まさの家 2

 扉を開けてまさが入る。私たちもそれに続いて「失礼します」と各々言いながら玄関を上がり、靴を脱いで揃える。

 リビングらしき広い部屋が玄関のすぐ右手にあって、隣接されたキッチンのシンクにまさの母親は立っていた。

「いらっしゃ~い。どうぞ楽にしていって~」

「突然訪問してすみません」

「いいの、いいの」

 私たちは各々挨拶しながらテーブルに座る。親に付き合っている人がいることをまだ報告していないまさのこともあって、美和子はまさとお付き合いしている者です、とは挨拶しなかった。

 皆がテーブルに揃ったところで「親がここにいると気まずいでしょ」と言ってまさの母親は別の部屋に移動してしまった。

 ロックンロールが好きなまさは、実際趣味でエレキギターを弾いていて音楽に詳しい。なので、リビングには如何にも高そうなスピーカーが置かれていて、そこから私がリクエストしたビリー・アイリッシュの曲を流しながら、私たちはそれぞれ自身の課題をやっていた。

 ふとまさの母がまたキッチンに現れたかと思うと、両手に二箱のピザを持っていた。

「ピザ頼んどいたよ。どれ飲みたい?」

 みんなで慌てて礼を言いながら、コカコーラやオレンジジュースをいただいた。

 当然私たちはやりかけていた課題を鞄に仕舞い、ピザをテーブルの真ん中に置く。まさが小皿を棚から持ってきて皆んなに配ってくれた。小皿を配り終えてまさが席につくと、皆でドリンクの入ったコップを持って乾杯した。

 食べる前に「待って写真撮りたい!」と私が言うとみんながカメラに向かって笑顔になる。

 美和子やわたるも写真撮り、それが済んだ後はみんなでそれぞれ違う味のピザを分けあって食べた。

 次はどれを食べようかな。その味どうだった? という風に駄弁りながら食事を終えた後、私たちはすっかり休憩モードに入っていた。

 美和子と結愛が立ち上がって、マンションの高さに窓の外を眺めていると皆が、絶景だね。夜景はもっといいでしょ? とまさに話しかけていた。すると、それを聞いたまさの母が「ベランダに出てみる? いいよ?」と言ってくれた。

 喜んで結愛と美和子と一緒にベランダに出てみると、冷たい突風が吹いてきて、私たちの様子も一変。ベランダに少し出ただけですぐにまたうちに戻って窓を閉めた。あれがビル風というやつなのだろうか?

 その後皆で遠慮するまさを何とか説得して、エレキギターを披露してもらったり、まさが彼の弟や妹を呼んできたので、皆でかわいいと言い合ったりして時間を過ごした。

 日が傾く前に私たちは、そろそろ遅いから、と帰宅しようと荷物をまとめ始めた。すると、まさが私たちをわざわざ駅まで送ってくれて、おかげで道に迷うことなく駅に行くことができた。

 新宿へ戻る電車の中、まさの弟が、私、結愛、美和子の中で、美和子がまさの彼女だと言い当てたらしいというのを美和子から聞いた。「やっぱり分かっちゃうのかな」と喜んでいる美和子に私は、私が結愛の彼女ですとは結愛の家族にも私の家族にも言えないなと思った。

「結婚したらあの子が弟と妹なんだ。えー、可愛い!」と美和子が言えば、私には結婚なんて選択肢はないんだと思った。

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