インターネットカフェ 1

 学校終わり、私と結愛、美和子とまさの四人で下校していると、道中で急に美和子が立ち止まり「じゃあね、さよなら!」と言った。

「え? さよなら?」

 突然のお別れにみんなが混乱した。まさでさえ美和子を見て「え?」と笑っている。

「どういうこと?」

「いや、これからまさとネカフェ行くからさ」

「ネカフェ?」

 聞くとラブホテルの料金が高いので、その代わりにこれからネカフェに行ってセックスをするつもりなのだという。ネットでよく聞く話だったので、その話自体に驚くことはなかった。

 そんなことより私は、ネットカフェに行ったことがなかったのと、まだ別れるのが惜しいという気持ちで、ネカフェに行きたいと言った。結愛もネカフェに行ったことがないから行ってみたいというので、私たちは美和子に付いていくことにした。

「いいの? 本当にただ入ってそこでお別れだけど」

「いいよ。ただ入ってみたいだけだから」

「そうそう」

 そう言いながらご機嫌の結愛は、私の腕を掴んだ。まるで仲の良い女子高生同士が抱き合うように。なので、腕を抱かれて嬉しいというよりは、友情の結束感を感じた。

 その状態で美和子に付いていくと、漫画喫茶は西武新宿駅近くの大きな映画館を通り越した先にあった。

 大きな建物に白くインターネットカフェと看板が光っている。建物の中は茶色のフローリングと壁紙でリラックスした空間が演出されていたが、出入り口横にあるカウンターに数人の列が四つほどあり、世話しない雰囲気が蔓延していた。

 列の手前に料金を記した立て看板があり、そこで私たちは初めて男女で同じ部屋には入れないということに気付いた。それどころかフロア自体別々に分けられている。

 私がまさと美和子を見やると既に結愛が「どうする?」と小声で話しかけているところだった。

 美和子は「ワンチャン試してみよう」と小声で返した。

「ロン毛だし、顔幼いからいけるよ」

 そういうことで美和子がカウンターの人と話し、私と結愛がまさを後ろに隠すようにして立った。まさが俯くことで何とか女子に見せようという作戦だ。

 カウンターの人は美和子に使用の際の説明をして料金を受け取ると鍵を渡した。そそくさとカウンターを通り越し、相手が見えなくなったところで美和子が「あっぶね」と言った。

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