第15話 魔神vs真祖吸血姫

「わ、私の剣を素手で受け止めた!?」


 俺はメルレイアの剣を殴ってはじき返す。

 メルレイアははじかれた勢いで俺から離れる。


「威勢はいいが大したことないな、メルレイア」


 俺はメルレイアを挑発する。


「相手は女王様一人だけではありませんよ」


 後ろからアルカードの声が聞こえ、振り返ると槍の先端が目の前まで迫っていた。

 俺は頭を横に動かし素早くよけ、アルカードの腹に蹴りをいれる。

 アルカードの体がミシミシと音を立てる。


「ぐはっ!」


 アルカードが苦しそうに声をあげ、蹴られた勢いで地面を何度もバウンドしながら吹っ飛ばされ、地面に転がる。

 アルカードが持っていた槍が音を立てて地面に転がり落ちた。


「アルカード!」


 メルレイアがアルカードのそばに寄る。アルカードは両手で腹を抑え口から血を吐く。

 相手がどこまで強いからわからなかったから少し抑えめにしたのだが・・・どうやらやりすぎたようだな。殺しても後味悪いから力を入れすぎないように気を付けよう。


「ごほっ!ごほ・・・はぁ・・・くそ!・・・なんて威力だ・・・」


 アルカードはふらふらになりながら立ち上がる。今にも倒れそうだがなかなか根性がありそうな奴だな。


「アルカード。少し休んで。私が一人で戦うわ」


 メルレイアは一歩前に出て俺に向かって剣を構え、俺に切りかかってくる。

 凄まじい速さで剣を何度も降るが、俺は最小限の動きでそれを躱す。


「遅いな。このままだと一生俺には当たらんぞ」


「うるさい!」


 こいつムキになるタイプだな。冷静に判断して戦っているようには見えない。

 俺はメルレイアの剣が俺に当たるタイミングで剣を受け止めて掴んだ。

 メルレイアは剣を動かそうとするがびくともせず全く動かない。

 それを見てメルレイアが子供がいたずらするときのようにニヤリと笑った。


「今よ!【血牢けつろう】」


 掴んでいた剣が赤い液体に変わり、俺に巻き付いて俺の体を締め上げた。

 軽く体を動かそうとしたが、少ししか動かせなかった。


「引っかかったわね!」


 メルレイアは身動きが取れない俺の頭に向かって綺麗な脚で蹴る。

 蹴りが直撃してしまい、少し口の中が切れたが大したダメージではなかった。


「そろそろ本気を出してくれ。こんなんじゃ俺は倒せないぞ?」


「なっ!噓でしょ!?全然効いてないじゃない!」


 俺は力を入れ、纏わり着いてる血を振りほどく。

 俺は目の前のメルレイアに向かってお返しとばかりに顔を蹴る。

 メルレイアはそれを両手で受け止めるが、勢いを殺しきれずに足を引きずりながら横に押される。


「すごい蹴りね・・・。蹴られたところがびりびりするわ」


「よく受け止めたな。結構力入れて蹴ったんだけどな」


「まだまだこれからよ!ようやく体が温まってきたところじゃない」


「俺もこの世界に来てようやく少し本気を出せそうだ。かかってこい」


 俺はメルレイアに向かって拳を構える。

 メルレイアは俺に向かって走る。手の平から血を出し赤い剣を2本作った。

 赤い剣が俺に向かって飛んでくるが、後ろにバク転しながら2本の剣を躱す。

 一本の剣が血に戻りメルレイアの右手に巻き付いて籠手のように変化し、もう一本剣が地面に刺さった。それをメルレイアが踏み台にして高くジャンプする。


「やぁぁぁぁ!!」


 メルレイアが渾身の力で俺を殴ってくる。それを俺は腕を交差させ受け止めた。

 受け止めた衝撃で砂埃が舞い上がる。

 砂埃が収まってメルレイアの綺麗な顔が近くに見える。


「まだよ!」


 メルレイアの血の籠手が液体に変わり短剣2本に変わり、俺に向かって飛んでくる。

 その短剣が俺の肩と横腹に一本ずつ突き刺さる。


魅了チャーム


 俺がメルレイアの目を見ていると、メルレイアの目が怪しくピンク色に光る。


「ん?何だこれは?」


 俺は体が固まったように動かなくなった。

 メルレイアは素早い動きで俺の後ろに回り、俺に抱き着いてきた。


「魔神の血はどんな味かしら?初めてだから楽しみだわ・・・」


 メルレイアは尖った上の歯を俺の肩に突き刺す。

 突き刺した瞬間俺の体が動くようになったので、俺は体を回転させてメルレイアを振りほどく。

 メルレイアは俺から離れて蝙蝠のような羽を広げ空中で停止する。


「少し血を吸われたみたいだな」


 肩から血が流れ出ていて、噛まれた時血を吸われた感覚があった。

 あの一瞬で血を吸ったのだろう。


「はぁ~すごいわ・・・なんて美味しい血なの・・・。それにこの魔力量」


 メルレイアがトロンとした目になっていて両手で頬を抑えて体をくねくねさせていた。


「こんなに満たされたのは久しぶりだわ・・・。久々に姿になれそうね」


 メルレイアの魔力が一気に膨れ上がる。


「メ、メルレイア様そのお姿になるのはおやめください!また反動で動けなくなりますよ!」


「アルカード、今回は大丈夫よ・・・。だってこんな美味しくて濃い血を飲んだのよ?もう衝動が抑えられそうにないわ」


 俺は一度後退し、メルレイアの反応を伺う。


「あれはまさか!?真祖回帰しんそかいきです!ザラス様気を付けてください!」


 ステラが慌てた様子で俺に忠告する。


「なんだ?強くなるのか?面白い!お前の真の姿を俺に見せて見ろ!」


 メルレイアの体から滲み出るように赤い線が白い肌を伝っていき、模様のようなものが体と羽に浮き上がってきた。

 銀色の髪に赤色のメッシュが入り、目がさっきよりさらに濃い赤色に変化した。


「最高に気分がいいわ・・・。久しぶりの真祖回帰ね。ザラス様、これが私の本気よ」


 メルレイアが先ほどとは様子が変わり大人っぽく妖艶に笑いながら俺の方を見る。

 神祖回帰する前とは比べ物にならないほど魔力と存在感が跳ね上がっていた。


「少しはマシになったようだな。少しは楽しませてくれよ」


 俺は挑発するように笑った。

 メルレイアは一瞬で俺の前に移動し、俺の腹を殴った。


「ぐっ!」


 腹筋に力を入れて耐えたが勢いを殺しきれず、闘技場の壁まで吹っ飛び、俺は片膝を付いた。


「ザラス様・・・ここから第2ラウンド開始よ」

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