第11話 自宅へと凱旋する
──盗賊団が壊滅した。
フロールス王国のグレイゴール辺境伯領で猛威を振るい、領民を悩ませていた大規模盗賊団が討伐されたのだ。
その偉業を成し遂げたのは、デリル・グレイゴール其の人である。
彼は盗賊によって苦しめられていた民の窮状を憂い、冒険者ギルドに掛け合って、討伐隊を組織する。
S級冒険者シルヴィアと妹分のミリーナを討伐隊に引き入れ、見事に盗賊団を壊滅することに成功したのだった。
──という触れ込みで、俺は自宅へと帰宅した。
戦乱が続き、人手不足と治安の悪化から、盗賊団は手が付けられない程に拡大していた──それは事実だ。
討伐する動きが出たのは、ちょうどこの地にS級冒険者シルヴィアと、A級冒険者ミリーナが滞在していたからなのだが、そこのところを上手くぼかして、俺の手柄として世間に喧伝した。
シルヴィアとミリーナには『グレイ』が頼んで、口裏を合わせて貰っている。
彼女たちに、俺の名声を高める手伝いをして貰えたことで──
デリル・グレイゴールの評判は、うなぎ登りだ。
……実家を出るときに、大金を持ち逃げしている。
そういった武勇伝をでっち上げてからでないと、戻り辛かったのだ。
世間では盗賊を討伐する為に、S級とA級の冒険者コンビをこの地に招聘したのは、この俺、デリル・グレイゴールという事になっている。
シルヴィアとミリーナの好感度は、ラブ・アローでマックスだ。
二人の『グレイ』に対する忠誠心は、限界を超えて高められている。
俺にとって都合の良いように、口裏を合わせて貰うことなど造作もなかった。
デリル・グレイゴールは、グレイ少年の恩人であるということにして、二人に話してある。
『デリル』と『グレイ』が同一人物だと知っているのは、暗殺少女のレキだけで、他の仲間たちはそれを知らない。
──説明するのが面倒だったので、まだしていない。
シルヴィアとミリーナには、盗賊から足を洗わせた元盗賊たちの指導を任せている。彼女たちは、冒険者として一から経験を積んでいる所だ。
──この先、何かの役に立つかもしれない。
彼女たちの活動資金として、実家から持ち逃げした金の残りを渡してある。
小金貨八十枚以上あったので、当面の生活には困らないだろう。
俺はレキと二人で、この家に帰ってきた。
冒険者として活動を開始した彼女達とは、別行動になる。
元々この家を出たのは、暗殺者(レキ)に命を狙われたからだが、強力な戦力を手に入れ、側近のレキの能力も、飛躍的に伸ばすことに成功した。
──もう逃げ隠れしなくても良いだろうと思い、帰って来たのだ。
折角、貴族に生まれ変わったんだ。
出来るのであれば、贅沢にまったりと暮らしていきたい……。
──それが、人というものだ。
自堕落、最高ー---!!
俺には盗賊団をあっさり壊滅させる力を持つ、凄腕冒険者のシルヴィアとミリーナがいる。
元女盗賊のンーゴもそこそこ強いし、野盗時代の土地勘や人脈も侮れない。
暗殺者のレキも強化して、かなりの手練れになっている。
──自由に動かせる戦力が、これだけいるんだ。
親父から命を狙われていたとしても、返り討ちに出来るだろう。
──もう、逃げ隠れすることもない。
「早速、昼寝でもするかな──」
俺はベットに横になる。
眠ろうとしたところで、メイド長のエレーヌがやって来た。
「──デリル様。旦那様がお呼びでございます」
親父からの呼び出しだ。
──めんどいな。
……だが、いいだろう。
呼び出しには応じてやる。
親父は俺を殺そうとした、最有力容疑者──。
いい機会だ。
何故、俺を殺そうとしたのか、問い詰めてやろう。
「首を洗って待っていろよ。親父! ────真実は、何時でも一つ!!」
メイド長のエレーヌが、不可解なゴミを見る目で俺を見ていた。
盗賊団を壊滅させた立役者として、この屋敷に戻ったのだが、エレーヌは『どうせ誰かの手柄を掠め取ったのだろう』と考えているようである。
俺に対する尊敬など、微塵も持っていない。
デリルのことをよく知るメイド長の目は、誤魔化せないようだ。
──まあ、いい。
蔑みの視線など気にせずに──
俺はレキを伴って、親父の待つ本邸の応接室へと向かった。
応接室で俺は、親父と対決することにした。
──後ろには、暗殺者のレキが控えている。
レキの戦闘能力は、A級の冒険者並だ。
加えて彼女は、人を殺す能力に特化した暗殺者……。
彼女に護られている俺は、調子に乗って親父に対して強気に出た。
「──単刀直入に聞くぞ、親父! どうして俺を殺そうとした!!」
椅子から立ち上がり、右の人差し指を親父に突きつけて、キメ顔で問い詰める。
──気分は名探偵だ。
俺の追及に対する親父の答えは──
「貴様を殺そうとした理由──か、……それは貴様が、二男のアドルドと組んで、わしを殺そうとしていたからだ」
えっ?
そうなん──?
……………………マジで?
「貴様を始末すれば、アドルドの爵位継承は揺るがんようになる。そこまでお膳立てをしてやれば、焦ってわしを殺さずに、わしの寿命が尽きるのを待つだろう──それに、お前を殺しておけば、アドルドに対するけん制にもなる」
そういえば、魔力変換のスキルを使ったせいでよく覚えてはいないが、デリルは身内に対する暗殺にも、手を染めていたんだったか──
長男はすでに、暗殺済みのようだ。
その上で、二男のアドルドと結託して、親父を殺そうとしていたわけだ。
──親父を殺して、アドルドに辺境伯を継がせる。
俺が記憶を取り戻す前のデリル・グレイゴールは、その手伝いをすることで、二男に恩を売り──関係を強化して、あわよくば、おこぼれに預かろうとしたのだろう。
「──そういうことか、すまなかったな、親父。……殺そうとしたことは悪かった。もう殺そうとはしない、誓うよ──そして俺は、俺を殺そうとした親父のことを恨んでいない。…………これで手打ちにしてくれ、良いよな、親父」
俺の提案に、親父は苦虫を噛み潰したような、不機嫌な顔になる。
「ふんっ、バカのくせに偉そうに、だが……」
そこで親父は、チラっと俺の後ろを見る。
レキのことを、気にしているな……。
俺は何の取柄もない男だが、俺のことを慕うレキは凄いんだ。
──親父の奴もレキが怖くて、俺に手出しが出来ないようだ。
「まあ、いいだろう。お前の言い分を飲んでやる。────それに、お前には、褒美をくれてやらんとな……。盗賊団を壊滅させた、功績に対する褒美だ」
おおっ!!
何か知らんが、褒美をくれるらしい。
──俺は貰えるものは、何でも貰う主義だ。
「ライドロース地方の統治を、お前に任せる。領主として赴任し、治めて見せろ」
ライドロース地方とは、グレイゴール辺境伯領内の、東の領地だ。
──親父も結構、太っ腹じゃないか。
辺境伯領の約三分の一の面積を、俺にくれるというのだ。
やったぜ。
これで俺も、土地持ちの貴族だ。
──この先は楽して、一生安泰じゃねーか!
ひゃほう!!
俺の心は、喜びと期待で舞い上がった。
なんか、上手く行きすぎていて、ちょっと怖いが──
なろう系の主人公とかだと、これが普通だしな……。
…………。
まあ、こんなもんだろう。
ここからの俺は、人生イージーモードだぜ!!
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名前
ミリーナ
武力 920
知力 100
剣技 830
生命力 760/760
魔力 300/300
忠誠心 999999(測定上限突破)
職業
女剣士 A級冒険者
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名前
シルヴィア・ロレーヌ
武力 1300
知力 420
剣技 1200
生命力 800/800
魔力 450/450
忠誠心 999999(測定上限突破)
職業
女剣士 S級冒険者
スキル
ウォーター・ボール
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