第5話 学校……に着いて来る勇者様
「———ソウスケ、学校に私も行きた……何だその顔は」
「いやぁ……別に」
朝一早々、朝ごはんを食べる俺にクラリスが言って来たので、俺はマジかこいつ的な視線で彼女に視線を向けた。
するとクラリスが俺の視線に憮然とした表情で睨み返して来た。
「何なんだその表情は。私の言ったことがそんなにおかしいか?」
「うん。逆におかしいと思っていない君がおかしい」
「何故だ? 学校に行ってみたいと思うのは至極当然ことだと思うぞ?」
それは多分行ったことないからそんなことが言えんだよ。
多分1週間も行けば飽き、2週間も行けば絶対怠くなる。
俺がそうだった。
と言うか……。
「クラリスは部外者だから入れないぞ」
「編入すれば良いじゃないか」
「お前勉強したことあんの?」
俺が半目でそう言うと、彼女は露骨に視線をスッと逸らした。
「……英語、とやらは出来るぞ」
「だって翻訳魔法使ってるもんな」
「なら数学も出来る!」
「魔法使えばだろ。国語は? 地理は? 化学、物理、生物は?」
「くっ……」
悔し気に下を向くクラリス。
そんなに行きたいのか……と毎日学校へ通う俺は軽く引いてしまう。
まぁ彼女は闘い漬けの日々だったらしいそう思うのも当たり前なんか?
俺的には家庭教師でも雇った方がいいと思うけど……。
俺は小さくため息を吐き、落ち込むクラリスへと提案する。
「1日だけは俺の異能で何とかしてやる。それで満足したらしたでいいし、また行きたいなら勉強しろ」
「本当か!?」
クラリスが、ガタッと椅子から立ち上がって俺の襟元を掴ながら揺らす。
元勇者の力で揺らされているので相当力が強く……様々な戦闘訓練をこなした俺でも普通に死にそうになる。
俺はクラリスの手を叩く。
「く、クラリス! ストップ! 俺が死んじゃう! もし仮に俺が死んだら組織が黙ってないぞ!」
「あ、すまない……」
「ごほっごほっ……戦闘訓練の教官にやられた時以来の圧迫感だった……」
「ほ、本当にすまない! 力加減がイマイチまだ掴めていないんだ……」
なら力加減分かるまで俺の首元触るなよ。
うっかり首折られたからってそんな無様な死に方したくないわ。
俺は心配そうに見つめて来るクラリスが殺人犯にならないためにも、後でしっかり力加減を教えてあげることを心に誓った。
「準備はいいか?」
「う、うむ。大丈夫だ」
「【
この異能は、普段、毒などの危険な物質やそもそも溶岩や海の上など普通の人間が行けないような場所を捜索するためのものだ。
これなら攻撃を受ける心配もないし、熱さや息苦しさを感じることもない。
それを、今回はクラリスに使う。
誰からもみられない状態のまま、1日俺の学校に行って貰うと言うわけだ。
まぁ制限もあるにはあるのだが……そこは24時間ぶっ通しで使うことなどないので大丈夫だろう。
『おぉ……不思議な感覚だな』
「まぁ肉体はそこで眠っているからな」
ソファーに目を瞑って横たわるクラリスに目を向ける。
意識こそないが、ちゃんと呼吸もしているので死ぬことはない。
「ソウスケは色んな異能を持っているんだな……! どれくらい持っているんだ?」
「まぁ……それは企業秘密だ」
俺が人差し指を唇の前に当てて言うと、クラリスはムッと小さく頬を膨らませる。
あ、可愛い……じゃねぇ。
危ない危ない……普通に籠絡されて全部吐いてしまうところだった。
ただ、普段、言動や表情が凛々しい人がこう言った可愛い仕草をするのはギャップがあって大変にいい。
「ソウスケ……少しも教えてくれないのか? 教えてくれるなら私も教えるぞ?」
「じゃあスリーサイ———何でもない。まぁ……12個以上はあるな」
「ほう……それは多いのか?」
「普通は1つ、多くても2つか3つだな」
まぁ一応4つ持ってる奴が1人だけいるけど……アイツには絶対会いたくないな。
俺は頭がおかしいを地で行くとある男を思い出して身震いする。
そんな俺を不思議そうに見ていたクラリスから視線を逸らして口を開く。
「さて……外に出るか」
『……まぁいいか。それにしても学校か……楽しみだな……!』
「別にそんな楽しいもんでもないけどな」
俺は肩をすくめ、玄関を出る。
案の定周りの人がクラリスに気付いた様子はない。
ちゃんと成功しているようで良かった。
『夜の綺麗なのもいいが……こう言った朝もまたいいな』
「何ババ臭いこと言ってんだよ」
『む……私はまだ17だぞ!』
「いや知ってるわ」
アンタみたいな超絶美少女なババアがいてたまるか!
いや待てよ……。
「もしかして……あっちの世界にはクラリスみたいな見た目のご老人がいるのか?」
『エルフだな。あと天使族なんかも長寿で見た目が変わらない』
最高じゃないか、異世界。
まぁゴミみたいな連中が多いらしいから絶対に行きたくないが。
『そう言えば今は何時なんだ?』
「ん? 今は8時……あ、やべっ」
そう言えば家の時計がぶっ壊れていたことを思い出す。
急いでスマホを確認すると……8時20分。
俺が通う学校の最終登校時間は8時30分。
家から全力ダッシュで向かっても裕に10分は掛かる。
「……すまん、クラリス。遅刻しそうだからちょっと急ぐわ」
『あ、ああ……私はいいが』
俺は他の人が見ても不思議に思われない程度の速度で学校へ向かった。
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