まさの家 1

 言語学校にもテスト期間があるので、その間は午前と午後二回ある授業も午前だけになる。なので、午前にテストを受け終わった後、いつものように私、美和子、結愛、まさ、わたるの五人は自習室に集まって「せっかくの半日何かしたいね」と話していた。

「でもうち今月金欠なんだよね」と珍しい単語が美和子の口から出る。

 両親共に誰もが知っている大企業に勤めているお嬢様なので、美和子はいつも小遣いに余裕があった。その美和子が金欠と言うので、皆して驚いた。

「あー、俺も無理だわ」とわたるが言う。

「私も結構キツかな」

「それだったら、家に遊びに来る?」とまさが言った。

「え、いいの?」

「いいよいいよ。うち来なよ」

 すると結愛が美和子を見た。

「え、何?」と美和子がにやにやして笑う。

「いや、彼氏の家だよ? どうする?」と結愛がからかう。

「えー、ヤバい。初彼氏の家!」と美和子が嬉しそうに言った。それにまさが「いやいやただの家だから」と笑う。

 そういうことで、私たちはまさの家にお邪魔することにした。

 まさを先頭に新宿駅から電車に乗り、電車を何度か乗り換える。

 目的の駅に到着し改札を出ると、目の前に商店街への入り口があり、左前には新築のモールが建っている。そのモールの一階にはタピオカ屋があった。

 人がまばらにその店にいて、それを見た結愛はすぐにタピオカ屋に行きたいと言った。皆もそれについていって各々注文する。私は暖かい季節限定のタピオカアップルティーにした。

 そのタピオカを片手に、商店街を通過していく。自分の地元にあるシャッターばかりが閉まっている商店街とは違って、ここにはまだまだ活気があった。

 沢山の古服や本、玩具が詰まったワゴンがあり、喫茶店や小さな食堂も並んでいる。ワゴンと人で狭くなった道を私たちは縫うようにして歩いた。

 暫く歩いた後、突然まさが商店街を右にそれた。

 さっきの活気とは違って、そこには道路が一本通っており、そこに整列するようにしてマンションと一軒家が並んでいる。

 まさはその中でも特に大きくて目立つマンションに向って歩いていった。広いエレベーターに乗って、着いたのは十六階。エレベーターを降りると目の前にはたった三つしか扉がなくて、まさは目の前の扉の鍵を開けた。

 行く途中「突然彼氏の家にお邪魔するなんて失礼だよね。どうしよう。でも好奇心には勝てない」なんて美和子は言っていたけれど、いつも気楽にしている彼女が珍しく緊張していて、それに私も思わず緊張した。

 私たちだって突然友人の家にお邪魔する無礼者だ。

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