第7話 お話
「———で、どう言うことなのかしら?」
「どういうことか……と言えば、普通に俺の家にホームステイしに来た子」
「……なら彼女も異能者なの? 一般人に異能を見せてはいけないのはアンタも知ってるでしょ」
ドッジボールの最中。
俺達は怒られていたせいで第1試合に出れず、近くで観戦していた。
まぁ丁度クラリスについて問い詰められていたし良い機会とも言える。
因みに悠真は……うん、隣に雲母がいるせいで俺に近付けないでいるらしい。
良い加減慣れても良いと思うんだけどな。
「それで……彼女の学校は?」
「……………それはお前のお父さんのお力で何とかしてくれない?」
雲母の父親はこの私立高校の理事長なのでそれくらいは出来るはず。
そう思って言ってみたのだが……やめろそんな目で見るなよ。
「はぁ……馬鹿なの?」
「馬鹿とは何だ」
「普通のホームステイの子は来る前に何処の学校に留学するか決まってるわよ。それなのに決まってないとかおかしいじゃない」
せ、正論過ぎてぐうの音も出ねぇ……!
口を噤む俺とクラリスに懐疑的な視線を向ける雲母は更に言葉を重ねた。
「ねぇ……彼女、本当にホームステイの子なの?」
『も、勿論だ! 私は少し事情があって学校には通ったことないが……勉強なら一生懸命頑張るぞ!』
「ほら、クラリスもそう言ってるし頼む。彼女をこの学校に通えるように手配してくれないか?」
俺達は2人揃って頭を下げる。
そんな俺には雲母の姿は見えないが、彼女が頭を下げた俺を見て息を呑んでいる様子が手に取るように分かった。
同時に大きなため息が聞こえて来る。
「はぁ……分かったわよ……。一応パパに頼んでみるわ。ただ……これは大きな貸しだから。分かった?」
「あ、ああ! 勿論! 流石雲母、こういう時は頼りになるなぁ!」
「こういう時は?」
「普段から頼りになるなぁ!」
「そうよね? 私は普段から頼りになるわよね?」
一瞬真顔で睨まれたので直ぐ様言い直したが……何とか機嫌を直してくれたようだ。
即興だが何とかなってホッと安堵に胸を撫で下ろしている俺に、雲母がニヤッと笑みを浮かべて言った。
「———この貸しは大きいから、覚悟してなさいよ?」
……雲母のお父さんに直談判した方が良かったかもしれない。
「———本当に私は学校に通えるのか!?」
「うーん……まぁアイツのお父さんがアイツのお願いを断るなんてないだろうし多分通えると思うぞ」
「〜〜〜っ」
家に戻り、幽体離脱を解除したクラリスは先程からずっと舞い上がっていた。
昨日のあの憂いを帯びた表情は一体何処に行ったのかと問い詰めたいほどに。
まぁ彼女には幸せになって貰いたいと思ってるし……嬉しそうなら別にいいか。
「そんなに学校良かったか?」
「ああ! 特にくらすめいととお話ししながらお昼ご飯を食べたいな……あと、授業も面白そうだった」
「おぉ……まぁクラリスが喜んでくれたんなら良かったよ……」
俺的には今のクラリスの状態が1番理想だけど。
最高だろ、1日中家に居れるの。
何て考えていると……雲母から電話が掛かって来る。
「もしもし? どうした?」
『クラリスが学校に通えるようになったわ。ただ流石にお金は払って貰うけどね』
「おお、流石雲母。それで……いつから通えるんだ?」
『明後日からよ。明日はクラリスに私の家に来て貰って採寸をするわ。制服は全種類揃ってるから採寸したあと直ぐに渡せるわよ』
流石としか言えない。
やっぱり組織随一の仕事人なだけあり、こう言ったことには迅速に対応してくれる。
何で俺なんかとつるんでいるのか甚だ疑問でしかないが。
俺は一旦ミュートにしてウキウキなクラリスに伝える。
「クラリス、学校に通えるってよ」
「本当か!? や、やった……!」
「明日は採寸するらしいから雲母の家に行ってくれ」
「……雲母殿の家は知らないぞ?」
…………これに関してはどうするんだ?
俺はミュートを切り、雲母に問い掛ける。
「なぁ、雲母……クラリスはどうやってお前ん家に行かせれば良い?」
『は? そんなのアンタが連れて行きなさいよ。彼女、外国から来たならまだ日本に慣れてないでしょうし……アンタが居た方がいいでしょ。安心して。私から休みって伝えておくから』
天才かよお前。
こうして俺は明日、大変嬉しいことに学校をサボることが決定した。
『あ、貸しのことだけど……今週の土曜日に買い物付き合ってね』
「…………別の———」
『ダメ。それにどうせアンタのことだし、クラリスの衣服だって買わないといけないだろうから……宜しくね、荷物持ち?』
ついでに今週の土曜日の予定も。
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