りんご飴 3

 彼女が私を最初に誘ってくれたことに嬉しくて思わず笑顔になった。すると、結愛が「何? 初めてが嬉しいの?」と聞いてきた。

「うん。嬉しい」

「燈佳が私の初めてだよ」

「止めてよその言い方。何かやらしいよ」

「何で?」と言いながら、からかう様に笑う。

 すると、店員が白い小皿に逆さに置かれたリンゴ飴を運んできた。割りばしの刺さった部分が付き出ているのが不格好に見えなくもないが、そのリンゴ飴の両端が綺麗に切断されて、その切れ端に小さなケーキ用フォークが添えられている。

 結愛はプレーンのリンゴ飴を頼んだようだ。

 彼女のリンゴ飴は真っ赤なリンゴを薄い水飴が覆っていて、囚われた細かな気泡が光を反射していた。まるで凍った湖の表面に赤い秋の紅葉が光の反射で色付けたようだ。

 私のリンゴ飴には白い粉砂糖が塗されているので、氷の表面を粉雪が覆っているようにも、波に晒されたガラスの破片のようにも見える。

 見た目はどちらもとても美しいが、どう食べたらいいのか分からず私は挙動不審になった。

「これ、どう食べたらいいの?」と笑うと、結愛は「確かに」と一緒に悩んでくれる。

「どう食べてもいいでしょ」と言って結愛は円滑な手つきでリンゴ飴の切れ端にフォークを刺した。

 私もそれに倣って口の中に入れると、水飴の薄氷が口内で簡単にパリッと割れた。

 今まで食べてきたリンゴ飴の中で一番美味しい。

 とても甘くて美味だが、それは水飴や粉砂糖の甘さではなかった。リンゴ飴専門店だから当然なのかもしれないけど、どうやら厳選したリンゴを使っているらしい。リンゴ自体とても軟らかく果物の甘みを強く感じる。水あめも歯に一切引っ付くことがなく、咀嚼すると薄氷を小さく噛み砕くことができた。

 リンゴ飴は素晴らしく美味しかったけど、それでもテーブルの隙間のせいで、小皿がカタカタと小さな音を立てながら傾いたり、割れた水飴の破片が落ちて失態を晒してしまった。

 この店は私にはお洒落すぎて、その上他の客との距離が近すぎる。居心地の悪い思いをしながらリンゴ飴を食べなくてはならない。

 そんなことは知らないであろう結愛が私に質問してきた。

「こういうのロマンチックって言うんでしょ?」

「そうね。沢山カップルいるし」

「私たちもカップルに見えてるかな?」

「いやいや、女同士だし無理でしょ」

「そっか」

「そういえば、結愛にとってロマンチックかどうかってどう判断してるの?」

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