第12話:編入試験対策はしっかりと
彼女が来てまた数日、文乃は最近勉強をしているのか、あまり部屋から出てこないし、和也達でも誘ってどっかに行こうとか考える。
「……兄様、今大丈夫ですか?」
「別にいいが、どうした何か用か?」
部屋でゴロゴロしていると、部屋がノックがされ文乃が声をかけてきた。
とりあえず今はなにかしているわけでもないので彼女を部屋に入れることにして、何の用事なのかを聞く事にする。
「えっと、少し勉強を教えて欲しくて」
「……珍しいな、編入試験対策か?」
「はい私立の試験形式が少し分からなくて不安で……教えていただけると」
あー確かに私立の試験は三教科ぐらいしか出ないが、その分問題が難しいんだよな、教科書を理解するだけでは解けない問題もあるし、問題形式に慣れなくて解けないという事も聞く。
それに、文乃が海外の学校に通っていたから日本の試験には疎いだろう。
それに聞いた話だから間違っているかもしれないが、海外は実技試験が多いから日本の暗記を大事にするような勉強は出来るだろうが、まだ慣れていないかもしれない。
「ならちょと二時間ぐらい待っててくれないか?」
「……二時間ですか? 別にいいですけど」
「おう、ならちょっと部屋で待っててくれ」
そうして部屋を出て貰った後俺は、試験で使った過去問集を取り出してパソコンのソフトを使ってテストを作り始めた。
文乃の学力がどの程度かは分からないが、原作でのテスト描写、連日やっていただろうの勉強に、どうせ過去問を見てるだろうという人読みを組み合わせて、とりあえず難しい問題をいくつか忍ばせながら、俺が実際に試験で受けた問題を参考して――。
英語は大丈夫だろうが、万が一という事もあるし、勘だが出そうな問題を使ったテストも作っておく。あとは学校がこんな問題を出しそうとか考えながら作り進め、やってくる二時間後……国語、英語、数学の三つのテストを五枚ずつ作った俺は文乃の部屋に行くことにした。
「文乃今いいかー?」
「はい、大丈夫ですが……何してたのですか?」
「ちょっとテスト作ってた」
「はい?」
何言ってるんだこいつみたいな反応をされたが、これはマジなのでとりあえず受け止めて作ったテストを渡すことにした。
「上から国語、英語、数学の順だ。適当に作ったが、過去問参考にしたし、使えるとは思うぞ」
「私のために作ったのですか?」
「そりゃあお前以外に誰がいるんだよ」
「そう、ですか。兄様ありがとうございます」
「感謝はすんなよ。あくまでこれは俺の為だからな」
面と向かって感謝を伝えてくる文乃、まあ感謝されるのは嬉しいし頑張った甲斐があると思える。
「俺のため……ですか?」
「あぁ、学校での立場もあるし、せっかく手伝だったのに無駄だったら最悪だからな。どうせやるなら徹底的にやりたい」
こう言いながら、この調子で文乃を強くしようと新ためて決意する。
俺が今まで勉強や運動そして料理などを極めようとしたのには理由がある。
まず勉強に関しては、単純に文乃と主人公の勉強イベントのため、俺という完璧人間が壁になれば文乃と主人公の性格なら絶対に一緒に勉強するだろうから。
そして運動。定番の体育祭等の運動イベント。放課後特訓を見るために、とりあえずライバルポジになれるようにめっちゃ鍛えておいた。
最後に料理、これはもう分かるともうが……二人の料理イベ。
文乃が主人公に教えるもよし、主人公が料理を失敗してそれを咎める文乃が見たい。
何より文化祭での料理イベでは俺がめっちゃ美味く作ってしまえば、対抗心を燃やして成長するだろうという思いがあっての事!
我ながら完璧な作戦、そのための努力が地獄だったがこれもひとえに文乃のためだ。
「とりあえず、リビング行くか? テストやるなら部屋より監視出来る下の方がいいだろ」
「そうですね、なら行きましょうか」
そうして、テストを受けてもらうためにタイマーを持って下に移動して、四十分間を三セット繰り返すことにした。
「よし、終わり。二時間お疲れだ」
「……難しかったですね、これ本当に兄様が作ったのですか?」
「そうだが……というか、お前殆ど解けてるな。流石文乃、まあ少しのミスはあるが」
「悔しいです」
「いや、この点なら受かるだろ」
少しのミスはあるものの点数としては九十点以上、十分に合格ラインだし心配はする必要なさそう。英語に関しては満点だし、やっぱり文乃は強い。
というか、俺も勉強し直しかもしれない。これじゃあ拮抗していて壁になれない気もするし。
「まあ結果はこんな感じだ。あと心配なこととかあるか?」
「そう、ですね面接とか……」
「あ、そういえばそうだな」
面接か、これに関してはマジで難しいよな面接官によって質問が変わるし、テンプレな質問を対策していても変な方向から殴られることもある。
「じゃあ、俺が面接官やろうか?」
「お願い出来ますか?」
「まぁ、任せろ」
……とりあえず、スマホでどんな質問があるか調べて俺なりに聞きたい事を整理する。それである程度、どんな質問をするか理解した後俺は彼女に対して面接官になりきって質問を始めた。
聞く質問は八個。調べて出てきたテンプレなモノが多かったが、文乃はしっかりとした受け答えが出来てたし、ちょっとキツい質問しても動じず答えてくれた。
文乃贔屓ではないが、これなら大丈夫だろうと思える彼女の態度に俺は安心しながらこう伝えることにした。
「これなら大丈夫だろ」
「本当ですか?」
「おう、兄を信じろ。文乃なら出来るって」
「なら信じます」
「おう、信じろ信じろ」
それから今日は解散、各々で部屋に戻りまた夕飯時に集合という感じ。
試験まではあと一週間、丁度花火大会がある前日だ。
それまで文乃は頑張るだろうし、出来るだけ手助けはしよう。
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