家庭環境 7
翌朝「お寝坊さん! 二人とも起きて!」という結愛の母親の掛声に起こされた。
人の親に起こされてしまったという恥ずかしさに飛び起きると、結愛は床で毛布に包まって寝ていた。
自分の部屋のベッドで寝ればいいのにとか、ここで寝るつもりだったなら私が床で寝たのにとか、いろいろ思ったけれど、それを伝えても結愛は「えー、床でいいよ」と気にしていないようだった。
キッチンの隣に丸いテーブルがあり、そこに四つ椅子が置かれている。
テーブルの上には丁寧にランチョンマットが敷かれていて、そこにしゃもじと小皿も置かれていた。テーブルの中央には土鍋があり、その中でキムチ雑炊が激しく白い湯気を吹いている。
熱々の雑炊を時間に迫られながら食べるのは大変だったけれど、立派な朝食をいただいて感激と感謝で一杯だった。
食事を終わらせた後、鞄を持って急いで車に乗り込む。ありがたいことに駅の改札口前まで、送ってもらえた。「ありがとうございます」と最後に頭を下げてから、私は「急いで」と言う結愛の後ろを追って改札を通った。
始発だったので、座席に結愛と隣あって座ることができた。
電車の中でもう少し眠れるかもと思ったが、次の駅で大量の人が雪崩込んできて、忽ち寿司詰め状態になった。
車内は人々の体温で暑苦しく、鬱憤と不満が熱気になって圧倒してくる。あまりの詰め込みように立っていられない人が座席の後ろの窓に手を乗せて、まるで座席に座っている人たちに壁ドンするようにしてなんとか電車の揺れに耐えている。
私もあまりの人の近さに具合が悪くなってきた。
結愛はそんな中「ね、いつも朝混んで大変なんだよ」と、電車が混んでいて辛い、といつも朝登校するときに言う愚痴が愚痴ではないのだという表明をした。
こんなに揉みくちゃにされて電車に乗ったのは人生で数えるくらいしかなかったので、毎日こんな体験をしなければいけないなんてと、彼女を不憫におもった。
結局新宿駅までずっと車両内に詰め込められたままだった。
昨日と同じ服で登校する人がいることは、この学校では当たり前になっているので、私たちのことは誰も何も言わなかった。
私は初めて結愛の家から登校してきた事実に、意外にも高揚感を抱くようなことはなく、ただただ目の前の授業に取り組んだ。
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