好きなもの 2
「ううん、知らない」
「例えばある会社が新しい秘書を雇いたいとするでしょ? で、仮に百人応募してきた人がいたとしよう。 百人全部の履歴書みて面接するとすごい時間かからない?」
「かかる。途方もないね」
「でしょ? じゃあどうしたらいいと思う?」
「え、分かんないな」
「何か基準があったら分かりやすいと思わない?」
「あ、そうね。基準以下は全部落とすってすれば早くなりそう」
「そう。そこで初めの二十七人だけを見るの。その中から一番良かった人を選んで、残りの人はその人より優秀かどうかだけを見るの」
「へぇー、なんで初めの二十七人なの?」
「魔法の数字があってね、全体×0.27をすればいいんだよ。数学的にはそれが一番効率が良くて一番いい人を見つけられるの。なんで0.27になるかっていう説明をしてもいいけど、難しくなるかも」
「あ、いいよ。多分説明してもらっても理解できないと思うから。へぇー、でも面白いね。じゃあこれからは何か選ぶとき何でも全体×0.27しちゃえばいいんだ」
「そうそう。これを秘書問題っていうんだけど、昔はお見合い問題って言われてたらしい」
「あぁ、差別的とかっていう意味で変わったのかな?」
「そうみたい。たぶん」
「面白かった。不思議だね。ただの数字でしかないのにどんなことにも応用できるなんて」
「本当?」
「うん、話としてとても面白かったし参考になったよ。人が数学にはロマンがあるっていう意味がちょっとだけ分かった気がする」
「そうなの。分かってくれる? うれしい。こういうこと言っても、へぇーそうなんだ、で終わっちゃうから。良かった。楽しんでくれたみたいで」
「うん。今宇宙とかについても数学が一番発展していて真理に近いとか言われてるんでしょ? 観測が出来なくても理論上でどんどん解明していくから」
「あぁ、そうね」
店員が注文した料理を持ってきたので、会話が一旦止まった。美味しそうな豚肉が黒い箱に敷き詰められた白米の上に綺麗に並んでいる。その隣に味噌汁と漬物がある。結愛の手元にも同じものが置かれた。
「でもよくそういうこと知ってるね」私は食べながらさっきの話を続けた。
「そう? そんなことないよ。私の学校にはもっと沢山すごい人がいて、私なんて平均だったもん」
「そっか、私立の良いところはやっぱり皆東大に行かなきゃって感じなの?」
「そうね、東大以外は皆意味ないって思ってるようなとこだったから。すごいよ。早慶に行く人は負け組みたいに言われてたもん」
「えぇ、私のところも勉強できない人はクズみたいな扱いだったけれど、早慶が負け組とまではいかないな」
「すごかったよ本当。皆ピリピリしてて」
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