写真 1

 クリスマスが間近になった新宿では、そこら中にイルミネーションとクリスマスモチーフのオブジェクトで溢れていた。

 金曜日の授業が終わり、厚手のコートを羽織って建物を出る。私、結愛、美和子、まさの四人で「今日はどこで食べる?」と言いながら新宿内を徘徊していた。

 金曜日の夜にこのメンバーで外食をするのは恒例になっていた。けれど、美和子が「イルミネーションが綺麗なところが新宿駅近くにあるから行こうよ」と提案してくれたので、いつもと違って皆でその場所に向って歩いた。

 このメンバーにわたるもよく加わるけれど、バイトがあると今回は断られた。

 すっかりクリスマス色に染まり、更に華やかな街の中、歩いているとたくさんのカップルとすれ違った。それを見て私は、自分が結愛と付き合っているのを誇りであるとみせるように彼女の手を握る。友達以上の関係であることを周りに見せつけたかった。

「とりあえずイルミネーションは見に行くとして、どこで食べようか?」と皆で話す。

 アメリカ人の先生が、日本にあるハンバーガーは本物のハンバーガーじゃないけれど、シェイクシャックのハンバーガーはアメリカの味がする、と授業中に言っていた。それを思い出した美和子は皆で、シェイクシャックに行こうと提案する。私たちもそれに便乗した。

 みんなシェイクシャックには初めての入店だった。値段が高いとは聞いていたけれど、カウンター横の壁に張られたメニュー表を見るとハンバーガー一つで千円以上もする。そんな高額な値段設定も、新宿で生活して狂った金銭感覚のせいで、東京値段だから仕方がないよねと納得しながら注文した。ただ運が良かったことにクリスマスのキャンペーンで、ミルクシェイクがタダで貰えた。

 会計を済ませて商品を受け取った後は、狭く混雑した店内の中で体を捻りながら空席を探した。

 重石のような教科書が入ったバックパックが邪魔で、周りの人に迷惑をかけていると思うと恥ずかしかった。

 空席がないように見えたけれど、店の奥の目立たない角席を丁度立とうとする人がいて、入れ替わりに席を取ることができた。やっとの思いでバックパックを床に降ろし、全員が着席するのを待つ。

「この店、めちゃくちゃ狭いね」と美和子が言いながら私の右隣に座った。

「新宿にお店置くなら、もっと広くしてくれればいいのにね」と美和子と一緒に歩いてきた結愛が同意しながら美和子の隣に座る。

 美和子の隣に座るつもりでいたのだろう。まさは結愛が美和子の隣に座った途端、戸惑ったように立ち往生した。困っているまさに気づいて美和子が「あ、結愛ごめん。席変わっていい?」と結愛に頼む。

「何で?」

「ほら、私まさと隣で座りたいから。」

 そう言われた結愛は美和子とまさの顔を交互に見てから「あ~」と納得したように言った。

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