第2話
「…ひ……ハルヒ!」
「んぅ……?」
なんだか良い声がする……俺の身近にこんな良い人いたっけ……ん、いや待てよ、そういえはばここっ……!
「良かったぁ。ハルヒ、あれから起きないんだもん。すっごく心配したんだからね」
うわ無理。顔面ちっか。あの夏樹が俺に__この世界でのハルヒにだが__微笑んでいる……?!
「……?なんで顔をおおってるの?もしかして具合悪い?!」
そういって夏樹は春日のおおっている手をつかみ顔色を確認する。
「わ!真っ赤じゃん!はやくいってよもぉ〜!」
怒る顔もかわいいとか反則かよ……。
「僕なんか飲み物とか冷たいもの持ってくるから、ちゃんと待っててよ?!」
……俺、耐えられん。帰ろう。うん。
心の中でそう唱えて、春日は毛布をめくる
「って、着替えてる。あと関係ないけどベッドふかふか……」
……まて?俺、倒れる前まで制服着てたよな?しかも、鏡見てる時に倒れたから……運んで、着替えまで夏樹1人でしたってこと?!さすがバスケ部、筋力あるなぁ。
ところで、さっきからなにか既視感を感じる。夏樹の部屋、倒れる、筋力……。
「あっ!」
「わっ?!」
俺__今までと変わらない声__の声に少し遅れて夏樹の声が重なる。
さすができる男。戻ってくるのが早い…というか、やはりそうだ。
「ったく、熱あるのに大きな声出して……」
これは、確かにマイライフにそっている!完全一致という訳では無いが、「遊びにきたハルヒが熱を出してそのまま夏樹の部屋で看病をする」という第2話の状況と同じだ。ふてぶてしく看病を受けるハルヒと、怒りながらも看病する夏樹。二人の会話はまるで熟年夫婦のようで、「付き合えよ!」と叫んで怒られた記憶がある。
「そうか、そういうことか……!」
「……ハルヒ?もしかして、熱じゃ済まないような病気?!」
やばい、何も聞かない上に夏樹にとっては意味不明の発言をしてしまった。
でもごめん夏樹。いえ、夏樹様。
「今日は、かか、帰るわ」
初めてまともに声をかける。我ながら中々に気持ちが悪い焦りよう。
「だめだよ!ハルヒはそうやってすぐ無理するんだから!あ、大丈夫!今日は親いないし泊まってっていいから!」
うわー!それ読んだ!第2話で読んだ!これ壁になって鑑賞してぇ〜!
「いや、ほんとに大丈夫だから。ねー…寝たら治ったし。」
恥ずかしい!いくらハルヒに寄せているからといってもこれは恥ずい!なんか言葉つまってるし!
「……ほんとに?ほんとにいいんだね?」
ハルヒの思いを考慮して自分の意見を押し付けすぎないところ、ほんと罪ですわー!
「……ん」
「ん」ってなんだよ「ん」って!もうやだ泣きたい。
「……分かった。じゃあ、送る」
「ありがと」
ありがとうございますだろうがよおおおお!
「またね」
「うん。また…………だぁぁっはぁぁぁ!」
うわぁぁやばい今すぐ穴に入りたいなぜハルヒの家には穴がないんだそらそうだイケメンの家に穴なんてあったら入り込んで盗聴盗撮しまくる変態がわいちまうだろ!
「あぁぁもう!」
ブー、ブー。
「なんだ?」
突如ポケットからバイブ音が鳴り、俺は慌ててスマホを取り出す。
「パスワード……ハルヒの誕生日か?」
漫画内でスマホのロックを外すためのパスワードを打つシーンなんて当然なく、春日はとりあえず1009と打ってみる。
「え、違うんだ……あっ、もしかして」
春日はすぐにその4桁の数字を消して、0529と打つ。
「お、開いた……まじで夫婦やん」
まさか、本当に夏樹の誕生日で開くとは思わなかった。なんだか色んなものを覗いてしまってるようで申し訳ないが、致し方ない。
「……っと、ハルヒ大きな声出してるけど、ほんとに大丈夫……なるほど」
俺はまたひとつ黒い歴史を刻む。そういえば、なんて考える自分は数分前どう帰ってきたのかも記憶していない阿呆なのだろうか。違う。違わないけど違う。ハルヒの家は夏樹の家の真向かいだ。つまり俺は曲がることも上り下りすることもなく、直線で帰ってきた訳だ。
そんな距離にある家に、あんな大声を出して聞こえないわけが無い。
「……ハルヒ、ごめんな」
全てを失いつつある俺には、それしか言えなかった。
俺主人公じゃないから! @Sakuranokimi
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