第19話 倫理の失われた日本
次第に体勢は古くなっていく。
古きものは新しいものに取って代わられ、
良きものも認められなければ消え去ってしまう。良き理解者がいなければ天才は陽の目を見れないのだ。
その片鱗を見せた出来事が、今村均インドネシア・オーストラリア・ニュージーランド統率官の追放であった。
八紘一宇を行う今村は現地の住民と親しくしすぎていた。それは東條に自らの権力を脅かす1人と考えられるほどに。
「どういうことだ!」
「今村さんが追放なんて。こんなのおかしい」
「今は落ち着け。変に動いても意味がない。スカルノの元で再起を図れ。次の長官がいい奴じゃないかもしれないしな」
【山下、中川あたりだとありがたいが…生憎あいつらは東條と仲が悪い。誰が来るか。それで東南アジアの未来は大きく変わるぞ】
とある新聞社の朝刊
七月八日、朝刊
今月四日。突如今村指揮官ノ元ニ伝令兵三名ガ来着。辞任ヲ言イ渡シタ。
之ニヨリ新西蘭デハ不満ガ溜マッテイルヨウダ。
各地の指揮官は変わっていく。そして、この頃だった。特別攻撃隊ー特攻隊が考えられるようになったのは。
“人の命はものではない。他に変えられない”
とうに暗号は読み解かれていた。五十六が亡く、他の将軍も変わってくことでそんな大前提がわからなくなっていたのだ。
7月6日。空母隼鷹撃沈。
同月9日。カウボーイ飛龍撃沈。
8月7日。戦艦陸奥・金剛撃沈。
そして同月13日には作られたばかりの空母・信濃も撃沈された。
カッカッカッ
「どうしてこうもうまくいかない!」
「それはだな。現場についてお前が何もわかってないからだな」
「石原……莞爾!」
「久しぶりだな東條。見ない間に老けたな」
「貴様……何のつもりだ?」
「いや、お前に忠告しておきたくてな」
「……なんだ?」
「海老の尻尾の成分はゴキブリと同じらしいぞ」
パコーン
「なぜ殴った?」
「んなどうでもいいことをいいにきたのか?」
「まぁ、それは冗談だな。本当に言いたいのは、戦争は進化しいてるということだ」
「どういうことだ?」
「我らは停滞している。その間に米英は新たな武器を生み出し、新たな戦術を生み出し続けているということだ。第一次世界大戦でもわかっただろう?かの戦争の間に塹壕、毒ガス、爆撃機、潜水艦など新たな武器が生み出され続けたのだ。それより強大に、強力に」
「つまり?」
「そのうち都市や国を一撃で破壊できる武器ができるかもということだ」
「ばかな。ありえん」
「原子爆弾」
「?……ドイツが行っていたあれか。あんなもの作れるわけがないだろう」
「ドイツはな。でもアメリカはどうだ?」
「……」
「そういうことだ。早めの和睦を考えた方がいいな。我らの有利なうちに。爆撃機も新たなのが出てきて多くの空母が沈んでる。アメリカの本当の反撃が始まる前にな」
「…」
次回・増大化した自信
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