第6話:絶対、人間じゃないだろ?
僕は気がかりなベルを残して一時間目の授業を受けていた。
僕の席は窓際だったから天気のいい日は朝の日差しが僕の席まで差し込んで
来るんだ。
だから遮光カーテンを閉めようと席を立った。
そしたら、そしたらだ。
窓ガラス越しにベルが僕に向かって手を振ってるじゃないか。
(え?・・・ベル?・・・なにやってんだよ、こんなところで?
学食でおとなしくしてるはずじゃなかったのか?)
どうやらベルは退屈で時間をもて持て余して学校内を徘徊してたらしい。
(つうか・・・ここに二階だぞ)
(ハシゴもないのにどうやって二階まで上がって来てるんだよ?)
ベルは僕を見つけて嬉しそうに手なんか振ってる。
待て、待て、こんな光景クラスのやつらに見られたら大変だぞ。
二階の窓の外で手を降ってる女なんてさ・・・。
ベルは、妖精だから普通に飛べるんだ。
そんなふうに思っても、どうしようもない光景だった。
最初にベルが空から降ってきたとき、普通ならそのまま地上に落ちてきても
おかしくないんだが、彼女は重力を自由に操れるから、だから無意識でも
その能力が働いて地上には落ちないでゆっくり降ってきたような形になったのだ。
僕は、のんびりベルの能力に疑問を持ってる場合じゃなかった。
そこで僕は窓越しに手を振ってるベルに「下、下に降りて」って心で話した。
(降りて・・・下に、地上に降りてそのままそこで待ってろ)
(分かった王子様)
「こら、そこ、
ちゃんと真面目に授業を受けなさい」
「あ、はい」
(ヤッバ〜)
そう思って僕はカーテンを急いで閉めようと窓のほうを振り向くとベルは
もういなかった。
(僕の指示が分かったのかな?)
(うろうろしないで、ちゃんと下で待ってろよ・・・)
もう少しでベルのことが先生にバレそうになった。
ヒヤヒヤもんだよ。
窓の外のベルのことは誰にも先生にも気づかれなかったみたいだ。
って僕は思っていた・・・その考えは大いに甘かった。
僕とベルのやり取りを、きっちり見てたやつがいた。
一時間目の授業が終わると同時に僕は廊下を疾風にように走って階段を飛ぶ
ようにかけ降りた。
ベルがいるはずの教室の窓の下に急いで降りて行ってみたら肝心の彼女が
いないし・・・。
「いないじゃないかよ・・・どこに行ったんだ、もう人騒がせな子だな」
僕の教室は校舎の端っこにあったからすぐに校舎の裏に回れるようになっていた。
もしかしてと思って僕は校舎の裏側に回ってみた。
そしたら・・・まさかの光景が・・・。
そこにいたのは、一番知られたくなかった「
横島・・・どれだけ足が速いんだよ・・・。
「ベル!!」
「横島・・・おまえ、なにやってんだよ?」
「あ、王子様・・・あのね、私が窓の下にいたらこの人がやって来てちょっと裏に
おいでって連れて来られたの」
「でね、この人私のこと、ねほりはほり聞くんだよ」
「横島〜おまえな〜、僕の彼女に余計なこと聞くな」
「え?・・・か、彼女だって?」
「この子、おまえの彼女か?・・・まじでか?」
「その前におまえが説明しろよな・・・宙に浮く女の子なんて見たこと
ないぞ、俺」
「おまえ、見てたのか?」
「俺は可愛い女の子が周りにいるとスケベセンサーが働くんだよ、本能で
分かるんだ」
「この子、ベルって名前なんだ」
「今、おまえ間違いなくこの子を自分の彼女だって言ったよな?」
「なんてったって宙に浮く女の子なんて絶対人間じゃないだろ?」
よりによって世界中で一番知られたくないやつにベルのことを知られてしまった。
とぅ〜び〜こんて乳。
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