インターネットカフェ 4

 すると、彼女は私にコアラのように抱き着いてきて、彼女のスマホを私の横っ腹あたりに置いて、そのままスマホをいじりはじめた。

 彼女の心理はよく分からなかったけれど、こうして一緒に横になれるのは良い気持ちだった。

 嫌だろうと思っていた時に、結愛からスキンシップをされて驚いたけれど、アセクシャルで恋愛感情と性的欲求が分からないからといって、人に触れたくないと常に思っている訳ではないんだなと気づいた。

 純粋に人肌が恋しくて、私に気を許してくれているんだと思うと微笑ましく感じた。

 二冊半ほど漫画を読んだ頃、壁に設置されている固定電話が鳴った。

 結愛が取ると、時間だと伝える女性の声が聞こえた。漫画と鞄、コートを持って、忘れ物がないように振り返り確認してから部屋を出る。

 漫画を漫画コーナーの元にあった場所に返してから漫画喫茶を出た。

 まさと美和子はまだセックスしているのだろうか? それともこのまま寝泊まりするんだろうか?

 個室にいた時の静寂と違って、漫画喫茶を出ると喧騒の波が私の耳を刺激した。映画館から出たときに感じるような、現実世界に戻って来たという感覚がした。個室にいる間も外ではずっと人や物が騒々しく動いていたんだと思うと、自分の周りの世界が急に動き出したように感じる。

 結愛に「駅まで送るよ」と言うと「ありがとう」と言って私と腕を組んでくれた。

「今日はなんか甘えん坊? だね」

「ねー、なんかね」

 可愛い。きっと私の顔も綻んでいるに違いない。

 私たちはそのまま居酒屋の並ぶ通りを歩いていた。すると居酒屋の出入り口に立っていた店員が「そこのお姉さんたちどう?」と声をかけてきた。けれど、そう言った途端に「あっ」と店員が声を漏らした。

 私たちはちょっと驚いて振り返ったけれど歩みは止めなかった。

 すこし歩いた後、結愛は私を見て「今『あっ』て言ったよね?」と笑った。

「歌舞伎町だからレズビアンカップルと思われたのかな?」

「きっとそうだよ。私たちカップルに見えるんだよ」

 何かあの店員可哀そう。あっ、ヤバって顔してたよ。と二人で朗らかに笑いあった。

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