第28話 竜が思いいたる
ふぃぃぃ〜~~~…………
ぬわぁぁぁぁぁぁん!疲れたもぉぉぉぉん!やめたくなりますよぉぉぉドラゴン!
とりあえず、記憶の限りウンコした場所に突撃して、出来てた樹海を焼き払ってきた。
さしものドラゴンウンコといえど、ドラゴンの炎を受ければ流石に耐えれまい!
……俺のウンコはバイオ兵器か何かか?
砂漠も問答無用で緑化してたからな。どこから水源確保してんだろ。
しかし、ウンコする場所も考えないとな……差し当たり俺が塒にしてる洞穴の近くをトイレに決めるか。
あの辺りなら例えガチの世界樹できて地下に迷宮とか出来ても大丈夫だろ、多分。
でもアレだったな、樹海に
歯ごたえとか強敵とかそういうの一切ない、さすが最強の力だけある。
あ、でも森の奥にいた
楽しかったけどなぁ……。
…………。
まあ……ウンコの話はもう置いておこう。
解決はしたからな。
とりあえず、あの開拓村に戻って……ミコさん置いて行きっぱなしだったもんな。
流石に世界中にばらまいた樹海を1つ1つ潰していくのは時間かかっちゃったしな。
太陽が出ている場所を追い抜いたりとかしてたから日付感覚がグチャグチャだけど……1週間くらいはかかったんじゃないかな?
ミコさん、ハブられてないといいけど……うっ、前世の記憶が。
とりあえず開拓村に戻るか、全速前進だ!
…………。
よし見えてきた!
ん?
……見えてきたけどなんか様子が変だな。人がわちゃわちゃしていて、お祭りとか……やっていらっしゃる?
……いや違うな、剣とか槍みたいな武器とか出てるし、鎧着てる人とかいるし……え?!開拓村が襲われてる?!
野盗か?!
……いや野盗じゃあないな、あの鎧側が掲げてる旗……百合と剣の紋章は見たことあるぞ、リュミエール王国だ。
じゃあ王国の騎士団とかかあれ?
でもあの開拓村……セーズ村って王国領なんだろ?なんで攻撃されてんだ……?
……はっ!
さては悪徳領主とかそういうヤツだな?!
なんかこう生きるのもやっとな税を課せられていて、払えなければ女を連れて行くとかそういうアレに違いない!
そんで遂に我慢の限界がやって来たセーズ村が決起したのか!
こうしてはいられない!
俺ドラゴン、加速します!
とはいえ全力で飛ぶと地表が衝撃波で引き千切れるからな(1敗)……ゆっくり急げ!
よし上空に到着!
村のみんなは……思ったより健闘しているけど、押されてるな。
ミコさんは無事か?
お……おお、おお!騎士っぽい相手と戦ってる。
ミコさん強いんだな、やっぱ……ん?なんか雰囲気変わってる?
記憶の中のミコさんとなんか違うような……って、いやいやこの騎士も強いな、ミコさんのフェイント見切ってるやん。
げ!カウンター入った!
やべ!ふざけてる場合じゃない!
そういうわけで乱入だ!!着地!!
「……う、うわああ!!なんだぁ?!」
「御方……!」
「ド、ドラゴンッ……?!」
「ドラゴン様だ!!」
……よし、とりあえず今の着地で敵味方、誰も吹っ飛んだり怪我したりしてないな。
俺の登場で、戦いは一旦休止になったようだ。
村の人たちは下がって、戦っていた兵士たちも腰を抜かしたり慌てて槍を構えていたりしている。
ミコさんの相手の騎士は……反応早いな、すぐに態勢整えて剣を構えてる。
騎士が庇っている……騎士の後ろにいる、なんか偉そうな服着てるヤツが悪徳領主か?
「……き、貴様が! ド、ド、ドラゴンか!城塞都市ブルスを攻撃し!さらには、セーズ村を奪い取ろうというのか!!」
言葉が少し震えつつも、俺のことを睨みながら叫ぶ悪徳領主。
結構イケメンだな……これがフィクションなら、きっと仲間サイドの有能で正義感の強いタイプの貴族だろう。
だが残念だが、この世界は現実だからな……見た目がイケメンでも名君とは限らん。
グルルルルルル……ッ
「ひっ!」
低く唸ると、思わずと言った様子で短く悲鳴を上げる悪徳領主。
だが逃げずに腰に下げたサーベルを引き抜きこちらに向けてくる……肝も度胸もでけぇなぁ。
ますます悪徳領主には勿体ない心意気だ。
「りゅ、リュミエール王国万歳!ドラゴンを討ち取れッ!!」
「「お、おおおおお!!!」」
悪徳領主が声を上げると、怖気づいていた兵士たちが声を上げて槍を構える。
手槍や手斧、弓を持っている奴が弓矢を撃ってくるが……効かんなぁ!!
「ま、まるで歯が立たない……!」
「魔術を!!」
「ま、“まずは微かな火花、つぎに揺らめく火炎、そして焦がれる業火――【
お、火の玉が飛んできたが……火の玉ではなぁ!!ふん!!
「魔術も効果が無い?!」
「怯むな!休まず攻撃をくわえろ!!」
ミコさんと戦っていた騎士が、檄を飛ばしてなんとか戦線をもたせているが……まあ攻撃全然効いてない風だもんな、実際効いてないけど。
もうちょっとノーダメージアピールをして、少ししたら威嚇して逃げてもらうか……ん?
そういや、ミコさんはどこに……?
……あっ。
その爺さん……確か、村長だよな。この村の。
身体に深い傷があって……ミコさんが必死で手当てしてるけど……村長は目を覚まさない。血が流れ過ぎているんだ。
斬られたのか。
そっか。
…………。
ふう……。
まあ、手加減はしてやるよ。
俺は兵士とか騎士とか悪徳領主とかに向き直り、大きく息を吸い込んで。
思い切り吐き出す。
ゴウッ!!!
まるで空気が爆ぜるような音がして、凄まじい突風が巻き起こる。
……いや、突風なんて生易しいものじゃあないな。
台風……いや、竜巻ってヤツか。
「うわあああああああああああ!!!!」
「ぎゃあああああああああああああああ?!!!」
「たすげ……ああああああああ!!!!」
俺が勢い良く吐いた息は、即座にその場で空気の渦を作って。
兵士も騎士も悪徳領主も関係なく巻き込み、奴らの後ろにあった馬車だとか荷物持ちっぽい連中だとかも一緒に、遠く遠く空へと放り投げた。
あっという間に見えなくなる。
精々、自分の運を祈るんだな。
運が良けりゃ助かるんじゃないか?この世界の人って頑丈っぽいし魔術もあるし。
飛行機からパラシュートなしで飛び降りるようなもんだろうけどな、知らんけど。
別に、死のうが生きようが俺にはどうでもいいしな。
ふん!と鼻を鳴らす俺だが……すぐに振り向く。
深手を負った村長は……まだ息はあるけれど、もう今にも死にそうなほどに弱弱しい。ミコさんが必死に手当てしているけど、これはもう助からない。
……いや。
助けて見せる。
俺の力ならきっと、助けられるはずなんだ。
頼むぜ、ドラゴンの力。
俺が力を籠めると、光がうまれる。
赤ん坊を助けようとした時と同じだ、ミコさんが驚いて顔を上げ俺を見る。
周囲の村人たちも、皆一斉に俺のことを凝視していた。
世界が輝く。
周囲から光が集まっていって、憎らしいほどに青い空に光の尖塔がそびえたつ。
眩しいはずだけれど、しかし不思議と目を閉じなくても心地が良い。
そして、村長の傷が見る見る間に塞がっていく。
傷跡も消え去り、健康的な肌が見える。
……良かった、助かった。
と、俺はその時までそう思っていたんだが。
……あれ?
なんかお肌が瑞々しくない?
っていうか村長、爺さんだったよね?
なんでお肌のシワとかなくなってんの……いやなんか現在進行形で消えてるぞオイ?!
髪の毛がどんどんフサフサになっていくんだけど?!
でも白髪のままじゃん?!あ、元々髪の色が白いタイプですか、ハイ……。
あー!!!ちょちょちょ、ちょっとまって!
待って!とまれ!!いい子だからこれ以上髪の毛増やさないで!!
うるさいですね……フサフサ……!!
っていうか髪だけじゃねえ!!顔!!顔だよ顔!!
さっきまで酸いも甘いも経験した独笑が似合いそうな爺さんだったじゃん?!
なんか今の村長顔が若いよ?!
なんだろバトル漫画のライバルポジとかにいそうな顔!!
ニヒルな笑いとか似合う口が悪いタイプの!!
村長さん!!新しい顔よ!!若さ100倍!!!
……えー
爺さんが若返ってしまいました。
どうしよ。
……ま、まあ若返る分には良いだろ。多分。
今はまだ気絶して寝てるし、周囲の村人もなんかもうビビリ散らかしてるけど……いや俺だってビビるわ。爺さん婆さん若返ったら。
「流石、御方……私のときと同じように」
…………
ん?
ミコさん?
え、ミコさんにそんなことしてないよね?
爺さん以外には赤ん坊にしか……
…………
…………
…………おお!!
つまり俺のこれはあれか、回復魔法じゃあなくて、こう……細胞とか肉体とかを全盛に保つとか戻すとか、そういう系統の魔法なんだな?
だから爺さんは若返って若者になるし、幼い子供は一気に大人になるとかか!
なるほどなァ!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
やっちまったあああああああああああああああああああああああ!!!
ミコさんのお父さんとお母さんごめんなさあああああああああい!!!
……あの、ところでミコさん。
なんで、頭に、角生えてるの?
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