第7話 ネックレス
ミアはさっそくパーティーでスライムのネックレスを装備して出席していた。
「おいあれ、ミア様。首の紫のネックレス」
「ネックレス自体は見たことがないけれど、スライムの魔石に見えますわね。中央の黄色いのは見たことがありませんわ」
「お洒落ね。最低級のスライムの魔石ではありますが、華がありますわ」
ミアのネックレスは注目の的になっていた。
それぞれの魔石は銅貨一枚。普通はネックレスなどにしないのだった。
しかし上位貴族が首にぶら下げているから、どんな高価な物なのかと探りをいれようとしたり、考察したりとみんなの視線が集まってくる。
「ミア様、今日も美しい」
「ん」
「ミア様、今日も誰ともお話してくださらないのかしら」
「ん」
一応「ん」と言っているが、通じていないらしい。
会話だってしないわけではない。相槌くらいは打つ。
しかし会話してもらえていないと思っているようで、みんな諦めて去っていく。
「見て、フィーナ様も紫のネックレスだわ」
「あちら、エメット嬢もそうね。中央の魔石が赤いからホーンラビットかしら」
ふふん。私はミアの横に立って、三人で並んで見せる。
「おお、お揃いなのですね。トップが違っていい感じですわ」
「いいでしょ、えへへ」
「私たちも欲しいわ」
「欲しい、そうですね。欲しいです」
「まぁまぁ、これは草原に行ってスライムを狩ってくればできるから」
「そうなんですのね!」
また持ってくると言って、みんなに開放してもらう。
宰相派は悔しそうに今日もしていた。
国王派の私たちにパーティーの話題を持っていかれたら、そりゃ悔しいだろう。
でも冒険者なんて「下に見ている」職業を自分たちでやろうとは言い出せないでいると言う感じだった。
私は職業に上も下もないと思ってるけどね。みんな頑張ってるんだよ。
そりゃ報酬額はいろいろだけどさ。
「まったく、なんなのかしらね、あれ」
「本当ですわ。あんなことしたって、なんにもならないのに」
「なにが冒険者だなんて」
まあこれくらいのことは平気で言われる。
もっと口にはとても出せないことを言っている人も中にはいるのだ。
いちいち怒っていたら朝になってしまいますわ。
「そんなネックレスなによ」
ブチッ。
「あっ」
ちょっと離れていた間に、ミアに絡んでいる人がついに手を出した。
ネックレスの糸が取れて、バラバラと魔石が落ちていく。
黄色い魔石が転がっていくところだった。
「あっ、あれ」
「珍しい黄色い魔石」
「なんてことっ」
私たちが駆けつけて、拾い集める。
引っ張った子は故意ではなかったらしく、青い顔をして「ごめんなさい」と一言だけ謝って逃げていった。
「まったく、もう。大丈夫? 怪我はない?」
「ない、大丈夫」
ミアは平然としているけれど、内心は分からない。
この子はこういう場では顔があまり変わらない仮面が上手だ。
魔石を拾い集める。
幸い、全部揃っていた。割れたものもない。
そうそう魔石は宝石みたいに割れることがある。
「もう、気をつけてくださいませ。魔石なのですから爆発したりもするんですよ」
「爆発?」
「はい。特に黄色い魔石は、種類が不明なので、危ないですわ」
「そんな……」
「まったく物騒なものを」
少々お小言もいただいたが、こんなことにならなければ普通は安全なのだ。
魔石を触媒に強い魔法とかも使える。
普通は衝撃などを与えなければ、安定しているというのに、まったく。
「危険なのか」
「まぁ魔石なので、どんな魔石もそうです。その宝石魔石もそうですよ」
「そうなのか、知らなかった」
今ではだいぶ形骸化しているというか。
宝石魔石に魔力をぶち込む人なんていないからなんでもないように思っているだけだったりする。
今日のパーティーは男性もいる。
ちょっとした騒ぎになってしまったけれど、なんとか収まってきた。
宝石をつけている人は半分くらい。
もう半分は宝石魔石と言われる、宝石扱いの魔石だった。
だから私たちだけが危険なのではなく、みんな実は危険ではある。
ただし治癒魔法の触媒とかにももちろん使えるので、危険だとばかり言ってはいられない。
防御魔法の発動効果がある魔道具なども多い。
というかほとんどの人はそうだろう。
「貴族なんだから、おしとやかにしてほしいわ」
「そうですわね」
「ん」
まったく困ったちゃんもいるものだ。
私たちは他人事のように、誰ともなく文句をちょろっと言うのだった。
そろそろいい時間だし、そろそろ帰るか。
「それでは失礼しますわ」
私たちも揃って会場を後にする。
王宮のシンデレラホールが今日の会場だった。
他にマーメイドホール、エンジェルホールなどがある。
「壊れちゃったね。今度は防御の魔道具にしよう」
「ん」
魔道具にするには魔法陣などを刻む必要がある。
魔石は小さいのでかなり面倒なのだけど、やってみるか。
簡単な防御のおまじないは家庭教師に教わっている。
それをひとつずつの魔石に刻んで連結すればいいだけのはずだ。
「ふふん」
アクセサリーを魔道具にするべく考えをめぐらしながら帰宅した。
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