お泊り 5
「燈佳ならいいよ。ちょっと待って」
そういって結愛は仰向けになった。「はい。上に乗っていいよ」と言うので彼女の腰辺りに跨る。
「重くない? 大丈夫?」
「大丈夫」
私はそっと彼女のシャツの裾を上げて、両手を入れた。
そのまま胸のほうまで手を上に滑らせる。
彼女はずっと同じ様子で微笑んでいて、私だけが緊張していた。
胸が小さいからか、結愛はブラを付けていなかった。代わりにパット付きのキャミソールを着ているようだ。
胸のあたりに辿りつくと突起に触れた。腕を引っ込めそうになったけれど、平然としている結愛につられて落ち着きを取り戻した。
「何か感じる?」
「ううん。何にも」
今度はしっかりと突起に触れてみる。摘まんでみたり撫でてみたりする。
「何にも感じない?」
「くすぐったいくらいかな」
「くすぐったい?」
「うん」
「そっか」
私は彼女の服から両手を抜いた。
「もういいの?」
「ん? うん」
「何で?」
「なんかいたたまれない。悪いことしてるみたい」
「ふーん。胸を触ったら気持ちいいものなの?」
「どうだろう。個人差はあると思うけど、私は触れるだけで気持ちいい」
「へー」
刺激を与えれば身体的に快楽を感じられるのかと思ったけれど、無反応だったのには驚いた。
性欲がないから自分で触れようと思うことはないだろう。
今まで自分で触れることがなかったから、生理的反応として快楽を感じたことがないだけで、熱や痛みのように、それを感じること自体は出来るのではないかと思っていた。
なので、それを感じないというのは意外だった。
たとえ快楽というものを体験は出来ても、それに一切執拗しないだけなのかと思っていたが、どうやら性的快楽への反応自体が皆無らしい。
「どうだった? 興奮した?」
「興奮したというより緊張した」
「ふーん」
きっと結愛は私が彼女の胸を触ったから興奮しているはずだと思ったのだろう。
けれど、恋愛の駆け引きというのはドラマや漫画ほど実際は単純じゃない。
結愛の様子は、興奮ではなく緊張だったと分かり、間違いの理由を探そうとしているようだった。
彼女はずっとこうして人々の理解できない反応を答え合わせし続けてきたのだろう。
しばらくの間こうして一緒にだらだらと時間を過ごした後、結愛は家に帰っていった。
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