第20話 増大化した自信

当初、石原の話を疑っていた東條も、T機関からの情報、劣勢化する独ソ戦。さらにB29の登場。それは恐れるに足りるものであり、停戦したいと思えるものであった。


東京・市ヶ谷


カッカッカッ 


コンコン


「入っていいぞ」

「はっ」


入ってきたのは山下将軍だった。


「どうかしたのか?山下将軍」


私は彼が嫌いだ。醜い環境の中泥を這いずり回ってここまで上り詰めた私と違って彼は、

明るい道を巡り輝いた。将軍としての才もものすごく高い。要するに嫉妬、羨望。その類だと思う。


「独ソ戦での状況をお伝えに来ました」

「ソ連がレニングラードを解放したことか?」


九月二日。史実よりも粘ったもののドイツ軍はソビエトの物量に押されてレニングラードを解放されている。


「いえ、それよりもまずいですね。米英希波蘭仏アメリカ・イギリス・ギリシャ・ポーランド・オランダ・自由フランスなど十二カ国連合軍がノルマンディーに上陸を敢行。両軍合わせ50000人以上の死傷者を出し、連合軍が上陸しました」


「まて。つまりは……」


「ええ。そのまま連合国軍は南下、パリを解放しました。これに対しイタリア軍はオーセールで迎え撃つものの、あっさり撃退され、連合軍はイタリアに侵攻、トリノまで進行してます」


「はぁ。ここらが潮時か。アメリカと和平を組みたいが、組めるかどうかだな」

「それもそうですが、海軍や国民が認めると思えません」

「日本国内の問題か。次の会議で申し出てみる」

「分かりました。少なくとも陸軍は安定してますが、左翼も一部います。また、今村将軍の左遷によりフィリピンでは不満が溜まっているので将軍を引き戻すことも行なった方が良いかと」


それはまずい。そう思った。フィリピンはゴムの有数の生産地。そこを失うと爆撃機を作らなくなる。つまり私は


「わかった。今村将軍に対する処分を取り消そう」


そう言わざるを得なかった。


次回 ヒトラーは何個師団を持っているのかね

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