第11話 エルフ村訪問
俺はロイドが森の中に走っていくのを見ていた。
「ステラ、俺が好きに戦えるように配慮してくれて助かったぞ」
実は俺がクロークス盗賊団と戦っている時にエルフを人質にされたり、攻撃が当たらないように牢馬車の近くで待機してくれていたのだ。何も命令していないが気が利くやつだなと戦っている時に思った。
「いえ!ザラス様が楽しそうに戦っている姿を見ることができて、私もとても嬉しかったです!」
そういうとステラが俺に前から抱き着いてきた。
今まで何回かくっつかれているが未だに慣れん。
「ふふっ、ザラス様。今二人っきりですね!」
「えっ?あ、ああ。そうだな」
「私、今ザラス様を独占しているみたいでドキドキしています・・・」
今まで以上に力強く抱き着かれているので、ステラの柔らかい胸が俺の体に押し付けられる。
こ、これがおっぱいか!素晴らしい!柔らかくて弾力があるぞ!
「ザラス様、私が今ドキドキしているのがわかりますか?」
「い、いや・・・あまりわからんな」
ステラは少し離れ、俺の右手を両手でつかみ自分の胸に当ててきた。俺の手の形に合わせて胸に沈んでいく。
「なっ!」
おい!人間だった頃の俺!今俺はつ、ついに胸・・・いや、おっぱいを触っているぞ!
しかもこんなにかわいい女の子のおっぱいを!!!
俺は頑張って厳格な主を演じているが実はただの変態でした。すいません。
「これでわかりますか?ザラス様の手おっきい・・・。さらにドキドキしてきました」
ステラが目をうるうるさせながら俺を見上げる。頬もわずかに赤くなっていてそれはもうめちゃくちゃ可愛い。ていうかドキドキしてるのなんかわかるわけない。なぜなら胸の脂肪が大きすぎてその感触しかわからないから。
「ドキドキしているかはわからんが、ステラが俺を慕ってくれているのは十分伝わったぞ」
「はい!ふふっ、ザラス様少し顔が赤くなってますよ?」
「そんなことはない。気のせいだ」
「かわいいですね!ザラス様の可愛い一面が見られて嬉しいです!」
「うぐっ・・・。さ、さぁ俺たちも帰るか」
俺は誤魔化すように話題を変える。まずい、俺の主としての理想像が崩れ始めている。
「はい。ですがその前にエルフの村に寄ってもよろしいでしょうか?一応様子を見ておきたいのです」
「そうだな。村の復興に関して手伝えることがあるかもしれんな」
「それではエルフの村に行きましょうか」
俺たちは【
来た時のようにまた空を高速で移動しながらエルフの村に向かって進んでいく。
20分くらいでエルフの村に到着し、村の前に降りた。
「火はもう消えていますが、家がほとんどなくなって周りの木も燃えた跡が残ってますね」
村を見ると、木で作られていた家が全焼した跡がいくつか見えた。エルフの村の規模は50人程度だろう。エルフ達が他のエルフの治療していたり、がれきや燃えた木を片付けていた。
「ああ、思ったより被害がでかいな」
村を見ていると見た目40歳くらいの男性のエルフがこっちに向かって歩いてきた。
「ステラ様、ようこそお越しくださいました。今見ての通りの状態で・・・。おもてなしできずにすみません。それと先ほど攫われたエルフ達が帰ってきまして、話を聞きました。そちらの方がザラス様ですね。ザラス様、ステラ様。盗賊達から村人を助けていただいてありがとうございました。」
「村長。エルフの方々には神殿の維持のお手伝いをして頂いておりますから、こちらこそあまり力になれずにすみません」
この人がエルフの村長か。エルフは長寿だから、きっと見た目以上の年齢をしているのだろう。
「何を言うのですか!攫われたエルフを助けていただいただけでも十分です!村がなくともエルフが助かればそれでいいのです。我々は最悪木の上で生活できますから」
村長は苦笑しながら言う。本当は悔しくてたまらないのだろう。口ではそういうが両手を握りしめていて、血が出ていた。とりあえず怪我人の回復が先だな。
「俺からも礼を言う。エルフには世話になったみたいだからな。怪我人を全員一か所に集めてくれ。俺が回復魔法で回復させよう」
「ザラス様は回復魔法が使えるのですか!?わかりました。おい!みんなー、怪我人を集めろ!」
村長が大きな声でエルフ達に命令すると、ぞろぞろと怪我をしたエルフ達が集まってきた。
怪我の大小は様々で、骨折して歩けないエルフから少し血を出しているだけのエルフもいた。
【光上級魔法・エクストラエリアヒール】
俺の周りが光の魔力で包まれる。するとエルフ達の傷が逆再生するかのように回復していった。
「すごいぞ!一瞬で骨折が治った!」
「急に痛みがなくなった!?これでみんなを手伝えるわ!」
エルフ達が元気になり少しだけ活気が戻る。
「すごい・・・上級魔法を使えるなんて・・・ザラス様は救世主だ!」
村長は俺が使った魔法が上級魔法だとわかったようだ。魔法の知識があるみたいだな。
「ザラス様ありがとうございます!何人か盗賊との戦いで死んでしまい落ち込んでいましたが、これで少し気持ちが晴れました」
「村長・・・死人が出ていたのですね・・・」
「ええ。人間の国ではエルフを奴隷にしているらしいので元々人間をよく思っていなかったのですが、今ではもう殺したいほど憎く感じています。私は盗賊に対して何もできず、悔しくて仕方がありません」
村長が唇をかみながら、眉間にしわを寄せ話す。
俺も今回の件で人間に対していいイメージはなくなっていた。
「村長、俺たちは近々人間と戦争をするつもりだ。お前たちエルフの仇もしっかり取ってやる。勝利したらまたこのエルフの村に来る。その時は一緒に祝おう」
「エルフたちの仇を取ってください!よろしくお願いします!私達は力になれませんが、ザラス様の勝利を願っています!」
「ああ、必ず勝って報告に来る」
村の様子や村長の話を聞いて、俺たちはまたひとつ人間との戦いで負けられない理由ができた。
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