お泊り 3

「何? どうしたの?」

「んん。何でもない」

「布団狭くない? 大丈夫?」

「うん」

 わざわざ二人分の布団を敷いたのに何で潜り込んできたんだろう? 恋愛感情がなくても人は誰かと一緒に、一つの布団を分けあって寝たいと思うものだとは思わなかったなと考えている内に眠りについていた。

 学校に毎日登校するために、休日でも規則正しく決まった時間に起きるようにしているのだが、今回はいつものようにはいかなかった。

 起きた時には既に昼で、結愛は私の枕元に座ってスマホをいじっていた。

「あ、起きた? おはよう」

「起きるの早いね。今何時?」

「今? 十時くらい」

「あれ? 目覚まし時計セットし忘れたかな?」

「ううん。ちゃんと鳴ってたよ。私それで起きたもん」

「え、本当? ごめん、全然聞こえなかった」

「まぁ、昨日寝るの遅かったしね」

 結愛はずっとスマホをいじっていて、特に気を害されたという様子ではなかった。それよりも、時間を持て余しているから仕方なくスマホを触っているという様子だ。

 私がトイレに行こうと布団から起き上がったとき、結愛が急に甘える声で「どこ行っちゃうの?」と聞いてきた。

 ドライな部分がある結愛が、居て欲しいという様子で聞いてきたので驚きながら「トイレ」と返答すると「良かった。どっか行っちゃうのかと思った」と言ってまたスマホに目線を戻した。

 隣にいて欲しいと思ってるのかな? と思うとちょっと嬉しかった。

 トイレを済ませて畳の部屋に戻る。この時間だと、おばあちゃんは確かパソコン教室か写真教室で家を出ている時間だ。

 私は敷かれている二枚のうち一枚の布団を片付け始めた。

「片付けちゃうの?」

「ん? うん。何で?」

「えー、もうちょっとだらだらしようよ」

「えー、何で?」

「いいじゃん」

「んー、でも既に寝坊したし課題したいしな」

「休日なんだからいいじゃん今日くらい」

「まぁいっか」

 結愛が根気よく説得し続けるので、残りの一枚は敷いたままにしておいた。

 その上に座ると、結愛も布団の上に移動してくる。

 けれど、私にどいてほしいと合図するように、掛布団を何回か引っ張るので、掛布団の上から腰を上げたら、結愛はそのまま布団に入って横になった。

 それだけではなく、結愛は掛布団を捲って私にも布団に潜ってと仕草をしてみせる。大人しく布団の中に入ると、結愛は私を抱き枕のように抱えて目を瞑った。

「え? 寝ちゃうの?」

「うん」

「え、でも私眠くないんだけど」

「一緒に寝ようよ」

「えぇ、つまんない。スマホいじってていい?」

「えー。んー、いいよ」

 諦めたように言った結愛は、そのまま眠りに落ちてしまった。その間、私はずっと電子書籍を読んでいた。すると、突然結愛が私にキスしてきた。

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