しまかぜ荘のユカイな休暇 肝試し編

 お久しぶりです、光村あずみです。

 えーと、前回は意味のない話だったとかいろいろ文句はあると思います。でも、私たちが卒業した話を書かないと、今がどういう時期かわかんないし、私たちの年齢もわかんないし、謎だらけになるの!

 ……はい、いちおう今は春休み。宿題をとっとと終わらせたいんだけど……しまかぜ荘では、あるイベントが行われる。それは……。


 肝試し!


 なんで、春に肝試しするのか、だって?そんなの、こっちが聞きたい。

 とにかく、辻さんたちに招待されたのよ!

 ……あ、辻さんたちの紹介をまだしてなかったか。詳しくは、私も知らないけど、知ってる限りのことを説明するからね。

 しまかぜ荘の端っこの部屋に住んでいる、辻さん、西本さん、坂上さんは、大学で知り合って、一緒に住んでる。3人は、どういう集まりなのかは知らないんだけど、よく変なことをしている。例えば、真っ昼間にUFOを探していたり、夜、勝手に学校に忍び込んで何かを撮影していたりしていたらしい。3人の言葉の掛け合いから推測すると、大学のサークル仲間かな?

 この3人に誘われると、断ることはできない。断ることができるのは、水晶さんと大家さんくらいだ(よく、家賃を払えなくて叱られている)。

 断ったら、「なんで断ったんだい?」「ぼくらのことが嫌いなのかい?」「協力する気はないのか?」としつこく聞かれそうで、怖い。というか、3人の得体のしれない怖さは、私には表すことができない。なんてったって、私はとってもキュートで純情なレディだからよ!

「……あずみちゃん?えーと、大丈夫?具合でも悪いの?」

 さっきの最後の一文で、怒りが爆発しちゃって、肩で息をしていたみたい。


 今、私たちは辻さんたちの家にいる。水晶さんと大家さん以外、全員がこの部屋に集まっているので、結構窮屈。


 今回は、百物語をするとか言ってたけど、百物語って何?

 瑞希に聞くと、

「えっ?本いっぱい読んでるのに知らないの?」

と答えが返ってきた。ひどい奴……。

「あのさあ……。あんた、この地球を破壊したいの?私にそんな口をきいたらどんな目に合うかわかる?」

 そう脅したら、瑞希は顔を引きつらせながら話してくれた。

「えっと、百物語っていうのは、百個の怪談を話し終えると、本当の怪奇現象が起こるっていうものだよ。ホラーが好きな人は結構やってるみたいだね」

「え、それって一人で百個話すの?」

「……あずみちゃん、そうじゃないんだよ。何人かで集まってするものなんだよ」

「……ふーん」

 正直、私には興味がなかった。そういうのって、信じないタイプだし。

「瑞希は、興味あんの?」

「あずみちゃん、辻さんたちの前でそういうことを言うのはよくないと思うよ」

 ……そうか。でも、そういう反応ってことは、興味がないってことよね。興味があるなら答えたらいいだけの話だもん。

「怖くなったら、手、繋いでもいい?」

 冗談めかして言うと、

「……いいよ、どっちでも」

と、顔を赤くして答えた。……意外と、可愛いところもあんのね。


 そうだ、前に紹介してなかった人がいた。

 竹林夫妻……じゃなくて、竹林達樹たけばやしたつきさんと藤白萌ふじしろもえさんのカップル。あまりにも仲が良すぎるから、どうしても夫婦に見える。二人は、よく私と瑞希のことをからかって?冷やかして?くるから、私たちもやり返してるんだけど、本物のカップルには効果なし。悲しい……。


 今回の肝試し、何も起こらないといいけどな……。

 そう思いながらも、私は何か起こらないかと期待していた。

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