初めてのキス 1
結愛と付き合えることになったけれど、特に大きな変化はなかった。
結愛のセクシャリティーのこともあって私はただ、おこがましいだけなんじゃないかと思い、手を繋いだり隣の席に座ろうとすることを控えていた。
いわゆる恋人らしい行動は結愛には伝わらないし、私は私たち二人なりの付き合い方が出来ればいいと思っていた。特に、よく読書をするという共通点を持った彼女と時間を共にできるというだけで私は嬉しかった。
美和子とまさが付き合い始めてから、三人で行っていた居酒屋は彼を含めて四人になった。そうして一緒に行動しているうちに、私と彼が同じ通信高校に通わされていることを知った。
海外の大学に行くには高校卒業証明書が必要で、高校を卒業しなかった私と高校に入学しなかったまさは、言語学校に通う傍ら通信高校の提出物も片付けなければならなかった。更に出席日数を得るため、時々週末に指定される建物へ登校し、授業を受けなければならなかった。
そんなまさが、美和子と既に性交をしていると考えると、どれだけませているんだと思うけど、私含め誰も追及するつもりはない。
いつものように居酒屋で猥談をしていると、美和子とまさが会話の流れでキスをした。少し照れているまさと違って、美和子は「結愛と燈佳はキスしないの?」と聞いてきた。
「え、いいよ。別にできなくても」
本当は二人が羨ましかったけれど、そもそも人前でキスするということ自体、私は物凄く恥ずかしかった。
それにキスする必要なんて私たちにはない。別に好意の示し方はそれだけじゃない。そう思って結愛の様子を確認すると、結愛は「する?」と言って首を傾げた。
「え、いいよ。人前でできない」
そう言ったのに、会話に戻ろうとする私の隙をついて、結愛は私に触れるキスをしてきた。
あまりに突然だったので私はそのまま固まってしまった。ドキドキしてではなく驚きでだった。
「ふーふー!」美和子が笑ってそう声を上げるけれど、私はもう一回ちゃんとキスを味わいたかった。
結愛とした初めてのキスが、心の準備もなしに一瞬で終わらされてしまうだなんて惜しい。
「キス上手くない?」硬直した思考から絞り出した言葉はそれだった。
「何も感じないからね」即答された。
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