初めてのラブホテル 8
少し恥ずかしいなと戸惑ったけれど、既に起きたことだし女同士だからいいか、と思い直した。
アセクシャルということは、裸を恥ずかしいものと認識していないのかもしれない。隠すべきだとは理解していても、それを恥じる気持ちが自分にはないので遠慮がないのだろう。私は結愛に「すごいよね」と同意を求めた。
「えー、ラブホっぽいね。綺麗、綺麗」
それだけ言って少しの間だけジャグジーで揺れる七色の水面を見つめた後、結愛は風呂場を後にした。
入浴を終えてドライヤーをかけた後、私は「結愛も絶対後で入りなよ。さっぱりするよ」と声をかけたけど「んー、なんか気分じゃない」と断わられた。
私は同じ下着を履かなくてはいけないことに気づき、それが嫌だったのでパンツを洗面台で洗った。明日には乾くことを願いバスローブ一枚でベッドに横たわる。
何となく気づいてはいたが、結愛はリモコンを巧みに使って、テレビ画面に並んだアダルトビデオのパッケージを眺めていた。
彼女にとっては、こういうコンテンツも異世界設定の映画のように見えるのだろうか?きっと興味深いんだろうな、と納得しつつ他に聞くこともないので「アダルトビデオ見るの?」と聞いた。
「付けたら、AVの表紙が並んでて」
「ラブホのテレビって感じだね。でもAVなんか見て面白いの?」
「うーん。面白いっていうか、そういうことされると、へー人間ってそんな風になるんだーって感じ。なんか面白い。興味深いよ。あ、AV見たい?」
「AV見てみたい」
「いいよ。選んで、選んで。私何もわからないから」そう言いながらリモコンを手渡される。
私はアセクシャルの彼女の前で遠慮するのも変かという思いと、相手も乗り気であるという事から、アダルトビデオを閲覧してみることができた。
どちらかというと厭らしさよりも、お互い好奇心に突き動かされ探求しているような、まだ健全的な空気が私にそれほど羞恥心を感じさせなかった。
私は一度全てのパッケージを見てから真剣に選び始める。一本のアダルトビデオを再生し、早送りにする。序盤をすっ飛ばしていきなりセックスしている映像が流れる。
音量がなかったので音量ボタンを上げると、いかにも演技ですというような一定のリズムでアンアンという女優の喘ぎ声が響いた。その上、その声が猫なで声で私は「うーん。いかにも演技って感じで良くない」と言うと結愛が興味深そうに「そうなの?」と聞いてきた。
「どこらへんが良くないの?」
「女優がなんか、演技してるのバレバレで」
「演技してるのがわかるとダメなの?」
「私はね。なんかバカバカしくなっちゃって」
「なるほど」
まるで保健体育の授業のようだなと思った。私が先生で彼女が生徒。
メインメニューに戻って他のものを見ようとすると「ジャンルは何が好きなの?」と聞かれた。
「これとか、これかな?」とパッケージをスクロールしながら性癖を晒す。
「そういうのが良いんだ」と結愛は感心した様子だ。
別のアダルトビデオを流してまた早送りする。
「どうして飛ばしちゃうの?」と結愛が不思議そうに聞いた。
「序盤はつまんないから」というと、それが可笑しかったようで「そうなの?」と結愛は笑った。私はそれに便乗して「あー、ダメダメ」と言いながら、早送りの速度をあげて「あ! ここだ!」と言って、丁度挿入した後のシーンで再生ボタンを押す。
「そこなら良いんだ?」と言いながら、結愛はまたクスクス笑った。
アダルトビデオを二人で見ているはずなのに、ここがダメだとか、これはエッチだとか話しているうちに、何故か私が彼女の前でコントをしているような状態になってきた。
私がちょっとふざけて「あー、いいね。エロいよ、エロいよ」とテレビに向かって言うと、結愛がクスクス笑いながら「おじさんみたい」とまた笑った。
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