第4話 異世界の情勢
俺たちは神殿の長い廊下を歩いていた。
この神殿は石で作られていて、傷一つなく新築のようだった。
「結構綺麗な建物だな」
「ザラス様のために常に補修し、掃除は毎日欠かせずにやりましたので」
ステラが得意げに答える。
「ところで他の魔王達はもう人間と戦っているのか?」
「いえ。この300年はそれぞれ別の地で戦力拡大しておりましたので、人間と魔物の小競り合いは頻繁に起こっていましたが大規模な戦争はしておりませんでした。みんなザラス様が復活するまでは眷属の魔物を召喚・繁殖して街を発展させたりしていたみたいです」
神殿の廊下を5分ぐらい歩くと80段ぐらいの長い階段が見えてきた。
俺がいた部屋は地下にあったみたいだ。
階段を上ると大きな両開きの扉の前に着いた。
「ザラス様、神殿の出口に着きました」
「そうか、やっと外に出れるのか」
「はい、他の魔物たちもきっとザラス様の復活を喜ぶと思います。さあ扉を開けなさい」
ステラの声掛けで俺の後ろにいたメイド2人が扉を両側から開ける。
扉が開いた幅に合わせて、日の光が中心から左右に広がるように俺たちを照らす。
神殿の外は木造の家や巨大な蟻塚のような建物がいくつか建てられて、人口400人ほどの村ができていた。
「神殿の周りには魔物たちが生活していたのか」
「はい。ここにいるのは私と同じ魔人族の魔物たちですね。魔人族は水色の角があるのが特徴です」
よく見るとそこで暮らしている魔物の姿は多種多様で、水色の角が生えている人間の姿の魔物や肌が赤く角を生やした身長3mの男などがいた。
村にいた魔物達が俺たちの姿を確認し、集まってきた。
その全員が俺たちの前で跪く。後ろにいたメイドたちも一緒に跪いていた。
「みなさま、ついに魔神ザラス様が復活されました。ザラス様、みなに一言お言葉をお願いします」
えっ?急に?いや無理無理!俺人前で話すの初めてだし緊張するもん!
何を言えばいいんだ!?とりあえず俺の魔力を見せながら適当なこと言っとくか。
「魔神ザラスだ。俺は復活した!遂に魔物がこの世界を征服する時が来たのだ!
」
俺はそう言うと同時に魔力を体から大量に放出する。
「ぐっ・・・!さすがザラス様凄まじい魔力です!」
ステラがそう言い、周りの魔物達は俺の魔力をみて震えていた。
「人間どもを支配し、我々魔物の恐ろしさを知らしめ、お前たちは存分に殺戮を楽しむがよい。以上だ」
俺は魔力の放出をやめると同時に、魔物達は声を上げる。
「「「うぉぉぉぉぉ!!!ザラス様!ザラス様!」」」
「すげぇ!なんだよあの魔力やばすぎだろ!」
「やっと人間を殺せるんだな!」
俺の演説はうまくいったみたいだ。魔力の放出は思ったより効いたみたいだ。
自分の言葉で魔物たちが盛り上がっているところを見るのはなかなか気分がいいな。
「はぁ・・・はぁ・・・あぁ~想像していたよりザラス様の魔力が濃い・・・きゅんきゅんしちゃいます!」
ステラが涎を垂らしながら俺の方を見ていて若干引いたがまあ結果オーライだろう。
外に出ると他の魔王達の魔力を感じた。やはり少し離れた土地で街を作ってるみたいだな。
「ごほん、それではみなさま引き続き作業に取り掛かってください」
ステラがそういうと魔物達は立ち上がり、それぞれ作業を再開した。
俺は何をしようか考えているとステラに声を掛けられた。
「ザラス様、それではこちらに来ていただけますか?」
「ああ。どこか行くのか?」
「ザラス様には神殿の中の部屋で世界の状況をお教えします」
「わかった」
そういうとステラの先導されてまた神殿の中に入り、ある一室に案内された。
そこは20畳ほどの部屋で木造の大きな正方形のテーブルに世界地図のようなものが広げられていた。
「これ世界地図か?」
「はい。まず私たちが召喚されたこの森はこの星の約4割ほどの広さで、私以外の魔王6人はそれぞれその森の中で城や街を作り戦力拡大しています。一番大きい街になると人口10万人ほどの街もあります」
この森そんなに広かったのか。後でそれぞれの街を見てみるのもいいかもしれん。
「ちなみにこの村は400人ほどの規模で私と同じ魔人族と30人ほどのエルフがいます。魔人族は五感に優れていて主に偵察や暗殺に向いている種族ですね。かなり上位の魔人になってくると未来予知に近い第六感を持つものもいます」
たしかにこの村にいる魔物はほとんど人間と変わらない姿だが水色の角を生やしていた。
「そして人間の国ですが大きい国が6か国あります。それぞれが人口1千万人以上の規模の国です。昔はそれぞれ国同士で戦争していたみたいですが、私たちが活動し始めてから魔物を脅威に思ったのか、現在は休戦しているみたいです。」
「なるほど。かなり人間と魔物の間で人口に差があるな」
「人間は私達と違って長い間少しずつ国を発展させてきましたから、ですが心配ございません。調べたところ人間たちは基本弱く、数では負けていますが我々魔王達とまともに戦える人間はほとんどいません」
「ほとんど、ということは何人かはいるのか?」
「はい。冒険者ギルドというものがありそこにいるSランク冒険者のパーティが複数協力し、こちらが不利な状況で戦えば私達魔王に匹敵する強さになるかもしれません。あとはそれぞれの騎士団長や軍の将軍レベルの人間もSランク冒険者と同等の強さみたいです」
「そうか。なら問題は天使どもだな」
「天使?聞いたことないのですが天使とはなんですか?」
「天使を知らないのか?神の使いでこの世界の一部を管理しているらしいぞ」
「神ですか?人間たちが崇めている本当にいるのかわからない存在ですよ?」
「いや、神はいるみたいだ。見たことはないが魔神がいるぐらいだし神もいるのだろう」
「ザラス様も魔神ですよね?」
「いや、正確にいうと【
「なるほど!ではザラス様は天使を倒すことが目的なのですか?」
「あぁ。人間を大勢殺すと天使が出てくるらしい。天使を殺すのが魔神ギレイヤとの約束だからな」
異世界で生活できるのも強くなれたのもギレイヤのおかげなので約束は守るつもりだ。何よりこれと言って楽しみがなかった地球から異世界に召喚してもらったからな。
「わかりました。ではすぐに人間と戦争いたしますか?我々はある程度準備できていますが」
「いや、ステラはどの程度人間たちのことを把握しているんだ?もう少し情報が欲しい。できれば国それぞれの戦力や文化、国同士の関係まで知りたい。人間はずる賢いからな、万が一にも負けるわけにはいかん。下手に戦争して負ければ士気も下がるからな」
「そうですね。では人間の国にスパイを送り内情を探らせます。何かわかったら改めて作戦を立てましょう。それまではザラス様はどうされますか?」
「そうだな。俺は情報が集まるまでこの村でゆっくりするとしよう。ちょうど魔法の試し打ちもしたいしな」
「わかりました。では手配しておきます。その間も私が誠心誠意お世話させて頂きますね!」
ステラは笑顔でそう言った。
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