二色目 黄琉璃(ホワンリューリー)

後宮に着いてしまった。

今日からここで、一生過ごさなければならない。

「お待ちしておりました」

こしから、若い男女がふたり見える。

いや、後宮に男はいないと聞いた。

宦官かんがんだろうか。

侍女である丹麗たんれいの手を借りて、興を出た。

「お初にお目にかかります。わたくしは黄充儀さまの侍女を務めさせていただく、秋霖しゅうりんと申します。これから、よろしくお願いいたします」

こちらは、と秋霖が紹介した。

「宦官の、宵燕しょうえんです。宵燕、充儀さまに挨拶を」

「黄充儀さま、お初にお目にかかります。充儀さま付きの宦官になりました。宵燕と言います。よろしくお願いいたします」

先ほど、このふたりが言っていた「充儀」というのは、位の名前だ。

妃嬪ひひんには、細かく位が決められている。

充儀じゅうぎは正二品の位で、九嬪きゅうひんとも呼ばれている。

九嬪の中で充儀は下から三つ目の位。

低すぎず、高すぎず、なかなかいい位だ。

お手つきになる可能性もある。

丹碧はふたりに案内され、これから住む宮に案内された。妃嬪の宮は、ひとつひとつ、名前がつけられる。丹碧が与えられた宮の名前は彩碧宮さいへききゅうだ。

「何か困ったことがありましたら、いつでもお声かけください」

着替えを済ませ、侍女たちは去っていった。

丹碧は誰もいないか確認し、部屋を出た。

かわらの色が気になったのだ。

「すごい!黄琉璃だ!」

黄琉璃とは、色の名前名前のひとつ。

深い黄色のような色をしている。

「何をしている。危ないから、早く降りなさい」

見つかってしまい、慌てて瓦から降りる。

たか、瓦から降りる途中、足を踏み外してしまった。

丹碧の悲鳴が響き渡る。

「す、すみません!!…え?」

皇帝…らしき人の上に乗っている。

「怪我は…」

話を遮り、丹碧は脱兎のごとく逃げた。

(どうしよう!殺されるー!!)



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