インターネットカフェ 3

 少女漫画を読むつもりなんだろうか? 

 異世界のように感じると言っていたが彼女は、自分がその異世界と同じ状況にあることを恐らく自覚できていないんだろうな。飽くまでも恋愛に関することは他人事なのだろう。

 少女漫画のキャラクターが、会いたい触れたいと思っていることが、私も同じように思っていると、結愛は分かっているんだろうか? 

 理屈で分かっていても、それが心苦しい気持ちだとは、やはり分からないだろう。

 でも、そればかりが恋愛ではないはずだ。こうして今、二人で漫画を読んだり、この前のように映画を見に行ったりすることも恋愛の内だ。

 私たちで私たちなりの付き合いをしていけばいい。

 待たせることはなさそうだと安心して漫画を選び、五分ほど経った頃だった。

「まだ?」

「これにしようかな。結愛は決めた?」

「んー、私はいいや」

「え? 折角来たのに?」

「うん」

「そう」

 不思議に思いながら漫画を三冊ほど持ってエスカレーターに乗る。

 美和子とまさが今頃セックスしているのかと思うと可笑しく思えた。

 考えてみれば私も結愛も恋人同士なのだから、狭い部屋に二人きりなら何かやましいことをするのではないかと他人は思うだろう。けれど、体を触られたくないだろうと思って、私は漫画を楽しんで読むつもりだった。それに、まだキスもままならないのに、やましいことなんて出来るわけがない。

 そう思っていたのだが、部屋に戻って漫画を読み始めようとすると結愛が「漫画読むの?」と不思議な質問をしてきた。

「うん」

「えー、つまんない」

「つまんない?」

「うん。一緒に寝よ」

「いいよ?」

 彼女が何を意味しているのかよく分からず、促されるまま仰向けになった。

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