わたると居酒屋 1
三人で一緒に言語学校にある自習スペースで勉強する習慣は、まさとわたるが加わって五人になった。美和子と付き合っているまさは当然として、わたるも今ではすっかり輪の一員だ。
美和子が中心的なこの輪で、やたら下ネタばかり言うおちゃらけたキャラのわたるは私たちと相性が良かった。だから三人で行く居酒屋もよく五人で行くようになっていた。
わたるはいつもふざけてAV女優と付き合いたいだとか、どうしたら彼女が作れるのか、童貞を卒業するにはいっそ彼女でなくともいいのではないか、というしょうもないことばかり言う。
そんなわたるのおふざけに乗って美和子が「もしも彼氏がいなかったら良かったんだけどねー。一応私もそういうけじめはしっかりしてるから」と挑発めいたことを言う。
実際、美和子はセフレと縁を切ったし、勉強にしっかり取り組みつつ、まさとの仲も良好だ。
やらなければいけいない最低限だけはきっちりやり遂げ、後は節度を持って不真面目に手を抜くというのが美和子のやり方だ。
男女関係や日々の課題に対するその姿勢には見ていて羨ましいものがある。日々歓楽そうだ。
私は自分で両極端な判断をしやすいと分かっていながら、それが直せないでいた。全てを完璧にしようと思っている訳ではないのに、傍から見ると私はどうでも良さそうなことまで拘っているらしい。
わたるは美和子がまさの腕を抱いて、胸をくっつけるのを見て「あれ? ひょっとしてこことここデキてる?」と首を傾げる。
「あ、そっか。わたるにはまだ言ってなかったんだっけ」と驚く美和子に私たちは「あ、そうじゃん!」と今更ながら気づく。
「え! なんで俺だけ知らされてないの?」と肩を落とすわたるに美和子も結愛も「うっかり忘れてただけだから。気にしないで」と言うとわたるは納得したように元気を取り戻した。
彼女が欲しい、女の人とやってみたいと嘆くわたるに美和子が「燈佳なら良いんじゃないの?」と言った。
「燈佳さぁん、付き合ってぇ」
「いやぁ、ごめんなさい」
「じゃあ、せめてヤらせて!」
「いやいや、だめだって。もっと酷いじゃん」
「何で? やればいいじゃん」そう言ったのは結愛だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます