第288話 魔王、捕獲計画
ファルティマ。
聖国ジャーダルクの聖都であり、光の女神イリガミットが降臨したと言われている聖地でもある。
他にも教王が住まうジャーダルク宮殿や、聖女派や聖者派などの重要施設があるのだが、もう一つ重要な施設があった。
「そこで止まっていただきたい!」
五芒星をイメージして造られた聖騎士団本部の入り口で、門番を務める騎士たちが、なにも言わずにずかずかと入ってこようとする男を制止する。全身の隅々まで鍛え上げたと言われても納得できるほど、男の身体の筋肉は隆起していた。それでいて俊敏な動きを可能と思わせるほど引き締まっているのだ。
「ほらよ」
男が一枚の赤い紙を門番へ見せる。
「間違いない」
「紛れもなく聖騎士団本部が発行した召喚状です」
「わかったらさっさと退けよ」
「失礼いたしました」
語気だけでなく素振りまで荒い男は、そのまま本部のある建物へ向かって進んでいく。
「今の『聖拳』ドロスだろ? やけに荒れてたな」
「どうやらなんの説明もないまま、最前線から呼び戻されたらしい」
「最前線って……ハーメルンとの国境線で、三大魔王『無のサデム』を監視している砦だろ? そんな重要拠点から大丈夫なのか」
「どうなんだろうな。
それより今日はなにかおかしいぞ。ドロスの前は『三剣』の御三方だっただろ? 見ろよ。あっちから向かってくるのは、第九旅団の旅団長だ。その後ろにいるのは第四大隊の隊長だ。弓の名手でもあり、弓の腕なら『三大弓術士』にも引けを取らないと言われているほどの凄腕だ」
「…………まさか、戦争が起きるのか?」
「それはない」
「なぜ言い切れる?」
「これだけの面子が、同じ日に本部へ集まるのは異常とも言えるが、兵の動きが驚くほどないだろ?」
「言われてみれば、兵の大規模な移動命令は出ていないな」
「そういうこった。さあ、仕事を忠実にこなそうぜ」
「ああ、わかったよ」
そう言って門番の一人は肩を竦めると、業務に戻るのであった。
「バラッシュ様、バラッシュ様っ」
半円形状の会議室の壇上、一番目立つ場所に座っている老人を、先ほどから従騎士の青年が起こそうとしているのだが、一向に目を覚ます気配がない。
「ぐーぐー……んあっ? ばあさん、飯はまだかのう?」
「バラッシュ様、寝ぼけておられるので? お食事なら朝に食べたばかりではありませぬか」
「むお? ほうか……そうじゃったか。うむ、思い出した。儂はまだボケておらんぞ」
バラッシュは膝を一度パシーンッと叩き、何度も従騎士の青年に向かって頷く。
「では、皆様方へご挨拶を」
この部屋にいる者たちは『聖拳』ドロスをはじめ、誰もが一騎当千と呼ばれるに相応しい強さを備えていた。中小国ならば、騎士団長級の待遇で迎え入れられる。それほどの人材であった。
「うむ、わかっておる。まず初めに『鉄壁』のバラッシュと呼ばれるこの儂を待たせるとは、いい度胸をしておるの」
カッ、と目を見開いて周囲を威圧するバラッシュであったのだが。
「いやいや、待たせてたのはあんただろうが。俺らはあんたが壇上でぐーすか寝てるのを、起きるまで待ってたんだぜ。聖国ジャーダルクの盾とまで言われた爺さんも、年には勝てず耄碌したか?」
ドロスの言葉に、鋭い眼光でバラッシュを見つめていた周囲の者たちから笑い声が漏れ出る。
「それよりそろそろ本題に入ってくれよ。これだけの面子が揃って、仲良くお茶会ってわけでもねえんだろ?」
ドロスが周りにいる者たちの顔を一瞥する。名前しか知らない者から実際に手合わせをしたことがある者まで、ただドロスが確実にわかっているのは、全員が生半可な実力者たちではないということだけである。
「うむ……むにゃむにゃ……すー……」
「爺さんっ!!」
「はうっ!? いきなり大きな声を出すでないわい。そのままあの世に逝きそうになったではないかっ」
「こっちは最前線に部下を置いたままなんだ」
苛立つドロスがバラッシュに不満を述べる。
「俺だってそうだ」
「貴君はまだいい。私の担当する砦がどれほど重要な場所か」
「冗談じゃない。こっちは魔物と交戦中に呼び出しだぞっ!」
ドロスに続いて、他の者たちも続く。
「ほらな? 俺だってなんの理由も説明もなしに、呼び出されたんだぜ。他の連中も似たようなもんなんだろ? 全員が爺さんに説明しろって言ってるんだ。それも納得できる説明をなっ! 見ろよ、この連中の
殺気立つ者たちの顔を見て、ドロスが囃し立てる。
「どこの国と殺り合うんだ? 俺たちはいつでも覚悟はできてるんだ。それともついに本国のお偉い様方たちが重い腰を上げて、魔王討伐に乗り出しでもしたか? それなら俺は大歓――」
「そうじゃ」
バラッシュの一言に、騒がしかった室内が静まり返った。
「――やっとか? やっとだぜっ! ついに三大魔王を討伐する日が来たんだな!!」
ドロスの身体が小刻みに震える。恐怖からではない。武者震いによってである。
聖国ジャーダルクの軍に所属する者たちにとって、三大魔王の討伐は悲願である。聖国ジャーダルクから西に位置するグリム城の城主『覇王ドリム』、この三大魔王に対してなぜ大規模な軍事作戦が展開されないのかは、軍に所属する者たち以外からも幾度となく声が上がるほど、長年の謎であった。またそのことに対して教王から説明が一切ないのだ。魔を滅することを至上の使命と信じて疑わないイリガミット教の信者からすれば、信じがたいことであった。
「――とは言っても、相手は三大魔王ではない」
「なんだそりゃ」
一気にドロスや周りの者たちの肩から力が抜けていく。期待していた分、その反動も大きかったのだ。すでに解散して帰りたいという空気が、ありありと漂っている。
「お主らが相手をするのはユウ・サトウじゃ」
「ユウ……サトウ? 知らねえ名だな」
「『災厄の種』のリストに目を通しておらんのか?」
「いちいちそんなのに目を通してらんねえよ。こちとら何年も最前線で戦い続けてんだ。それに『災厄の種』なら、今までに三つ、いや四つは滅ぼしてるぜ。どれも一発で終わらせてやった」
そう言いながら、ドロスが握り拳をバラッシュに向ける。
「ふむ、一撃か。さすがは『聖拳』の二つ名を冠するだけはあるの。ときに『三剣』の、お主らは一人で三千の兵を皆殺しにできるか?」
二つ名を呼ばれた三人の男たちが、思案顔で互いを見合わせる。やがて一人の男が口を開く。
「条件によるでしょうな。三千の兵と言っても、どの国の騎士団かによって強さはまるで違いますからね」
「ではマリンマ王国の海軍第一騎士団ならば?」
「それならよく知っています。その海軍第一騎士団を率いるトライゼン将軍に、指南したことがありますからね。なかなかに腕の立つ男で、その軍もよく鍛えられていました。確か風の噂によると、不慮の事故で亡くなったとか」
「そのなかなかに腕の立つ男であるトライゼン率いる海軍第一騎士団の三千の兵が、サトウによって皆殺しになっておる」
バラッシュの言葉を聞いても、臆するものは誰もいなかった。この場にいる者であれば、同じことができると自負しているのだ。
「その話が本当であれば、恐ろしいものですな」
言葉とは裏腹に、男は平静を保っている。
「しかし、おかしな点があります。並の将であれ、自軍の被害が二割も超えれば撤退を考えますな。トライゼン将軍がそこまで愚将とは思えませんが」
「簡単な話だよ。海軍なんだから海の上で戦ったんだろ? さらにつけ加えるなら、サトウは前衛職ではなく後衛職ってところかね」
男たちに混じって堂々と席に座る女性が、横から口を挟む。
「なるほど。それならばありえる話ですな」
「半分正解で半分不正解といったところじゃな。サトウは高位の魔法も使うが、マリンマ王国の海軍第一騎士団は近接戦闘で皆殺しになっておる」
「ひゅ~。そら怖いねー」
先ほどの女性が道化のように戯ける。だが、バラッシュは苛立つことも焦ることもなかった。ここにいるのは聖国ジャーダルクが誇る猛者の中の猛者である。この程度の話で動揺も危機感も持つはずがないとわかっていたのだ。ただ、話を進めるにあたって、引き締めねばと思うのみである。
「ドロス、我が国の食料自給率は知っておるか?」
「爺さんよ、それを知ってなんになるってんだ」
「バカタレっ。戦闘だけでなく、頭も鍛えておかぬかっ」
バラッシュの言葉に、ドロス以外の者たちが失笑する。
「細かな数字は省くが、我が聖国ジャーダルクの食料自給率は決して高いものではない。その多くを他国から、特にセット共和国とウードン王国から輸入しておる」
「それとサトウとなんの関係があるっていうんだ」
バラッシュに叱られ、また皆に笑われたドロスがふてくされながら尋ねる。
「サトウは多くの有力な商人たちと通じておる。その中にはハーメルン八銭が一人、ベンジャミン・ゴチェスターの右腕とも言われているビクトル・ルスティグの名もある」
誰かが「渇求のビクトル」と呟いた。皆がバラッシュの話に耳を傾け始めていた。
「すでにサトウはウードン王国を表と裏から牛耳っていたバリュー財務大臣を含む一派を排除し、ウードン王国の王都を含む二割強の商人たちを支配しておる! 表向きは取引相手となっておるがの。ウードン王国からの販路を封じられれば、当然セット共和国に頼ることになるだろう。じゃが、そのセット共和国から仕入れる食料の大半がハーメルンを経由してくるのは、皆も知っておろう。
学者連中に試算させたところ、このままのペースでいけば、あと十年でウードン王国の五割が、さらに十年もすればハーメルンの実に四割もの商圏に、サトウは影響を及ぼすことができると言っておった。これがどういうことになるか理解できるか? このままいけば我が聖国ジャーダルクは陸に上がった魚のように干上がり、サトウと戦う前から負けることになるじゃろう。どうじゃ? これでもユウ・サトウは大した相手ではないと言えるか? よいか? ユウ・サトウは、これまでお主らが相手してきたどんな凶暴な魔物とも、悪辣な者とも違うタイプじゃ」
バラッシュを茶化す者はいなくなっていた。
「ようやく事の重大さがわかってきたようじゃな。では――目の前の封筒を開けるがよい」
ドロスたちの前には、いくつかの封筒が番号を振って置かれていた。余計な事前情報を与えず、円滑に会議を進めるためである。
「なんだ……こりゃ」
ドロスが思わず呟く。呟かずにはいられないほど、資料に記載された情報は異常であった。
「これが現在わかっておるユウ・サトウが保有するスキル情報じゃ。パッシブスキルだけで四十以上、アクティブスキルも同じく四十以上、固有スキルは一つ持っていればいいところを十を超えておる」
「龍魔法っ!? どういうことだ。それにほとんどのスキルが一流の使い手と遜色ないどころか、凌駕しているではないかっ」
「冗談じゃないっ。こんな化け物を、上の連中は今まで放置してたっていうのか!?」
「放置していたわけではない。大司教ステラが監視の役目を担っておったが、死亡が確認された」
「サトウに殺されたのでしょうか?」
「その可能性は大いにある。さて、ユウ・サトウがどれほどの脅威であるかが、皆も理解でき始めたかな? 次の封筒を開けるがいい」
次の資料にはニーナたちや、クロにラスなどの情報が記載されていた。
「ゴブリンが――ランク7っ!?」
「待てっ。人型のアンデッドがランク8だと!!」
魔物のランクは強さを計る指標になるのだが、人型の魔物は知能を有することが多いことから、どの国からも危険視されている。
「これは紛れもない事実である。そのクロと呼ばれるゴブリンは近い将来ランク8になると予想されておる。ラスと呼ばれるアンデッドの個体はランク8。こちらもランクアップするのにそれほどの猶予はないじゃろう。高ランクの人型の魔物がどれほど恐ろしい存在であるかは、ここにおる者であれば説明する必要もないほど、身に染みてわかっておるであろう?」
「この肉のおばけや、強いりゅうとは? それにでっかい魔物では、なにがなにやらわかりませんな」
「うむ。疑問に思うのは儂も重々承知しておる。じゃが情報提供者の一人は年端も行かぬ子供ゆえ、そこは許してもらいたい」
皆から指摘されるのをわかっていたバラッシュが、申し訳なさそうに伝える。
「おい、爺さん! 捕獲ってどういうことだっ!!」
「馬鹿者っ! 誰が次の封筒を開けていいと申した」
「ぐっ……。それでもこの捕獲ってのはおかしいだろ?」
「
「捕獲とは、まるで獣のようではないか」
「ユウ・サトウが獣であれば、どれほどよかったものか。まあよい、次の封筒を開けよ」
次の資料にはユウたちの戦闘スタイルや、作戦を実行する場所などが記載されていた。
「ブエルコ盆地――ジンバ王国? あまり知らない国だな」
「ここでサトウを捕獲するのですね」
「なぜこの場所が選ばれたのか、お聞きしても?」
「バラッシュ殿には、その前になぜ捕獲なのかを説明してもらいたい」
「よかろう。皆が疑問に思っていることに答えてやろう。まず捕獲に関しては、それ以外に選択肢がないからじゃ」
「なにをわけのわからぬことを――」
「話を黙って聞くのだ。続きがあるはず、殺さずに捕獲せねばならぬ理由が」
「うむ。そのとおり、サトウを殺せぬ理由がある。そこの資料に書かれている肉のおばけや強いりゅう、それにでっかい魔物じゃが、その内の一つは判明しておる。でっかい魔物とは『悪魔の牢獄』に封印されていた古き魔王が一柱じゃ」
バラッシュの説明を聞いても、皆の疑問は増え続けていた。そもそも、『悪魔の牢獄』に魔王が封印されているなど、初耳であったからである。
「
「そう言っておる」
「そんな話は噂ですら聞いたことがないのですが?」
「そうじゃろう。聖暦よりもはるか太古、それも口伝でのみ伝わる話じゃからな。『天魔の半神、世を乱す。見かねた八龍が討伐を試みるも、滅ぼすこと能わず。天魔の封印を解くことなかれ』とな」
「八龍――八大龍王のことで?」
「左様。口伝から察するに、八大龍王が総出でも滅ぼすことができなかった存在であることがわかっておる。情報提供者からの内容から、残る肉のおばけや強いりゅうとやらも、同格かもしくは近い力を持っていることが推測できよう。
さて、どのようにしてか。サトウはこの強大な三体の魔物を従えておる。さらに問題はサトウを殺しても、この三体の魔物が一緒になって滅ぶのではなく、むしろ解放される可能性が非常に高いことである。少しは理解したかの? サトウを殺して、万が一この三体の魔物が野放しになれば、三大魔王が下手をすれば六大魔王になりかねんっ!! これがサトウを殺せない理由じゃ。サトウを捕獲し、聖国ジャーダルクが責任を持って、永劫に封印し続けねばならん」
立っていた者が、全身の力が抜けたかのよう席に着く。
「我々だけで、この大役を成功させろと?」
「ふむ。それはいくらなんでも無理と言うものじゃ」
「すぐに俺の部下を呼ぶ。爺さん、いいよな?」
ドロスが壇上にまで降り立って、バラッシュに詰め寄る。
「その必要はない」
「なにを言っ――あっ! まさか、ここ数ヶ月で俺の部下が配置換えされていたのは……」
「ようやく気づきおったか。すでにお主らの主要な部下は現地に向かっておる」
「それだけでは不安ですね。それにサトウがブエルコ盆地へ、素直にのこのことやってくるでしょうか?」
「それも心配はいらん。この計画は一年以上前から進められており、十人以下の小隊で各ルートを使って、三万の兵がジンバ王国もしくは周辺の国々で、命令を今か今かと待っておる。この動きに気づいておる可能性があるのはセット共和国くらいのもので、それでもその目的や場所まではわかっておらん。
そして一番の大役であるサトウをブエルコ盆地へおびき出す役目は、勇者殿が引き受けてくださった」
バラッシュの勇者という言葉に、皆がそれならばと納得した。勇者という存在はそれほどのモノであるのだ。
「しかし、それだけの兵をブエルコ盆地に隠し通せるものでしょうか?」
「そちらも心配はいらん。三聖女が一人――」
「ま、まさかっ」
なぜかドロスが興奮しだす。
「――テオドーラ殿が協力を申し出てくれた」
「俺の嫁っ!!」
「馬鹿者がっ、口を慎まぬか! 聖女に対して、よりにもよって嫁などと、不敬罪で投獄されてもおかしくはないのだぞっ!!」
『三剣』の一人が、慌ててドロスの口を塞ぐ。
「で、その大役を担っていただいた勇者様とは、どちらの勇者様なのでしょうか?」
「『パンドラの勇者』である」
「驚きましたな。資料によると、ジョゼフが介入する可能性があると、『パンドラの勇者』それにテオドーラ様、ここに『大賢者』が加われば、伝説の再来ですな」
「ジョゼフ? あんな老いぼれ大したことねえよ。今や昔の英雄様ってやつだ」
ドロスが両拳を打ち鳴らしながら罵る。
そしてバラッシュの命により最後の封筒を開けると、作戦の詳細な内容を各々が確認していく。
「勇者はあと数日でサトウのいる都市カマーへ到着する予定じゃ。儂らもこのあとすぐに聖都を立つ。
サトウを包囲するのに三万、捕獲するのに我ら率いる二万の兵であたる! サトウ一人に総勢五万もの兵をもって捕獲する!! 此度の作戦は、ワルプルギス教団や『災厄の魔王』討伐と比べても遜色ない任務――否、聖戦である! 現時点を以て『災厄の種』ユウ・サトウの呼称を『漆黒の第七天魔王』とする! これは第二次聖魔大戦で猛威を奮った第六天魔王と類似点が多いことからによるものである!! 理解したか? ならば資料はすべて焼却処分じゃっ! まさかこの場に臆した弱き者はおらんなっ!!」
「応っ!」
「人類の存亡は我らの手にかかっておる!!」
「応っ!!」
「正義は――」
「我らとともにあり!!」
「聖国ジャーダルクこそ――」
「正義っ! 正義っ!!」
「我ら光の女神イリガミットの子である。正義の力を以て――」
「悪を討ち滅ぼす者なりっ!!」
都市カマーから北部にある森の中を、一人の男が駆けていた。
「どこに逃げた?」
「そう遠くへは逃げられぬはずだ! 相手は義理とはいえ、大司教ステラの息子、我らの手は熟知しているはず。臭いや血の跡に騙されるなよ!」
「わかっている」
十数人の男たちはそう言うと、音もなくその場から消え去る。
「しつこい奴らだぜ」
木の陰に隠れていたアンスガー・フォッドは、脇腹を押さえながら座り込む。
「くそっ。厄介な毒を使いやがって……さっきから解毒できやしねえ」
脂汗を浮かべながら、アンスガーは空を見上げる。
「へ、へへっ。なにをやってんだろうな俺は。クソババアとの約束は果たしたんだから、放っておけばいいのによ。ぐおっ……!」
アンスガーは力を入れて立ち上がると、そのままカマーへ向かって歩き出すのであった。
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