心のささくれ

月乃兎姫

第1話

 ささくれと聞くと、誰もが最初に思い浮かべるものは、指先に出来るささくれ・・・・だろう。小さな傷とも言えぬものであるが、衣類を通すときなど引っ掛かり、地味に痛みや不快感を感じるものだ。対処法としては、やはり絆創膏などを貼るか、あるいはハサミなどで部分的に切ることだろう。


 社会における物事であっても、そうしたささくれ・・・・のような出来事は日々日常的に起こっていると言える。長時間のレジ待ち、車の割り込み・車線からのはみ出し、信号無視をする歩行者などなど、様々な小さな小さなささくれが心に出来ている。


 それが指先に出来るか、心の片隅に出来るか、その違いだけで痛みや苛立ちは容易に拭い去れない。むしろ心の方には絆創膏などという都合の良いものはない分、余計にケアすることができないと思う。


 社会の綻びは、まず人の心からだと考えることができる。それは犯罪や事件事故などを以って初めて人々は理解し得る。しかし、理解したからと言っても誰も解決することはできない。


 社会が悪い、育った環境が悪い、いや政治が行政が、などと口にはしても、未だかつてそれで世の中が良くなった例は一度も無いことだろう。もしあったとしても、広く人々が知らなければ、それは無いことと同義なのだ。


 ここ数年、特に令和という年号における凶悪犯罪はそれまでの年号以前にあったものと性質的に異なっていると言われている。凶悪性や内容はそれほど変わっていないのだが、受け取り側の心理が変化しているのだろうと思う。


 今はネットとスマホの台頭と一般普及により、情報がリアルタイムで伝達される。それは良い意味でも悪い意味でも広まり、そこに真偽性は厭わずにモラル・マナーなどが複雑に絡み合い、新たな綻びが生まれている。


 特にネットは匿名だからと心底信じ切っている人が起こす悪い事や相手を貶める行為は後を経たない。それは心のささくれとなって、いつの日にか大きな傷として人々に知られることだろう。

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心のささくれ 月乃兎姫 @scarlet2200

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