第1話 七大魔王召喚

 どうやら俺は本当に異世界に転移できたみたいだ。

 雲一つない空に、太陽が真上にあったので時間は昼頃だろうか。

 周りには木が茂っていて、木の葉が風でゆらゆらと揺れていた。

 鳥や獣の声らしきものが聞こえる。


「他の生き物もいそうだな?とりあえず森を探索してみるか。」


 森を少し歩いてみるが全く景色が変わらず、あるのは木ばかりだった。

 この森かなり広そうだ、高い場所から見れば何かわかるかもな。


 俺はひざを曲げて腰を落とし、足に力を溜めてバネのように膝を伸ばし飛び上った。

 500mほど飛び上り、周りを確認する。


「やっぱり結構広い森だったんだな!」


 かなり広範囲に木が生い茂っていて遠くに大きな街や村が所々にあり、空には大きな翼を広げて飛んでいる鷲のような生き物が何匹か確認できた。


 地面に引っ張られるように急降下し地面に着地。着地したときに発生した風で砂が巻き起こり、俺を中心に大きなクレータができていた。


「でっかい鳥が飛んでいたし、遠くに街があったな。異世界にきたって実感沸いてきたな!」


 地球には絶対にいなかった生き物を見たのでテンションが上がる。


「!?」


 突然背中から殺気を感じたので振り返ると、20mくらいの紫色の蛇が口を開けてこっちを見ていた。体を波打つように動かし鋭い目つきでこちらの動きを伺っていた。


「これまたでかい蛇だな・・・・。自分がこの世界でどのくらい強いか試してみるか。」


 俺は右手を蛇に向かって突き出し、魔法を放つ。


【アイススピアー】


 右手から氷の槍が放たれた。その槍は蛇の口の中から体を貫通し、大量の血をまき散らせながら倒れ、ぴくりとも動かなくなった。


「なんだよ初級魔法で一撃か。異世界の生き物も大したことないな。いや、こいつがたまたま弱い奴だっただけか?」


 ギレイヤから教えてもらったがこの世界は魔法が存在し、初級、中級、上級、最上級の4つレベルがある。それに加え魔人や神が使える神級魔法がある。異世界で天使を殺すためには神級魔法の魔法レベルで攻撃しないとダメらしい。俺は半魔神になったので神級魔法が使える。


 まだ1つしか使えないが。


 異世界に来る前の修行中にギレイヤから神級魔法を使えなかったら異世界には転移させないと言われていた。この世界の人間も魔法を使えるみたいだが最上級魔法が使える人間は歴史的にみてもほとんどいないそうだ。


「なんか腹減ったな。この蛇食えそうだな」


 先ほど倒した蛇の死体を持ち上げそのままかぶりつく。


「普通にまずい。あぁ~地球の飯が恋しい。この世界にも香辛料とかあったらいいな」


 今の俺は半魔神なので体はかなり丈夫で、毒があったり通常食べれないものでも消化できる。修行していた空間は特殊な空間でこの世界とは時間の流れや物理法則が違い、何も食べなくても生きていけた。


 大きな蛇を少しずつ食べていく。あれだけ大きくても1時間ほどで全部食べ切った。


「全部食べれたな。それにしても腹が膨れないしどうなってんだよ、この体。今更だが完全に人間やめてるわ」


 あの20mの巨体を平らげたが食べる前の体形と変わらなかった。


「お、おいお前何者だ!?」


 振り返ると剣を持った男が2人、弓を持った女が1人立っていた。


「あなた人間?でもその角はなに?」


「さっさと殺して身ぐるみ剥がそうぜ」


 人間たちが武器を取り出して俺に向かって構える。

 異世界に来て、第一村人発見だな。ちょうどこいつらもやる気満々だしお手並み拝見といこうか。


【アースニードル】


 俺は魔法を唱えると地面から大きな棘が生え二人の男の腹を突き刺した。


「は?う、嘘だろ?」


「なんだ、腹が熱っ・・・」


 2人の男が状況を理解する時間もないまま死んだ。えぇ・・・初級魔法で一撃かよ。こいつら弱すぎだろ。

 それを見た女が尻もちを付き涙目になる。


「きゃああああ!!」


 俺は女に近づいていく。


「い、嫌!来ないで!」


 俺は尻もちを付き、震えて何もできなくなった女の首を掴んだ。


 バキッ!


 軽く力を入れるといとも簡単に首の骨が折れてしまった。


「少し力を入れただけだぞ!?」


 俺は殺してしまった人間達を改めて見る。

 俺は人を殺したんだ。今になって罪悪感が押し寄せてきて、吐いてしまった。


「おえぇぇぇぇぇ、はぁ・・・はぁ・・・こんな調子でこれから先どうするんだよ・・・、俺はもっと人間殺さなきゃいけないんだぞ!しっかりしろ!」


 俺は自分に言い聞かせる。すると後ろから足音が聞こえた。俺は驚いて振り返るとそこにはさっき首の骨を折って殺した女が立っていた。

 女は首が折れて、顔だけが横になっていた。


「は?ま、まだ生きているのか?」


 女をよく見るとさっきとは違い、目が赤色に光っていた。

 俺はなぜかその女を見てブルリと体が震えた。

 なんだ!?こいつさっきとは明らかに雰囲気が違う!


「貴様で8回目だ・・・。。神からは聞いてないぞ」


「お、お前急に何言ってんだ?」


 女はまた糸が切れたかのように倒れた。俺は近寄って体を揺らしても起きる気配がない。


「やっぱり死んでいるな・・・。どういう事だ?」


 意味が分からん。さっきのはなんだったんだ?


 ◇


「そういえば、異世界に来たら魔物を召喚して戦力を増やせってギレイヤから言われていたな。早速召喚してみるか」


魔物召喚まものしょうかん七大魔王ななだいまおう


 そうつぶやくと体から大量の魔力が抜けるのを感じた。

 自分の目の前で大きな七色の魔法陣が出現し、強く発光する。

 徐々に光が弱くなり、その中から女5人・男2人の七体の影が出てきた。

 それぞれが別の種族の魔王で吸血鬼・竜種・スライム・魔獣・魔族・死霊・悪魔という構成だった。


「俺はザラスだ。これから一緒に異世界征服する仲間だ。よろしくな」


「「ザラス様、私・俺たちを召喚して頂きありがとうございます」」


 一人ひとりからかなり強い魔力を感じる。よくこんなやつらを召喚できたな俺。



「まずは戦力を増強して、俺たちで人間を殺しt・・・・」


 話している途中に全身の力が抜けて前のめりに倒れる。

 これまさか魔力切れか?やっと異世界に来たのに!


 魔力切れは魔力が完全に回復するまで動けなくなる。

 その瞬間俺は目の前が真っ暗になり意識を失った。



 ◇


「ねえ、これどういうこと?ザラス様死んじゃったの?」


 吸血鬼の女が質問する。


「そんなわけあるか!魔神様がそう簡単に死ぬわけないだろ」


 すぐさま悪魔の男が反論する。


「これは魔力切れによる気絶ですね。さすがに私達魔王の7人の同時召喚はかなり魔力が必要ですので」


 魔人の女が答える。


「これいつ目覚めるのかニャ?ザラス様といろいろお話したいニャ~」


 魔獣の女が言う。


「僕たちよりザラス様はかなり魔力が多いから完全回復までかなり時間がかかるネ」


 黒いスライムが言う。


「なによ!だらしないわね!私をほったらかしにして気絶するなんて!それで?私達だけで人間殺せばいいのかしら?」


 竜族の女が腕を組み、怒りをあらわにして言う。


「ザラス様可哀そう・・・・目が覚めるまで私がそばにいてあげるね」


 死霊の女が言う。


、人間ぶっ殺せるなんて楽しみだニャ~」


「どのくらいで魔神様は目覚めるんだ?」


「そうだネ。魔力の量を見る限りかなり時間かかりそうだネ」


「ではザラス様が目を覚ますまでに私達は戦力を整え、人間を皆殺しにする準備を整えましょう」


 魔人の女の言葉に他の6人の魔物が頷いた。

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