告白 5
結愛と目が合う。けれどそこには何も含まれていなくて、ただ目があっただけだった。刹那の沈黙の後、私が「その後結愛に告白したよ」と言った。
恋愛感情や性欲と無縁な彼女も、何を言ってはいけないのか人と接していくなかで学んだ、と言っていた。その中に、告白されたことを勝手に話してはいけない、というのも入っていたらしい。言った途端、結愛が「言っちゃうの?」という驚きの表情を見せた。
「えー! で、結愛はなんて返したの?」
「へー、そうなんだーって」
「え? それだけ?」
「え?」
「はい。いいえ。とかあるじゃん」
「え? でも好きとしか言われてないから、そうなんだとしか思ってなかった。え? あれ付き合ってくださいって申し込み?」と結愛が私を見る。
「んー、まぁそういうことになるね」
「え、ごめん。告白だと思ってなかった」と結愛は申し訳なさそうに笑った。
「いいじゃん。マイノリティー同士くっついちゃいなよ」と私が昔、女性と付き合っていたことを知っている美和子は言う。
「いや、私が決めることじゃないけれど。え、結愛は燈佳のことどう思ってるの?」
「いい人だと思うよ。理解もあるし」
「へぇー」
それきり話題は変わって、いかにまさが可愛いかという美和子の惚気話で盛り上がった。
そうして居酒屋で談話して、気づいた時には十一時近くになっていた。
明日の登校時間を考えれば、朝早く起きなければならない。今からわざわざ通勤し帰宅しても、睡眠時間は殆ど確保できないだろう。
通勤が面倒臭いねという話になり、ホテルを一部屋借りて三人で割り勘しようということになった。
前に新宿駅北口辺りにできたタピオカ店に三人で飲みに行った時見つけた、とても安いラブホテルのことを思い出した。私はそこに行こうと提案した。
「この前初めてラブホいったばっかりなのに、ラブホ通いになっちゃうね」と言う美和子に「やだぁ」と笑いながら居酒屋を後にした。
慣れた喧騒の中歩いていくと、そのラブホテルは昼間見たときよりもずっとなりを潜めていて、知っていなければおそらく見つけられなかった。
建物に入ると高齢のおじいちゃんがフロントのカウンター奥に座っていて、私たちに気が付くと宿泊者名簿のようなものを差し出した。
氏名と連絡先、住所を書いてくれと言われ、美和子が代表して記入してくれた。一人三千円で済ませることができ、私たちはその安さに有難がりながら部屋に入った。
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