第8話:王子様の妄想。
ベルを学校に連れて行くと横島はいるし、他の生徒もなにかとベルに
絡んで来るから、もう学校へは連れて行けなくなった。
実際のところ、ベルは大気が学校へ行ってる間、退屈を持て余していた。
姉ちゃんは会社に行ってるし・・・。
誰も相手をしてくれる人がいない。
学校にも行ってないし働いてもないし料理を作ったり掃除も洗濯もしない。
バイトもしてないから、まじすることがないのだ。
昼間意味もなくソファに座ってボーッとテレビを見てるから情報番組には
詳しくなった・・・。
テレビに飽きたら大気の部屋で雑誌を読んでいろいろ知識を吸収していた。
だからエッチいことにも興味を持ったりするんだ。
大気も男だからね、エッチい雑紙の一冊やに冊は持ってる。
もっ持ってる。
とある土曜日・・・暇そうにしてるベルを見て姉ちゃんが
「ベルちゃん・・・ここに来てリンゴの皮でも剥いてみる?」
「だめだめだめ・・・ムリ、ムリ、ムリ」
「包丁なんか持たせたらダメだよ」
大気は、もちろん学校が休みだから家にいるわけで
「なんでも最初が肝心よ」
「あんた、いずれベルちゃんと一緒に住むことになったらお料理
くらいできないと・・・」
「あのね・・・いつの話をしてるんだよ」
「だいいち一緒に住むなんて・・・」
「だったら、大気がベルちゃんの面倒ちゃんと見なさいよ」
「分かってるけど、学校辞めるわけにはいかないだろ?」
「ベルこっちへおいで・・・二階へ行こう」
「デザートは?」
大気は茜さんからデザートを受け取ってベルを連れて二階へ上がった。
「はい、ここに座って」
ふたりしてベッドに腰掛けて、テレビをつけた。
午前中は相変わらずテレビショッピングとサプリのCMばかりやっている。
あと「韓流ドラマ」
大気は知らないが、実は妖精の中でも頭がいいベルはいつのまにか韓国語も
マスターしていた。
もちろん英語もフランス語もイタリア語も中国語も・・・このぶんだと
ベルはどこの国の人か分からなくなる。
「デザート・・・欲しかったら全部食べていいから・・・」
ベルは茜さんが切ってくれたリンゴを美味しそうにほおばった。
(まあ、まだ色気より食い気だよね、ベルは)
大気は茜さんに自分が「ベルと一緒に住む」と言われたことを思い出していた。
そしてついベルと一緒にエッチなことをしてるところを妄想してしまった。
(もしも姉ちゃんの言ったようにベルと結婚なんてことことになったら、
人類史上初の異種婚ってことになるのか・・・)
大気の妄想は、止めどなく広がっていった。
知らず知らずにベルに対する想いも、もはやピークに近かった。
(でも、日本じゃ人間以外の異性とは結婚は認められないわけだし・・・)
(じゃあ、何になるんだ・・・)
(ベルは内縁の妻?)
(ベルのご両親に挨拶なんてことになるのか?)
(じゃ〜僕は妖精の国へ、エンドランドへ行くのか?)
(で?・・・生まれてくる子供は?)
(妖精と人間のハーフ・・・だよな)
(僕とベルとどっちの遺伝子を受け継ぐことになるのかな)
「王子様、ポーッとして何考えてるの?」
そう言ってベルは大気の顔を除きこんだ・・・笑顔で。
「えっ・・・あ〜なんでもない・・・」
(笑ってるよ・・・そのくったくのない笑顔)
(君がここにいることそのものが罪なんだ、僕は君を想うだけで何もできない)
(正直、君とエッチだってしたいって思うけど、だけど勇気がでないんだ)
我に返った大気はベルの顔を見て愛想笑いした。
「王子様、また何か考えてる?・・・」
「ごめんごめん」
「人間ってね、自分の思い取りにならないようなことがあると、ちょっと
ナーバスになったりするんだよ」
「ナーバスって?」
「気持ちが落ち込むってこと・・・悲しくなるってことだよ」
「王子様は気持ちが落ち込んでるの?」
「欲しいものがあったら私に言って、できることなら叶えてあげるから」
「ありがとう・・・でも、欲しいものはモノじゃなくて」
「僕が欲しいのは気持ち・・・想い・・・形にはできないんだよ」
「でもままそれは無理にじゃなくていいんだ・・・そういうのは自然でいいんだ」
って言っても、今のベルには大気の気持ちはちょっと理解できなかったかも
しれない。
でも大気に元気がないことくらいはベルにでも分かる。
「王子様、元気出してね」
「大丈夫だよ、元気だから・・・」
ベルからすれば最初っから大気のことが好きなんだから、大気と一緒にいること
が彼女の幸せ。
大気は自分で勝手に妄想して勝手にナーバスになってるだけだった。
ふたりの関係は気持ちの上ではいたって順調と言えた。
とぅ〜び〜こんて乳。
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