最終話:戻ってきた妖精。

大気も茜も、ベルが戻ってきてくれたことで嬉しくて学校なんかに行く

気にはならなくて、結局ふたりともその日は学校を休んでしまった。


ベルはこれからずっと王子様といられると喜んだ。

いろいろあったけど、なんとなく空中家に平和が戻ってきたようだった。


「王子様、私、もうエンドランドには二度と帰らないから」

「ここにいて、王子様と暮らす」


「それにウイルスだってま感染に収束した訳じゃないからね」

「私がいないとすぐに対処できないから・・」


「え?帰らなくていいの?・・・」


「帰ってこいって言われても帰らない・・・一生・・・」


「そうか・・・よかった、僕もベルをエンドランドに返す気、ないから」

「うん、帰らない・・・王子様しかいないもん」


「あんたら・・・ここを出て、ふたりきりで暮らす場所探さなきゃね」


「え?・・・まじで?」


「ふたりの気持ちはもう決まってるんだろ?」

「もうそうしていいんじゃないか?」


「そうだ私、スーパーに買い物に行ってくるわ」

「たぶん二時間くらいは帰ってこないから・・・」


そう言って姉ちゃんは僕たちに気をつかって買い物に出かけて行った。


「今更だけどベルは僕のこと好きなの?・・・愛してるの?」


「うん、大好きだよ、王子様のこと愛してるよ」

「みんな好き、王子様、お姉さんも・・・おまけで横島さんも」

「その中で王子様は特別」


ウイルスが蔓延した時、ウイルスに感染した横島をベルは救っていたのだ。


「私、これからも迷惑かけること、あるかもしれないけどよろしくね」


「いいよ、僕のそばにいてくれたら」

「それにウイルスのことがあって、もう何があっても多少のことじゃ

驚かないから」


ベルは僕のそばに来てべったりくっついた。

寄り添ったベルの髪からいい匂いがした。

僕は一度も女の子にそんなことされたことがなかったからどうしたら

いいのか分からず戸惑った。


それは、ただのベルのコミュニケーションの取り方だったとしても

僕を大いにカン違いさせる行為だった。


「私幸せだよ」


「ああ・・僕も幸せだよ」


(いいよな、こう言うのって・・ベルが寄り添ってくれるって・・・

おまけにいい匂いがするし、柔らかいし・・・)


ベルの顔が大気の顔のすぐ横にあった。

息がかかるくらい・・・

僕はベル存在をこんなに近くに感じるのは初めてだったから胸が

ドキドキしていた。

そのトキメキを誤魔化すようにベルの髪を撫でながら言った。


「あ・・・あの・・・キス・・・キスしてもいい?」


するとベルは返事をしないで目を閉じると唇を尖らせた。

僕とベルの影が重なった。


「ねえ、王子様・・・私とエッチしたい?」


「なに言ってるの、いきなり・・・え〜妖精でもそんなこと言うんだ」

「その意味って分かって言ってる?」


「でへ・・・うん、分かってない・・・」


「だと思ったよ・・・そういう行為は感情では計れない問題だからね・・・

これがそうだよって言葉じゃ教え難いかな」

「まあ、そのうち分かる時がくるよ」


「それっていつ?」


「そうだな・・・僕がもっと大人になってからかな?」


「ふ〜ん・・・それって何年後?」


「こだわるね〜」


「僕にさ、責任がちゃんと取れるようになったらね」

「前倒しとかってできないの?」


「前倒しって・・・あはは、そんなことよく知ってるな?」

「まあ、でもそう言うことは自然の成り行きでいいと思うよ?」

「お互いの気持ちが重なったらその時はね・・・」


「それよりいつか君がほんとにエンドランドにに帰って行く時が来るかも

しれないだろ・・・」

「だからさ、僕は今を大切にしてたいんだ・・・だから先のことは今は考えない

ようにするよ」


「私はエンドランドには永遠に帰らないよ」


だけどベルは大気や茜や人間たちに内緒にしていることがあった。

それはウイルス発症の原因が光の国にある「フェリムの木「のせいだと言う

ことを・・・。


もしその事実が発覚したら、おそらくベルも他の妖精たちも人間から迫害される

ことになりかねない。

だから内密にしておくしかないと思っていた。

事実を隠すことは心が痛むけれど、事実を晒すことのほうが怖いと思った。


それはしかたがないことだった。


妖精はいつでも人類とウィンウィン(Win-Win)関係であることで平和を

保っていかなきゃならないのだ・・・大気とベルのためにも。


はっぴ〜?えんど?。

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空からの贈り物。 猫野 尻尾 @amanotenshi

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