りんご飴 1

 手を繋いで帰ったあの日から、下校するときは結愛と手を繋ぐようになった。

 私がお願いをしなくとも結愛はそういうものだと思って手を繋いでくれているようだった。

 あのキスの原理が働いているのだろうかと思うと嫌だという気持ちよりも我儘を大人に聞いてもらっている子供のような恥ずかしさがあった。それでも嬉しかった。

 何より彼女の様子が、雑談をして笑っている時のように朗らかなので、嫌々私の行動に付き合っている訳でないのかなと思い、安心して手を繋げた。

 他にも、勉強や学生論文を書いている間、行き詰まると、結愛と二人でタピオカを買いに行くようになった。

 美和子やまさに鞄の見張りをお願いして、財布だけ持って二人で近くのタピオカ屋まで歩く。

 それが私にとってデートのようで嬉しかった。

 付き合う前はずっと三人か、結愛と美和子の二人で外出していたであろうことを、今度は私と結愛だけでしている。

 結愛は本当にタピオカ好きで、その触感と様々な店のドリンクの味自体を楽しんでいるようだった。ある時はタピオカ抜きで紅茶だけを買うこともあったくらいだ。

 二人きりで行動する機会が増えつつあったある日、私と結愛が美和子より先に課題を終わらせたことがあった。

 平日ということもあり、美和子の課題が終わるのを待っていても、その後は直接帰宅するだけなので、美和子を残して二人で先に帰ることにした。

 また明日と言って建物を出たとき、結愛が「この近くにリンゴ飴専門店があるんだけど、今から行かない?」と誘ってくれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る