十八色目 宝石藍(パオシーラン)
「陛下にお目にかかります」
「余と君の仲だ。跪かなくてもよい」
「い、いえ。侍女たちがおりますゆえ…」
そう言うと、
「青蝶。君に礼を言わなければ。…ありがとう」
この人はいつも勘違いさせる。これは恋なのではないかと。
「君と、
光耀はここに来ると、丹碧のこと話さない。
「いつかきっと、
すると、光耀はにっこりと微笑んだ。
(もう…勘違いさせないでくれ…)
光耀と一緒に庭を歩いていると、いつも不安になる。この人はいずれ、自分を捨てるのではないかと。丹碧と比べると、自分は一介の妃にすぎない。いつ捨てられてもおかしくはないが、捨てないでほしい。そう、強く願ってしまった。
(そんなことを願ったって、この人はいずれ…)
「ああ…。君が、ずっと
涙が溢れそうになった。ずっと言ってほしかった言葉だから。
(駄目だ…。忘れられない…)
いつ捨てられてもいいように、この人を忘れようとしたが、いくら頑張っても無理だった。忘れようとしても、また
「おそばに…いてもよろしいのですか…?」
おそばにいてもよろしいのですか、と聞かれ、光耀は返事すらできないでいた。
「君は…後宮にいたいの?」
「はい…!」
青蝶には、「まとめ役」としていてほしい。
はい、と言われ、冷ややかな目で青蝶を見て、その場を去った。
その場を去ったあと、青蝶の父である、徐
「…烏劣殿にお目にかかる」
「お気に召されないようですなぁ。誠に残念です」
この者は下級役人だったが、いつの間にか
「気に入らないわけではない。…ただ…」
烏劣は殺気溢れる目で、光耀を見つめてくる。
「ただ…なんです?青蝶以外に、
光耀は、また返事をすることができなかった。
「…失礼する」
(怖い親子だ…)
心の底からそう思ってしまった。
(寵妃すらいないのか…)
自分の娘を大事に思っていたかったようだが、それはそれでいい。
(後宮の
池の近くに咲いている、小さな
「失礼いたします」
丹碧の侍女である、
「秋霖か。入れ」
「…今日までありがとうございました」
秋霖は今まで、烏劣の間諜としてやってきた。だが、これ以上、丹碧のそばを離れたくないので、間諜をやめることにした。
「恩知らずな娘だ。誰のおかげで後宮に入れた?」
「あなたさまのおかげで、後宮に入れたのは充分承知です」
そう言うと、烏劣はにやりと笑う。
「そなたの代わりはいくらでもいる。丹碧という奴に、精いっぱい仕えよ」
「…感謝いたします」
秋霖は急いで部屋を去った。
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