変わってしまった者達へ

ゼン

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 これは私が中学生の時の話だ。

 高知県に旅行に行った。四泊五日、引っ越した友人Aに会うためだった。


 高知空港に着き、手荷物を受け取るとAが待っているのが見える。

 私は驚愕した。髪の色が変わっていたのである。ごわごわとした天パは変わっていなかったが、少しくすんだ金髪が目立っていた。

 変わってしまったのか、お前。

 恐る恐る私が声をかけると、あいつは嬉しそうに「よっ」と返事を返す。相変わらずなその様子にひどく安心した。


 高知では色んな事をして遊んだ。

 川遊び、山登り、肝試し。子供らしい田舎の遊びを覚えきれないほど沢山やった。

 その中では知らない子と遊ぶ事もあった。ちょっとオタクっぽいO君とガタイが大きくて強面のK君。

 私はこの子達と上手くなじむことができなかった。

 なんというかノリが合わないのだ。いつも通りの絡み方が通用しない。決して楽しくない訳ではないが、楽しみきれない感覚。Aはまったく気にしていない様子で、もどかしい時間だった。

 O君とK君と遊んだ帰り道、私はAに聞いた。

 「ここの子達、なんか向こうと雰囲気違うよな」

 するとAはあぁ、という表情をすると

 「そりゃ全然違う場所だし、絡み方も変わるだろ」

 と言った。

 この瞬間私は変わったなぁこいつ、とどこか冷めた気持ちになった。

 中学生にも関わらず金髪だし、ちょっとやんちゃな振る舞いをするようになった。こいつは高知に染まってしまったのだ。毎日一緒に遊んで、日が落ちる前に急げ急げと家に帰ったAとは違う。

 私は悲しい気持ちになった。


 四泊五日の日々は、あっという間に過ぎた。色々な事があったが、良い経験だったと思う。

 最後の日の夜、私はAと色々な思い出を語り合った。その中には共に過ごした故郷の事もあったと思う。

 数十分か数時間か。一通りの事を話し終え、そろそろ寝ようかと思い出したころAが語りだした。


 「なぁ、もしかして高知は気に入らんかった?」

 私は「そんな事ないけど」と返した。本心だった。

 「それならいいんだけどさ。だってお前、なんか不機嫌そうだったし、いただきますも言わんし。なんか変わったなぁ」


 この言葉は今でも私の心の中で、小さなささくれとして残っている。

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