孤食で過食

 一人暮らしだから、誰にも過食しているところを見られない。いくら食べても怒られない。泣いたっていい。

 気の済むまで食べたかった。しかし、お腹がパンパンで気持ち悪くなり、食べられないところまでいって、ようやくやめられた後は自己嫌悪に襲われる。


 家に帰れば、たくさん食べられるというワクワクした気持ちがある一方、食べることは悪だという意識が強くなっていった。

 

 私は毎晩、過食をしては泣いていた。親の見てないところで、思いっきりささくれを引っ張るような行為をしていた。自分で自分を傷つけていた。

 母が恋しくなった。「お母さん」と一人の部屋でつぶやく夜もあった。


 仕事中や帰りの電車の中で過食する自分のことを考えると涙が出そうになった。

 泣きたいときに泣けないことって、なんて辛いのだろう。それは今でも思うことだけど。

 

 そうしていくうちに、ついに元の体重を超えてしまった。


 実家に帰った時に、兄弟に「太ったな」と言われて泣いてしまった。謝ってくれたけど。幸い、家族の他に私に太ったと言う失礼な人はいなかった。


 過食をやめたいと思っても、やめられない。

 長い時間拘束される仕事に嫌気がさす。ストレスがたまる。食べたくなる。

 

 好きな人は仕事関係の人だから、仕事が嫌でも、辞めたら会えなくなるという気持ちで続けていた。

 しかし、だんだんと、もういいや、という気持ちになっていった。

 

 私はある日、仕事を無断欠勤してしまった。店長から電話が来て、体調が悪いからとその日は休ませてもらったが、もう仕事に行く気がしない。

 父親から、辛くても仕事は辞めるな、我慢しろと言われていた。次は見つからないと思われていたのだ。

 

 だけど、辞めたい。今の状況から抜け出したい。私は仕事を辞める決心をした。

(続く)


 

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