第23話 竜が駆けめぐる
うぉぉぉぉ!!!あっぶねー!!!
もうちょっとで、この
嫌だよせっかくミコさん連れての里帰りなのにいきなり修羅場の殺人現場とか!見た目は子どもの名探偵でも、もうちょっと段階踏むよ!!
間に合えー!なんとかなれー!と突っ込んでみたが間に合ってよかった〜〜。
…………
いや本当に良かったな。
間に合った方じゃなくて、ちゃんと狙い通りに鳥だけ潰して割って入れたことの方な。
ちょっと角度がズレてたら女の子を潰してたぞ。
トラックに轢かれそうな女の子を助けようとして、張り手で撲殺するようなもんだろ。
そうなったらドン引きだよ。
張り手で死んだら撲殺になるのか?まあいいやそこは。
とりあえず状況を確認……村人と、魔物と……。
……ん?
あの人達は前に村では見なかったな。
よく見ればこの女の子も村人じゃあない……よな?
ドラゴン脳味噌は学習力もあるし記憶力もあるっぽいからな。
前回見た覚えはないぞ。
「御方、冒険者の姿が見えます……この村に来たのでしょうか?珍しいです」
背中に乗ってるミコさんが話す。
……あ!冒険者か!
格好とかそれっぽいもんな!
……へー!本当にいるんだ!やっぱり冒険者がいると異世界って感じがするよな、テンションあがるなぁ〜〜。
……しっかし、いいなぁ冒険者。
俺も最強の力を持った冒険者になりたいですってチートを願えば良かったかもしれん。まあ今更だが。
さて。
「御方、魔物はどういたしましょう。このあたりでは見ないものばかりですが……お時間をいただきますが、私が倒しましょうか?」
とりあえず魔物の群れをなんとかするか。
ミコさんはこう言ってくれてるが、任せて怪我しても大変だ。
ってか、冒険者が苦戦してるなら単なる村娘のミコさんが敵うわけ無いだろ!
まあでも、見る限り……特に狼っぽい魔物なんかもう、俺にビビって腰が引けてるようだけれど。
わかるよ、俺だっていきなり空からドラゴン降ってきて目の前の歩行者踏み潰したりしたら脱糞失禁するよ。
俺のドラゴンとかいう見せかけだけで超ビビってんな?
……とはいえ追い払うには、もう一押し足りないか。
……どうするかな。
何せ実力行使すると絶対に間違いなく100%村人や冒険者巻き込むんだよな……民間人への攻撃は容認できないのだ。
退避勧告しようにも言葉通じないし……うーん。
あー、じゃあ、こう……威嚇とかでやってみるか。
漫画とかアニメでよくある、強者が出すオーラみたいなやつ。
これなら、いくら歩くリーサルウェポンの俺でも周囲を破壊せずに対処できる。
モノは試しだ、やってみるか。
こう、身体に力を入れて魔物を睨みつけて。
散れ。
殺すぞ。
…………え。
何で逃げないんだ……まさか強者の威風が俺には吹いていない?オーラ出てない?
……ん?
………
……し、死んでる……。
狼が泡吹いて白目剥いて……空飛んでたデカい鳥が殺虫剤食らった虫みたいにボタボタ落ちていく……落ちろ蚊蜻蛉。
……え〜〜……。
生存者0匹……生き残った魔物は誰一匹いませんでした……威圧や威嚇はやっぱりダメだったよ……いや致死率高すぎだろ。
俺の威圧オーラは毒ガスか何かかね?
地上最強の生物でも、強者オーラで即死まではさせてないだろ。
……ま、まあ気持ちを切り替えるか、これで村人とか冒険者は助かっ……
ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"ッ!!??
村人の皆さんに冒険者の皆さんも泡吹いて倒れとる!!??
あかん?!これはあかん!!助けてミコさん!!
いやミコさんは無事か?!
……良かった!!ミコさんは無事だった!!
顔真っ青だけど!震えてるけど!!
ごめんほんとゴメン!!でもお願いみんなを助けてあげて!!
◇◇◇
ミコさんのお陰でなんとかなった。
良かったぁ〜〜……。
よく考えたら俺も回復魔法が使えたが……いや、アレが結局回復魔法なのか未だに解んねえからな。
少なくとも赤ん坊は助かってなかったから、回復量としては微量か、あるいはやっぱり遅効性の爆破魔法なのか?いや自分に試したけど爆死はしてないが。
まあよくわからんモノは、おいそれと使いたくないって言うのが俺が出した結論だ。今回みたいにミコさんが介抱してもダメで他に手段が思いつかないときになら人類も納得してくれるだろう。
さて。
どうしてこんな魔物に襲われてるんだい?なんかすっごい苦戦してたけど。
それにこの辺じゃ見たことない魔物なんだって?そうミコさんが言ってたけど。
と、俺がそう尋ねられれば良いのだが。
俺は人の言葉を話せないし、じっと冒険者を見るだけだ。
当然だが冒険者の方々は萎縮している……ん?さっき助けた神官っぽい女の人だけはお目々爛々でこっち見てるけど。
「どうしたんですか?この辺りでは見ない魔物ですよね」
気まずい沈黙が続くかと思ったが、ミコさんが冒険者に問いかけてくれる。
ないっすぅー!
「あ、ああ。もっと森の奥にいるはずの魔物だ」
「開拓村を作る時には、ああいう手強い魔物がいない場所を選んでいるからな。数体程度が群れからはぐれてやって来る事はあっても、こんな数が襲ってくるはずがないんだ」
「確かに、こんなに魔物が来たことなんて始めてだ」
「ドラゴン様より鱗をいただいてから、魔物なんてここまで入り込みはしなかったのに」
「ドラゴン様はきっとそれを見越して鱗をくださったのだろう、だがそれでも魔物が来たとなると……」
え、俺の鱗そんな効果あるの?
何それ知らん……怖……。
ミコさんが口火を切ってくれたおかげで、冒険者や村人たちが色々と話し始める。
今回の事件は異常事態なのかぁ……そう思っていると、冒険者の魔女っぽい杖を持った女性が口を開く。
なんで魔女って色っぽいんだろうね。
「そもそも、魔物の様子がおかしかったわ。何かに怯えて逃げているかのようだったの」
「ああ、元々傷ついた魔物もいた。確かに何かから逃げてきたと考えるとしっくりくる」
「森の奥で、最近何か起きたのか?異常事態が……」
森の奥……奥ねえ。
そんなところで異常事態が起きてたら俺が気がつ―――………いや、まてよ?
最近起きた、異常事態?
…………
俺じゃん…………
俺とかいうドラゴンが異世界に住み着いたじゃん……
いや、まてまて、まだそう考えるのは早い!
魔物がやって来た方向と、俺が寝床にしている洞窟は方角が違う!
そうだ、別の問題があるに違いない!
オレじゃない!アイツがやった!知らない!済んだこと!オアシス!!
「そういえば異変と言うと……各地で突然、樹海が出たらしい。行商人の交易ルートや要所と被ったりして……しかもそこには、見たこともない新種の魔物が生息しているとか」
「ひょっとして、森の奥にもそのような場所が出来て……」
俺 じ ゃ ん ………
いいいいいいや!ままままだ、そ、そうと決まったわけではななななな
俺がドラゴンウンコを、こっちの村側の森でやった記憶は……。
…………。
………ある。
竜の素晴らしい記憶力は、この異世界に来てから俺が何処でドラゴンウンコをしたのかをしっかり思い出せる。
お前は今までに出したウンコの量を覚えているのか?もちろんさぁ。
ふー…………
俺のため息が、どうやら唸り声に聞こえたらしく。
その場にいた人たちが一斉に俺の方を見る。
彼らは、この一連の騒動の原因が俺のドラゴンウンコのせいだとは知らないだろう……だが、俺には彼らの目線がもう突き刺さってしょうがなかった。
グゥォンンッ!!!
ミコさんをその場に残し、俺は急いでその場を飛翔する。
何処に行くのかって?
ウンコの片付けだよ!!
樹海ごと焼き払ってくれるわ!!
全部だ全部!!ウンコした場所全部覚えてるからな!!
消えない過去なんてない、全部抹消してやる!!
汚物は消毒だ!!
ミコさん連れて行かないのかって?
嫌だよそんなこと!
俺のウンコ片付けてくれって、どんな顔して言えば良いんだよ!
プロポーズじゃねえんだぞ!
いやプロポーズでもこんなこと言わねえよ介護かよ?!
とにかく絶対嫌だ!!
俺は急いで、しかし周囲の被害が出ない速度で飛び立ち、森の奥のウンコをした現場へと急行する。
空は澄みきっていて、忌々しくなるほどに真っ青だった。
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