」
だから今は、たとえこの装備に私という足手まとい付き、敵はストーンゴーレム。
こんな状況でも、無事に勝てると思ってたんだ。
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