りんご飴 4
「んー、なんか照明が暗い感じとかインテリアとかかな。あとドラマとか映画でよく夜景とかロマンチックって言われてるよね」
「あぁ、そうね」
「あとよく青春とか言うよね」
「うん」
「私学生の時よく恋愛相談されてたんだよね。おかしいよね。私恋愛のことなんて全く分からないのに、こうしたら良いんだよとかアドバイスしてるの」そう言ってクスクスと笑う。そこに皮肉は混じっていないように見える。
「でも恋愛に浮かされないで理性的な判断が出来るから良いんじゃない?」
「あぁそうね。よくこうすればいいのにって思うことはあったし意外とアドバイスが上手くいくんだよね」
「だって結愛、美和子とまさの時もアドバイスしてたもんね」
「あぁ確かに」
両端の切り落とされたリンゴ飴の端切れを食べた後、私は割り箸が刺さっている真ん中の部分を持って食べ始める。
「恋愛ってすごいね。みんな恋愛の為に意味わかんないことするじゃん? そういう事をさせる感情ってどんなものなんだろうって思うよ」
「そうね。確かに変なことさせるよね。あの私が送った謎のラインとか」
「あ、そういえばあれどうしたの? 急に送るからびっくりしたよ」
私は素直に、ラブホテルに行ったから好きになったというのは嫌だから、あの俳句を送ることで馬鹿にしないような人なら付き合おうと思ったと話した。
「なるほどね。じゃああれは試練みたいなものだったんだ?」
「試練って言ったら変だけど。まぁそんな感じ」
「ふぅん。私のこと試してたんだ?」
そういって結愛は軽蔑するような呆れたような目線を寄越しながらリンゴ飴にフォークを突き刺した。
「ごめんね。嫌だった?」
「別に」
彼女はそのままリンゴ飴を食べる。少しの間何か考え事をしているようで上の空だったが、また元の様子に戻った。それに安堵して私もリンゴ飴を食べる。
食べ終わった私たちはカウンターで会計を済ませて外に出る。
結愛が美和子ではなく私を初めてのリンゴ飴専門店の相手に選んでくれたことが、今回の何よりも大きな発見だった。
彼女には私のことなんて何とも思われないと思っていたけれど、少しずつ互いの仲が強まっているのかもしれない。
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