第18話 空での戦い

1944年、新型爆撃機B29がアメリカに導入された。それは今までの爆撃機と比べ性能が段違いであり、第二次世界大戦初期には最強と言われていた零戦ですら太刀打ちができないものになっていた。


バババババババ


「チッ……硬い。何発当てても落ちないな。デカさも段違いだ」


B29の登場により、戦い方は一対一のドッグファイトから奇襲を使った一撃離脱先発が多く用いられるようになる。


「あっ……しくったな」


また、零戦より強い機体が出てきたことにより、日本軍のほうも撃墜される数が増えていく。


太平洋……それは爆撃機の塵箱だ。


銃口から放たれた銃弾は爆撃機の燃料タンクを貫いて虚空へと飛んでいった。直後、機体が発火し、落ちていく。


“戦争が怖いのではない。それ戦争が日常茶飯事になってしまうことが恐ろしいのだ。人を殺すことに何の罪悪感を抱かず、

ただ死ぬまで意思を持たず人を殺すマシン機械になってしまうことがいけないのだ”



そんなことを話す者がいた。その通りだと思った。防御力を持つ国家と戦争のための国家は全く違う。戦争のために作られた国家など、

早々に破綻してしまう。

その限界は……


六月。日本には梅雨が訪れ、台風が力を振るう中、アメリカとイギリスは大西洋憲章を行った。それは史実とは違い、お互いが裏切らないかを確認する者であった。今や自由主義の有力な国はこの二カ国しかないであろう。


日本・代々木


カツカツカツカツ


「来たか」


ガチャ


「杉山元。山本五十六長官暗殺の罪で逮捕する」

「東條め……やってくれたな。これで日本は本当に狂うぞ」

「五月蝿い反逆者め。我が海軍元帥を殺した罪は重いぞ」

「“俺はやってない”なんて言っても無駄だろうな。山下に伝えてくれ。決して動くな。天皇陛下のためにも今は耐えろってな」

「……」


六月八日。山本五十六暗殺事件の首謀者として杉山元が逮捕。その後投獄された。

陸軍参謀総長が海軍元帥を暗殺し逮捕されたと言う何とも大きな事件であり、再び2人が築いた陸海軍協力の道は閉ざされたのだった。


大山投獄後は関東軍出身の東條英機が陸軍参謀総長及び総理大臣を務めることになった。


軍部の穏健派が2人失われ、いよいよ本当の暴走が始まる。


次回・倫理の失われた日本



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る