第22話 王国騎士団
ジャンクローバー王国の最大兵力と言ったら約10万人の王国騎士団だ。
王国騎士団は大きく3つの騎士団がいる。
それぞれに役割があり、別々に分かれて国の問題に対処している。
「さて、そろそろ会議を始めよう」
第一騎士団団長のヴァルターが部屋にいる全員に聞こえるように言った。
王国騎士団は各騎士団の団長と副団長が城に集められ毎週会議をしている。
「オリビア、セイン。何か報告はあるか?」
「いえ、我々第三騎士団からは特にないっすね~。例の件以外では」
金髪の男がヴァルターの質問に答える
セインは24歳で第三騎士団の団長まで出世した男だ。
熟練された剣技と様々なスキルを使いこなす天才剣士として騎士団の中でも有名だ。
「私達、第二騎士団は最近頻発している血なし死体の調査をしていました」
第二騎士団長のオリビアはヴァルターを真っ直ぐ見ながら答える。
オリビアは青い目に長い金髪をハーフアップにしていて、すれ違えば誰もがついつい振り向いてしまうほど整った容姿の持ち主だった。
オリビアはこの国の公爵家の娘で鎧を着ていても隠し切れない気品があった。
「あの血がなくなって干からびた死体の件か・・・。結局いくつ死体が見つかった?」
「約2週間前に見つかった死体を合わせると10人になります」
「そうか・・・。犯人は見つかったのか?」
「まだ見つかっていません。それが犯行の痕跡が全くないのです。しかし犯人は十中八九吸血鬼の仕業でしょう。殺害の目的はおそらく血です」
「吸血鬼か・・・。これまたタイムリーな話だな」
ヴァルターは眉間に手を当てて大きなため息を吐く。
「結局出動するんすか?魔神の件は」
「ああ、貴族の連中がうるさくてな。魔神とか言うどこの馬の骨かもよくわからん奴の為に騎士団が動かされるとはな」
「俺は本当に戦争になればいいと思ってますけどね~。魔物を一気に何百匹も殺せるなんてわくわくするっす!」
「魔物が人間に戦争を仕掛けるなど今まで聞いたことがない。普通に考えてあり得ないことだ」
「しかし、本当だとしたら我々騎士団もただでは済まないと思います」
「オリビアちゃんは俺が守ってやるから安心しな!」
セインがオリビアに向かって右手の親指を立てウインクする。
「・・・」
オリビアはセインを全く見ずに無視していた。
「あれ~無視?お~いオリビアちゃん~」
「セイン、余計話をするな。血なし死体の件は魔神の件が終わってから対処する。魔神の件だが魔物は大森林がある北から来るはずだ。一応魔神の指定した日の何日か前から密偵を大森林に配置しておくつもりだ」
「結局どの騎士団が戦場に行くんすか?」
「気が進まんが、当日は全騎士団が警戒態勢を取る予定だ。街の門は全て封鎖。オリビアの第三騎士団は王国の北門の前で待機だ。セインの第三騎士団は大森林の近くだ。俺たち第一騎士団はその間にいる」
「俺前線じゃん!やったぜ!」
「わかりました」
ヴァルターの説明にセインは両手を上げて喜び、オリビアは小さく頷く。
「セイン、もし何かあったらすぐに連絡を寄越せ。いいな?」
「うっす!」
「それでは今日の会議は終わりだ。解散」
◇
私、オリビアは第三騎士団の副団長であるアイラと一緒に城の廊下を歩いていた。
アイラはオレンジ色の髪をツインテールにし、身長が140cmほどで小柄だが上級魔法まで使える優秀な魔法使いだ。
「団長~やっぱり戦争の日は出勤でしたね~」
「ああ、あれだけ国中が大騒ぎしているんだ、王国騎士団が動かないわけいかないだろう」
「魔神なんて本当にいるんですかね?」
「さあな、だがいないに越したことはない。平和が一番だ」
「そうですね。魔神が現れないようにオリビア様も一緒に女神アイリス様に祈りましょう!」
アイラは世界最大の宗教、アイリス教の信者だ。
アイラには申し訳ないが神を信じる気持ちは理解できん。
「い、いや私は遠慮しておく」
「そうですか、残念です・・・。あっ、私は教会に行くのでここで失礼しますね!」
アイラはそういうと城の出口に向かって走っていった。
アイラと別れてすぐに前から綺麗な白いドレスを着て前髪がなく、綺麗な金髪を腰まで伸ばしてる女性が歩いてきた。
「あっ、オリビア!」
「ごきげんよう、ミア様」
「ふふふっ、かしこまらないでよ!私達の仲じゃない!」
ミアはこのジャンクローバー王国の第一王女だ。
私の父は公爵だったので、王家と深い関りがありミアとは昔からよく遊んでいた。
髪の色も同じなのでよく本当の姉妹みたいだと言われていた。
「オリビア、戦争に行くんでしょ?私心配だわ・・・」
ミアは私の右手を両手で優しく握り、私の顔を見上げながら言う。
「心配するな。それに魔神の言う事に関しては正直、私も半信半疑だ」
「それでも心配だわ。だからオリビアが王国騎士団に入るのは反対だったのよ!もしあなたが死んじゃったら私、もう生きていけないわ」
「私も同じ気持ちだ。親友を一人置いて死ねないからな、必ず生きて帰ってくる。約束するよ」
「本当?約束よ!」
「ああ、約束だ」
「ふふっ、少し安心したわ。あっ!じゃあ私は用事があるから行くわね、またお話しましょ!」
「ああ、またなミア」
ミアは私に向かって手を小さく振って、私の来た方向に歩いて行った
「ミアは心配症だな、さて私も行くとするか」
◇
私は一度家に帰って鎧を脱いでから、治安が悪い地域のある店に向かって歩いていた。
家を出る頃にはすっかり夜になっていて、歓楽街全体が騒がしくなっていた。
私はとあるバーに入り、カウンターに座る。
「マスター、すまないあの男はいるか?」
「・・・。少しお待ちください」
バーのマスターはどこかに行き、しばらくするとまた戻ってきた。
「この店の裏でお待ちください。すぐに来るそうです」
「わかった。ありがとう」
私は立ち上がり、店の出口に向かって歩き出す。
「おい、あんた貴族か?ねーちゃんみたいな女が来るようなところじゃねえぞ?」
体格が良く、髭を生やした男が後ろから話しかけてくる。
「そうか、それはすまなかったな。すぐに出ていくよ」
「まあそういうなって、一杯だけ付き合ってくれよ」
男がニヤニヤと下品に笑いながら言う。
「悪いが約束があるんだ」
「あ?嘘つくなよ。ちょっとぐらい付き合えよ」
男は左手で私の腕を掴み、しつこく言い寄ってくる。
「おい、貴様いい加減に―」
「ぎゃああああ!」
私が振り返った時、私の腕を掴んでいた男が叫びだした。
よく見ると男の左腕が折れていた。
「その女は俺のツレだ。腕一本で許してやる。さっさと消えろ」
「す、すいませんでした!」
もう一人別の男が現れて、私に絡んできた男を睨んだ。
腕を折られた男は、その折れた左腕を抑えながら走って店を出て行った。
「私を助けてくれたのか?」
「何言ってんだ、お前みたいな暴力女に殺されないようにあの男を助けたんだよ」
「相変わらず口が悪い男だな」
「お前もいつになったら女らしくなるんだ、オリビア」
「半年ぶりだな、ロイド」
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