6 隠し部屋出現
(ふ。見事だった)
そらみみ。……やめてほしい本当に。無駄に悲しくなってしまうから。
それでも、祈る。
そちらこそ、お見事でした。
「さて、と。とりあえず部屋を出ますかね。このままいるとモンスター寄ってきてでれなくなりそうっすから」
「……ああ」
「あ、休憩とかしなくていいです? 連戦しちゃいましたけど」
「少し、してもいいだろうか」
確かに、少し顔に汗を浮かべ、息を荒くしている。言われなきゃわかんないレベルではあったけれども。
「そいじゃあ、ちょいと見回りに行ってきます。しばらくしたら帰ってきますわ」
「お、」
「あ、あとですね、ルーンはこんな感じのやつで、いくつか集めたりすると、効果を発揮する不思議な石です。
便利っちゃ便利っすけど、邪魔っちゃ、邪魔ですねぃ。あ、邪魔なんで持っててください。あとで返してくださいよ」
ルーンをクルガさんに放り投げると、んじゃっ、と雑な敬礼をして、部屋の外へと飛び出す。
部屋をでたら、まっすぐな廊下が続いていた。パッと見なにもない。
違和感もない。ふむ、なるほど。
腰のポーチからおもむろにビー玉を取り出すと、床におく。
―――ころ、コロコロコロコロ……コンッ……コロコロコロコロ……。
転がっていったかと思うと、とある一箇所ではねて、また転がって行った。
「……ラァッキー」
ビー玉がはねたところの石畳をぴょん、とよけてビー玉を取りに向かう。
パッと見では普通にしか見えないような通路でも、地味な傾斜がついている。まあ、迷宮ではよくあることだ。
不自然にビー玉がはねたところが、トラップスイッチだろう。もしはねなかったら床に這いつくばって探すところだった。
傾斜がついている、ということから、なにかが転がり落ちてくる罠系統か。
ちょっと興味がないとは言えないが、好奇心は猫をも殺すというし、迷宮で余計なことはしないほうがいいからほうっておきますか。
ガラス玉を拾うと音と気配を消し、目の前にある扉に耳をつける形で張り付く。
2体。スケルトンか。このエリアに出没するモンスターの種類をとっさに頭に浮かべ、対応するモンスターを引っ張り出す。
特徴的なカタカチャという音と、2体いるというところから考えると、まあまずスケルトンで間違いない。
んじゃまあ、戻りますかね。罠を踏まないように端を歩きながら、罠にかかる。
自分でも変な行動をしているのはわかってはいるけれども、これが楽っちゃあ楽なのだよ。
先程見つけた傾斜の罠。通路が狭いということを考えると絶対にこの罠にだけはかかってはいけない。
だがしかし、ここは迷宮。それだけが通路に仕掛けられているわけがないのだよう。
壁に敷き詰められている石の隙間にとても自然にある小さな穴。その穴の直線上の床のとあるタイルを踏むと矢が飛んでくる。
次。目視ではわからないほどの細っっっっそい透明なワイヤー。これを切ると、天井からギロチンが降ってくる。
次。あからさまに怪しい赤色の石のタイル。と思いきや、何の変哲もない周りの石がごっそりと消える。
落とし穴トラップだ。落ちたら、まあやばいとこに落ちるのは確定。死かそれとも異様に強いモンスター層に飛ばされるかは知らんけど。
ま、序盤のほうだし、このくらいですかね。目についた危なくない罠全てを発動させながら、ひょいひょいとよけていく。
目視できるようにしたほうが避けやすいというもの。だいたい、一回発動した罠は例外を除き、再発動することはない。
穴とかボコボコあくから、再発動するには修復しなきゃいけないからねー。
「クルガさん回復しっましたー?」
「早かったな……」
「あ、回復できませんでした? そいつぁすいやせんっした」
「いや、そんな謝られているのかわからないような口調で言われてもだな……。まあ、回復はした。行くか?」
「準備が出来たんなら行きましょう」
「うむ。ああ、ルーンだったか。返す」
「どーも」
ルーンを手渡される。
さて余談だが、あのルーンの効能は不明。でも見た目的にごく弱いが体力回復のバフがついてるようなやつな気がした。
まぁ、気休め程度に渡しておいたが果たして効いたのやら。
「んじゃあ行きましょうか」
「待て」
「あれ、なにかありました?」
「いや、なにか、と言われてもだな。腕は平気なのか」
うで? う……で……、腕。はい?
と、自分の腕を見てみたら。赤ぁくただれていた。そういやあ、そんなこともありゃんしたね。
「大丈夫ですよ、若干ひりひりしただけで、命に別状はございまっせん」
その左腕を上げて顔の横でふりふりする。もう、ひりひりもだいぶ収まってそんなに痛くもない。
「怪我を放っておくのははよくない。後から化膿する可能性もある」
手をゆっくりと取られ、素早く包帯をまかれる。さらっとダジャレを言ったのは気づいてんのかな?
「……この包帯はどこから?」
「先程イリシャを治療しようと思ってな、持っていたタオルで作ってみた。多分清潔だと思うんだが」
器用に巻かれた腕の包帯を見て呆然とする。
「おい? なにか嫌だったか?」
黙りこくったあたしを見て、クルガさんが不安そうに聞いてくる。
「いえ……、誰かに心配されたのが初めてでしたので……」
おやまあびっくり。
「は? 初めて? 」
「いえいえ、なんでもございませんよぅ。さ、早く行きましょうか」
クルガさんをグイグイと廊下の方へと押しやり先に行かせる。
クルガさんが前を向いていることを確認して、包帯に触れた。
「……あったかい」
こんな冷たい場所で、人の温かさに触れるとは思わなかった。
「おい、来ないのか?」
「ああ、今すぐ行きますよー!」
「おお、お見事ですね」
(うむ、まこと)(立派な武人じゃ)
ガシャンガシャンと連続で崩れ落ちたスケルトンを見て思う。
パンパン、と時間があまりないので、手短かに黙祷。
「コツを掴んではきたが……あまり気持ちのいいものではないな」
「あたしの空耳だとは思いますが、スケルトンは褒めてましたよぅ、クルガさんのこと」
「いや、それは恐らく空耳ではないのだろう。イリシャは優しいからな」
「褒めてもなにも出ませんよ〜って、もう二体来ましたクルガさん!」
ガシャガシャと音を立てて、また部屋の奥からスケルトンが到来。
クルガさんに戦うのを任せ、部屋を見渡す。
見渡している途中、面白い罠を見つけたため、スケルトンが範囲に入るのを待って……罠発動。
罠スイッチを押し込むと、目のようなものが開く。
目が合う前に、天井まで飛び上がって、その目の死角に入る。
で、そうすると一番近かったスケルトンが、その目から放たれたレーザーに撃ち抜かれ絶命。
(ズルくない?)
いや、ごめんなさいって。
戦闘職じゃないけど役に立ちたかったんですって。
ついでに、その目は罠ではあるが、罠モンスターという種類のやつに入るので、短剣でぶすっとやっておく。
(お前、容赦ねえな……)
いや、それもサーセン。
身を護るには容赦のない判断も必要だと思うんです。
あと、射撃能力は見事でした。
と、ここで視界の端に文字が流れてきた。なになに?
『罠モンスター:アイズ撃破ヲ確認シマシタ。隠シ部屋ヲ開放シマス』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます