焼肉 2
授業が終わって建物から出てきた頃には日が傾いていた。
私は集合場所の改札に向かって歩き始める。
やっと解放されて自由になったと目一杯息を吸う。冷たくなって乾燥した空気が肺に入ってきて、ぼうっとしていた頭が少しすっきりしたような気がした。
改札の途中の道でピンクや青、黄色や白に輝くイルミネーションを見つけて私は写真を撮った。
改札では既にまさと美和子が立っていて、その後すぐにわたるが加わった。
全員が揃ったところで美和子が「じゃあ、出発しよっか」と歩き始める。美和子についていくと、今までその存在に全く気がつかなかった八王子の繁華街に入った。
居酒屋やドラッグストアに紛れてホストやキャバクラの店の看板が煌々と光っている。
そんな道中、美和子は突然左手のビルに吸い込まれるようにして入った。後をついていくとみすぼらしい小さなエレベーターがあった。
東京に来たばかりの頃は、ビルの中にあるお店を意味もなく怖いと思っていたけど、今の私に抵抗はなかった。
エレベーターに入り五階につく。扉が開いてすぐ、目の前にカウンターとレジが現れた。どうやら店内とエレベーターは直接繋がっているらしい。
美和子は慣れた様子で店員に何人か伝えると、店員にならって店の中を歩いた。私たちもついていくけれど、明らかに他の店員から不審な目を向けられている。私たち四人とも若いのは兎も角、まさはまだ十六歳だ。こんな時間に学生にしては高い焼き肉屋にいたら嫌でも目につく。
席に着くとテーブルの上に排気口があり、テーブルに埋まった七輪がそのすぐ下にある。注文は全てタッチパネルですませるらしく美和子とまさは早速酒を頼んでいた。
美和子とまさが隣同士に座り、私はわたると座ることになった。
焼き肉を注文して食べている間、通信高校でどんなことをするのか美和子に聞かれたり、どうして通信高校を受講しなければいけないのかを説明したりした。
一通りその会話が終ると、今度はわたるの恋愛相談になった。わたるは相変わらず彼女が欲しい、セックスしたいしか言わなかった。そして、私にセックスしないかと冗談半分に言い、私に跳ねのけられる一連の会話をした。
結愛がいない中、会話はいつものように弾んだけれど、彼女の不在が私は内心寂しかった。
会話が弾む中で何回か「そろそろ入る冬休みどうしようか」という話をして、何か出かける先のアイデアが浮かぶ度に「結愛にも聞かなきゃね」と皆が言うので、ここにいない結愛のことを、皆がちゃんと仲間だと認識しているんだと思い、私たちの輪の強さにほっとした。
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