第258話 報仇雪恨

 数メートル先も見通せないほどの暗闇、足元をわずかに照らす光源を見上げれば、柔らかな光を放つ月が雲の合間から顔を覗かせている。

 日が沈みすでに六時間は経っていた。

 王都テンカッシの通りに並ぶ商店のほとんどが、商品を片づけて閉店している。日中は大勢の人が行き交う通りであるが、この時間帯ともなれば人の流れもまばらである。

 それでも人通りが多い場所といえば、酒場や娼館などのいわゆる夜の店である。そのような店が立ち並ぶ通りは、昼とは逆に男の客や呼び込みをする女たちで賑わっていた。

 その賑わいも百メートルほど離れれば静かなもので、そこまで離れれば、今度は庶民が住む住居地区である。ほとんどの家から明かりは消え去り寝静まっている。明かりが点いたままの住居など、数えるほどである。

 その静まり返った住居地区を走り抜ける男たちがいた。


「急ぐ必要はないぞ。先発組が見張ってるからな」

「わかってる。だからこうやって巡回の衛兵に見つからないように、わざわざ遠回りしながら走ってんだろうがっ」

「ちっ。でけえ声を出すんじゃねえよ。忍んでいる意味がねえだろうが!」

「お前の声が一番大きいんだけどな」


 闇夜に紛れて走っているこの男たちはアルコムの者である。

 住居地区を誰にも気づかれぬよう行動しているのだが、やがて目的の建物が見えてくる。


「改めて見てもバカみたいにでけえ屋敷だな」


 そこは王都テンカッシにいくつかある富裕層エリアの一つである。貴族街ほどではないが、それでもとても庶民では小さな家であろうと持つことは叶わない場所である。

 目の前にある屋敷は立派な家が立ち並ぶ富裕層エリアの中でも飛び抜けて大きな建物であった。


「おっ。やっと来たか」


 先に屋敷を監視していたアルコムの男が、後発組に声をかける。


「様子はどうだ?」

「どうもこうも。あいつら、自分たちが襲われるなんて思っちゃいやしねえ。庭に番犬は放っちゃいるが、それ以外は見張りすら立ててねえよ」

「まっ、そりゃそうか。ここじゃ、自分たちに歯向かう連中なんていなかっただろうしな。勘違いもするさ」

「勘違いって言うけどな。実際のところローレンスにケンカ売るような奴は、ウードン王国中を探してもいねえぞ?」

「今まではな」


 男の言葉に、周囲のアルコムの者たちが不安を隠そうともせずに、互いの顔を見合う。


「なあ、どう思う?」

「どうって?」

「ボスが本当にローレンスを潰すと思うか」

「俺に言われてもわからねえよ。なにしろ俺たちは複数のグループに分かれて、それぞれ違う指示のもと動いてるんだからな。全部の詳細を知ってるのも、ボスについてるマオスくらいじゃねえか? もうすぐ来るだろうから、聞けばいいだろ」

「こっちは後発組のお前らと合わせても、せいぜい二十人だぞ。カマーから王都に追加で来た連中を全部動員すれば三百はいるってのに、なんでボスはたったの二十人でローレンスの、それも本部を襲撃するんだよ。あの屋敷にはローレンスの連中がうじゃうじゃといるんだぞ。それに高ランク冒険者や傭兵の用心棒だって、常時二人はいるって噂だ」

「だから、俺に聞くな――っと……ボスだ」


 慌ててアルコムの男たちは、背筋を伸ばして横一列に整列してユウを出迎える。


「こんなところで整列なんてするな」


 ユウが手で散れと指示を出すと、アルコムの幹部の一人が「すいやせん」と愛想笑いを浮かべる。


「愛想笑いするなら、もうちょっとマシな笑顔を作れ」


 そのユウの言葉に、他の者たちは肩の力が抜けて笑みを浮かべた。


「で、どんな感じですか?」


 ユウの案内人としてついているマオスが、男たちに問いかける。


「見てのとおりよ。なーんの動きもない」

「ボ――ユウさん、問題ないようです」

「わかった。じゃあ、行ってくるから俺が呼ぶまでくるなよ」

「はい」


 それがさも当然とばかりに、マオスは腰を屈めてユウを見送った。驚いたのは屋敷を見張っていたアルコムの男たちである。


「ちょ、ちょっ! ままっ、待って! ボス、待ってくださいよ!!」

「なんだよ、大きな声を出すな。あとボスって呼ぶなっていつも言ってるだろうが」

「す、すいません。で、ですが、あの、その、そう! ああ見えて、あの屋敷は貴族だって持っていないような結界の魔導具で護られてて、見張りはいないんですが、番犬がいてそう簡単には――」

「大丈夫ですよ」


 ユウと幹部の男の会話に割って入ったのはマオスである。


「大丈夫ってマオス、お前……あっ、行っちまった」


 ユウはそのままローレンスの屋敷に向かって歩いていく。それを呆然とアルコムの男たちは見送ることしかできなかった。


「どうすんだよ! ボスが一人で行っちまったじゃねえかっ!」

「だから大丈夫ですって。ほら、見てくださいよ」


 マオスは自分の胸ぐらを掴む男に、ローレンスの屋敷を指差す。指の先を追うように男が目を泳がせた先では、ユウが屋敷に張られている結界を難なく通り抜け、玄関に向かって歩く姿が見えた。


「うっそだろ……。どうなってんだ」

「あれ見ろよっ。訓練された番犬が、吠えるどころかボスにビビって犬小屋から出てこねえぞ」


 目の前の光景が信じられないのか。アルコムの男たちは呆然とした様子で呟く。


「見てのとおりですよ」

「マオス、詳しく教えろよ。お前はボスについてたんだから、知ってんだろ」

ここ・・で最後ですよ」


 マオスの要領を得ない言葉に、男たちがもったいつけるなと苛立つ。

「ですから残るローレンスは、ここの本部だけです。他の支部は全部ユウさんが潰しました。ここにいないウチの連中は、今頃せっせとローレンスの支部から金目の物を運んでいますよ。そのためにユウさんはアイテムポーチを用意してたんですから、恐ろしい方だと思いませんか?」


 マオスの説明を聞いても、男たちは口を開けたまま固まっていた。しばらくはそのままで、いち早く我を取り戻したのは幹部の男であった。


「マ、マオス、そりゃ本当の話なんだろうな?」

「嘘を言ってどうするんですか」

「いや、そりゃそうか。だけどよ、ほんっとうにボスが、たった一人で、あのローレンスの支部を二十四も……あっ、ボスが一つは潰してたから、残りは二十三か。その、あれだ。支部をぜーんぶ潰したってことで間違いないんだよな?」

「ええ、間違いありません」


 断言するマオスの言葉を聞いても、まだ信じられない様子の男たちに、マオスは少しムッとする。


「この目で見てきたんですから! ただ、ボスは皆殺ではなく、選別しているようで……殺さなかったローレンスの奴らをどこかに送っていました」

「送るってどこにだよ?」

「そんなこと知りませんよ! あんなモノ思い出したくもないっ!! あっ……すみません」

「い、いや、気にすんな」


 思わず語気が荒くなったマオスが謝る。それほど、あの光景は思い出したくないものであったのだろう。




「キャーッ! いい飲みっぷり」


 娼婦がローレンスの男に抱きついて、その頬に口づけをする。


「だろう? この酒一瓶で五十万はくだらねえって代物なんだぞっ」

「五十万って五十万マドカっ!? すごーい!」


 ローレンスの屋敷の中では、毎夜のごとく行われる馬鹿騒ぎの真っ只中であった。男たちの周りに娼婦が纏わりついて、酒を勧め、あるいは浴びるように飲んでいる。

 特にバグジーや幹部の周りには高級娼婦や見目麗しい奴隷があてがわれている。

 高級娼婦は羽振りのいい、また逆らっても碌な目に遭わないだけに、ローレンスの男たちへ愛想を振りまくのだが、奴隷の女たちは奴隷の首輪によって無理やり従わされているだけに、死んだような目の者や反抗的な目を向ける者などに分かれていた。


「バグジーさん、いつまで我慢すればいいんだっ! 俺はあのクソ生意気なサトウってガキの尻を犯してやりたいんだ!!」

「待てと言っただろうが、それともなにか? お前は俺の言うことが聞けないのか?」


 娼婦からフルーツを口移しで食べさせてもらっていたバグジーが、幹部の男の顎を撫でる。


「い……いや……俺はそんなつもりは…………ただ」


 大男は途端に汗だくになって、しどろもどろになる。


「心配するな。明日だ。明日の叙勲式が終われば、あのクソ生意気なサトウも親父の所有物になる。

 この俺を舐めた奴を、俺がそのまま生かしておくと思うか?」

「へ……へへっ。そうだよな。バグジーさんを舐めた奴を、そのまんまにしておくわけがねえよな!」

「そのとおりだ。さあ、酒と女を楽しめ」


 グラスをバグジーが差し出す。左右にいた娼婦が互いに競うかのようにワインを注ごうとするが、バグジーがグラスを持ち上げてそれをさせない。


「えー、どうして?」

「バグジーさんのイジワル~」

「お前らじゃない。そこのエルフ、お前が注げ」


 大勢いる奴隷の一人、先ほどから反抗的な目を向けるエルフの女性に、バグジーは酒を注げと命じる。


「だ……誰がその……がふっ」


 命令に逆らったエルフの女性が、奴隷の首輪の効力によって苦痛にもがき苦しむ。


「注げ」

「げがっ……い……いや……っ」


 口から泡を吹きながらも、エルフの女性は拒絶する。このままでは死ぬだろうと思われたそのとき、バグジーが命令を解除する。


「おい、連れてこい」

「は、はい!」


 皆まで言わなくても、それだけで男たちはバグジーが誰のことを言っているのかを理解し、慌てて別室へ向かう。


「黙ってこっちに来いっ!」


 別室から男たちが戻ってくる。その手には鎖が握られており、力尽くで引っ張られている者がいた。


「ね、姉さま……」


 その引かれている者の姿に、エルフの女性が叫ぶ。


「ひ、卑怯だぞっ!!」

「誰に向かって口を利いている。俺の身体にはウードン王国で最も偉大な大貴族の血が流れているんだぞ。その俺の命令に背きやがって」


 バグジーが娼婦たちに向かって目で自分の足を指す。すると、それだけでなにをするのか理解した娼婦たちが、バグジーの靴を脱がせる。


「舐めろ」


 蹲るエルフの女性に向かって、バグジーが命令する。


「誰が舐めるかっ! きゃあ゛あ゛あぁがっ……」

「姉さまっ!!」


 命令に従わなかったエルフの女性が苦痛に身体をよじる。限界の手前で、バグジーは命令を解除する。その苦痛にもがくエルフの姿に興奮を覚えているようであった。


「俺の言うことが聞けないのか? ん?」

「き……貴様のような卑劣な奴の言うことなど、誰が聞くものかっ!!」


 いまだ身体は激痛に苛まれているなか、エルフの女性は痛みを堪えて気丈に振る舞う。


「そうか、俺の言うことが聞けないか」


 バグジーが嬉しそうに笑う。

 そして幹部の大男に向かって。


「おい、可愛がってやれ」


 その言葉だけで、大男の下腹部が大きく盛り上がり、ズボンがはち切れんばかりになる。


「ま……まさか……っ。やめろ、来るなっ!」


 自分が犯されると思ったエルフの女性の顔が青ざめていく。だが、大男はエルフの女性の横を通り過ぎていく。


「いやっ! やめてよ! 誰か、姉さま、助けてっ!!」


 まだ年端もいかない可愛らしいエルフに、大男は向かっていく。そのまま跨がり衣服に手をかけようとしたそのとき。


「待って! 待ってくれ!!」

「スト~プ」


 卑しい笑みを浮かべながらバグジーが制止の言葉をかける。大男が舌打ちを鳴らし、残念そうに泣き叫ぶエルフを見下ろす。他の男たちも露骨にがっかりした表情を浮かべていた。


「なんだ? なにか言ったか?」

「――める」

「聞こえないな~」

「な、舐めるから……うと……に手を出さないでくれ」

「舐めるから? おいおい、奴隷の分際で何様のつもりなんだ?」


 歯を食いしばるエルフの女性の口から血が流れる。


「舐めさせてください」

「なんだなんだ? さっきは嫌だの貴様だの言っておいて、俺の足を舐めたいのか?」

「はいっ……あなたさまの足を、この奴隷めに……どうか……どうかっ、舐めさせてください!」


 男たちがニヤニヤと笑みを浮かべながら、屈辱に耐えるエルフの女性の姿をツマミに酒を飲む。


「そうか。それほどまでに俺の足を舐めたいかっ! そこまで頼むなら俺も鬼じゃない、舐めさせてやる」


 バグジーはそう言うと、エルフの女性の頭に足を乗せる。


「いいか? 足の指を一本一本、根本から先まで丁寧に舐めるんだぞ。

 本来ならお前のような薄汚い奴隷のエルフが、舐めさせてもらえるものじゃなーい。わかったか? わかったなら、俺に感謝しながら舐めろ」


 溢れ出る涙がエルフの女性の頬を伝う。


「やめて! 姉さま、そんなことしないで!!」

「うるせい! お前は黙って見てろ!!」


 エルフの女性が震えながら舌を出し、バグジーの足の指先へ持っていく。その舌が指先へ触れようとしたそのとき――


「臭えな。これならまだスラム街のほうがマシな臭いだぞ」


 その声に皆が振り返った。

 扉の前にはいつの間にかユウが立っていた。


「なんだお前? どっから――ぎゃあ゛ぼっ……」


 詰め寄ってきた男の喉をユウは掴むと、そのまま無造作に引き千切った。喉の一部を失った男の口から、肺にまで届かず漏れ出る空気が風の音のように聞こえた。そして、そのまま男は大量の血を喉から噴き出して後ろに倒れて息絶える。


「こ……これはこれは誰かと思えば、いつぞやの冒険者様ではありませんか」


 この異常な事態に、さしものバグジーも動揺を隠せずにいた。


「誰だお前? 馴れ馴れしく話しかけてくんなよ」


 バグジーのこめかみに青筋が浮かぶ。


「きょ、許可もなく人の屋敷に来ておいてっ! 俺を、この俺を、誰だだとっ!!」

「大きな声を出すなよ。

 お前が口を開くたびに、ドブネズミの死臭みたいな臭いがこっちにまで漂ってくるんだよ」


 ローレンスの男たちが、手に手に武器を持つ。


「バグジーさん、もういいよな! 俺がサトウを犯してもいいよな!」

 幹部の大男が涎を垂らしながらバグジーに確認――するまでもなく、すでに動き出していた。両手を大きく広げて、ユウに突進していく。


「サトウ、犯してや――るぞ……ぼぴょっ?」

「うるさい」


 ユウの大剣、黒竜・燭が大男を唐竹割りする。スローモーションのように大男の身体が逆八の字に分かれていく。さらに遅れて脳髄や臓器が溢れ出し、血と共に床へ拡がる。


「あっ」


 なにか思い出したかのように、ユウは慌てて大男の傷を治そうとするのだが、その惨状に顔を嫌そうに背けると。


「トーチャーに任せるか」


 『時空魔法』で門を創り、その中へ大男の死体を放り投げる。


「バ、バグジーさんっ」


 ローレンスの幹部が、バグジーにどうすればいいのか指示を仰ぐように名前を呼ぶ。


「殺せ……いや、それはさすがに俺が親父に叱られるか。死ななければ、なにをしてもいい。そうだ……あの馬鹿が勝手に来たんだ。

 お前ら、わざわざあのサトウが遊びに来たんだ。存分に可愛がってやれ! ただし、殺すのは禁止だ!! 見事、倒した奴には俺から金貨百枚を褒美としてくれてやる!!」


 殺さなければなにをしてもいいという許可と褒美の金貨百枚に、ローレンスの男たちが目の色を変えて雄叫びを上げる。

 次々と屋敷にいるローレンスの男たちが部屋に押し寄せ、手柄を立てようとユウに向かっていく。


「死ねやっ!」

「金貨百枚は俺のもんだ!!」

「クソガキがっ!」


 剣、ダガー、鉈、斧、様々な武器を手に、男たちがユウへ襲いかかるのだが。


「ぎゃああっ……」

「いでえっ!!」

「あ、足が……俺の足がっ!?」

「ポ、ポーションを、だ……誰か……俺の腕を拾ってくれっ!」


 腕や足を斬り落とされ、あるいは背骨を砕かれ、動けなくなった者たちを、ユウは門へ放り投げていく。そのたびに門の向こう側にいるトーチャーは、歓喜に身を震わせる。


「な……なんだありゃ」

「あんな強えなんて聞いてねえぞ……」

「そ、それになんだよあの変なモノはっ!」


 ユウが放り投げた男の一人が、門の手前に落ちる。手足を失っている男は、それでも這って逃げようとするのだが、門の奥から美しい腕が姿を現す。ひと目で女の腕だとわかるその手には手鉤が握られており、精肉でも扱うかのように男の背中へ引っかけると、そのまま男の身体を無理やり引き寄せた。


「情けねえ奴らだ! 退けっ!! 退かんかっ!!」


 理不尽なユウの強さに尻込みし始めたローレンスの男たちを押し退けて、戦斧にフルプレートアーマーを身に纏う男が姿を現す。


「おおっ、ヤブール!」

「同じBランク冒険者のお前なら大丈夫だ!!」

「あのガキに『不死身』の二つ名を思い知らせてやれっ!」


 さらにユウを囲む輪から武具を纏った男たちが出てくる。


「よっしゃ! Aランク『音遅れのウムジー』だ!」

「こっちはBランクの傭兵『水妖剣』のザキヤだぜ!!」


 ローレンスが抱える用心棒の登場に、先ほどまでの動揺が嘘かのように歓声が上がる。


「悪いな坊主、こっちも仕事なんでな」

「快進撃もここまでだ」

「こんなガキがBランク冒険者って聞いたときは耳を疑ったが、噂に違わぬ実力はあるようだな。だがよ、なんなら俺一人で十分だぞ?」

「それなら俺だって一人で行けるぞ!」

「ケンカをするな。子ども一人を倒すだけで金貨百枚だ。早い者勝ちということでどうだ?」

「「乗った!!」」


 三人の男が我先にと、ユウへ仕掛ける。


「おうっ!!」


 巨大な戦斧とは思えないほど、ヤブールは軽々と戦斧を振り回す。その猛攻を躱しざまに、ユウがヤブールのフルプレートアーマーの繋ぎ目を狙う。


「くそっ、鎧の繋ぎ目をっ!」


 ユウに斬り落とされた左肘から先を拾うと、鎧兜の隙間からヤブールは不敵な笑みを浮かべる。そして拾った腕を切断面に押しつけると、驚くことにそのまま腕が繋がる。


「見たかっ! これが『不死身』のヤブール様の力よ!!」

「だからどうした」


 ヤブールへ追撃をしようとするユウの横から、槍が襲いかかる。


「しっ!!」


 『音遅れのウムジー』が、高速の突きを放つ。そのあまりの速さに、刺突音が遅れて聞こえてくるほどである。

 その刺突をユウは盾も使わずに、わずかに身体をそらして躱し続ける。


「ほう、我が『三段突き』を容易く躱すかっ!」

「ヤブールもウムジーの旦那も情けねえな!!」


 ユウの頭上より、『水妖剣』のザキヤが剣を振り下ろす。黒竜・燭の大剣で受け止めようとしたユウであったが、ザキヤの剣がその刃を通り抜けて迫りくる。

 身体を撚るだけでは躱せないと判断したユウが『魔拳』で左腕に氷を纏う。その左腕より放たれる冷気がザキヤの水の剣を凍らせて、ユウは腕で刃を受け止める。


「およよっ。初見で躱したのはお前が初めてだぜ!!」


 水で構成された剣は、斬るも通り抜けるもザキヤの自由自在であった。

 ユウのもとから飛び退いたザキヤは、凍った刃を砕いて新しい水の刃を創り出す。


「わははっ! 見たか? あの慌てよう!!」

「今から謝っても許さねえからな!」


 形勢が逆転したと見るや、ローレンスの者たちが口汚くユウを罵る。バグジーも一時はどうなるかと思っていたのだが、一安心とばかりに小さなため息をついた。


「がははっ! なるほど、なるほど。一対一なら後れを取ったかもしれんな!」

「生死を懸けた戦いに卑怯などない。諦めて死ぬがいい」

「土下座すれば、少しくらい手を抜いてやってもいいぞ」


 軽口を叩きながらも、油断なく三人の男たちはユウを囲む輪を狭めていく。


「もういい」


 「降参か?」と思うような男たちではない。これほどの腕前を持つユウが、安易に白旗を掲げるはずがないと。


「時間の無駄だ。どの程度かわかったから、さっさとかかってこいよ」

「生意気な坊主めっ!」


 侮辱されたと激昂したヤブールが真っ先に突っ込む。その勢いのままLV4の斧技『爆斧ばくふ』を放つ。戦斧に込められた闘気が、打ち込んだ箇所で爆発する技である。

 対するユウは左脚で迫りくる戦斧の柄を蹴り、軌道をそらす。巻き添えを恐れて、ヤブールに続いていたウムジーとザキヤがその場から飛び退く。

 床に突き刺さったヤブールの戦斧の闘気が爆発して破片が周囲へ飛び散るが、ユウは意に介さない。そのまま流れるように身体を回転させて、ヤブールの鎧兜を跳び後ろ蹴りで真上に蹴り上げた。


「小癪なっ!!」


 顔が顕になったヤブールは、その声に相応しい強面の顔つきであった。蹴りを放ったユウは宙に舞っており、逆さの状態で落ちてくる。素顔のヤブールとユウの目が合うと同時に、ユウが黒竜・燭でヤブールの首を横に薙ぐ。


「そうはいかぬっ!」


 だが、ヤブールはフルプレートアーマーを着ていながら、素早い身のこなしで身体を引いて躱す。それでも頸部を三分の一ほど斬られていた。


「ぐふっ……。や、やるでは……ないか。だが、この程度の……き……ず?」


 頸部の傷を押さえながら『高速再生』のスキルを持つヤブールは、いつまで経っても傷が塞がらないことに驚き、慌ててアイテムポーチからポーションを取り出そうとするが。


「お互いに抗え・・なかったな」


 今度こそ、ユウに首を刎ねられてヤブールは絶命する。


「ヤブールっ!? おのれっ!!」

「油断するからだ!」


 ウムジーとザキヤが互いの長所を活かしながら、ユウに攻撃を仕掛ける。近距離でザキヤが攻め、中距離でウムジーが槍で突く。それも常にユウを挟み込む形になるよう動きつつである。


「いつまで躱せるかなっ!」


 ウムジーが刺突の軌道をユウに読まれないように、LV3の槍技『蛇行突き』を放つ。


「ウムジーの旦那に風穴を開けられるか。俺の水剣の餌食になるか。好きなほうを選びな!!」


 無数の蛇行する刺突と、受けが通じぬ水の剣の猛攻がユウを襲う。


「まだまだーっ! しっ! しっ!!」


 恐るべき少年だと、ウムジーは内心で呟く。

 受けが通じぬあのザキヤの水剣を躱しながら、同時に背後からの自分の刺突を躱すなど、ウードン王国広しといえど同じ真似ができる者が果たして何人いるだろうか。たとえいたとしても、片手で数えるほどいるかどうか。

 だが、その驚異の攻防も長くは続かない。

 徐々に、ユウの身体にウムジーの槍が当たり始めていた。


「はあっ!!」


 『蛇行突き』を躱し続けるユウに、ウムジーはLV6『竜牙りゅうが』を織り交ぜる。

 竜の一撃を思わせる刺突が、決まったかと思ったその瞬間――


「なっ!?」


 後ろ向きのまま、ウムジーが放った『竜牙りゅうが』を、ユウは屈んで躱す。さらにユウは、その場で上半身だけ捻り黒竜・燭をウムジーに向かって投擲する。

 まさか大剣を、それもこの距離で投擲として使うとは思いもよらなかったウムジーの反応がわずかに遅れる。

 それでも十分に躱すことは可能だと、躱そうとしたウムジーであったが、しかし足が床に張りついたかのように動かない。その動かない足へ目をやれば、床と自分の足が氷で覆われていた。

 ユウの足元からウムジーのところまで、目を凝らさねばわからぬほど薄氷が続いていたのだ。


「い、いつのま――ガハッ……」


 黒竜・燭を投擲すると同時に、ユウは仕込んでいた氷へ一気に魔力を込めて、ウムジーの足と床を凍りつかせたのだ。

 上半身と下半身が泣き別れとなったウムジーは、ローレンスの者たちが慌ててポーションをかけるも、やがて息絶える。


「くそったれがっ!」


 武器を手放し、さらには自分に背を向けているユウへ、ザキヤが水剣を振り下ろそうとするが。


「ぎゃっ!?」


 不可視の、まるで空気の拳で殴られたかのように、ザキヤの身体が仰け反る。


(ま、まずいぞ)


 身体を戻したザキヤの眼前では、すでに体勢を整えたユウがザキヤに迫っていた。

 ユウの手刀がザキヤの首目がけて横薙ぎに振るわれる。


「舐めるなよっ!」


 後方に跳びはねてユウの手刀を躱すが、その手刀が伸びた。いや、正しくはザキヤの水剣のように、手刀の先に水の刃が構成されていた。


「あがっ……お、俺の……水け…………パクりやがっ……」


 ザキヤの首が床に転がる。

 ローレンス自慢の用心棒が、負けるなどとは思いもしなかった者たちが、なにが起こったのかいまだ理解していないようで、呆然とユウを見ていた。そして遅れて――


「うわああああああーっ!?」

「逃げろっ!!」

「化け物だっ!!」

「お、俺は関係ないんだっ!」


 蜘蛛の子を散らすように逃げるのだが。


「どけ! 俺が先だろうがっ!!」

「バグジーさん、待って! 俺も、俺も連れてってください!」

「うるさい!! どうなってんだ!? 開かねえぞ!!」


 部屋の扉という扉が、窓という窓が、どのようにしても開かない。


「なんで壊れねえんだよ!!」


 壊そうと、窓に椅子を叩きつける者もいたが、それでも窓には傷一つもつかない。


「俺がお前らのような塵どもを、見逃すわけないだろうが」


 手下を押し退けて逃げようとする、バグジーの背後にユウが立っていた。


「ひいっ!? お、俺が誰だかわかってんのかっ!! バ、ババ、バリュー・ヴォルィ・ノクスの、あのバリュー・ヴォルィ・ノクス財務大臣の息子なんだぞっ!!」

「あっそ」


 そこでバグジーの意識は途絶える。

 残された者たちに待っているのは絶望であった。




「そっちの部屋に隠し部屋があるんで、そこにある隠し金庫も忘れずに」


 マオスが淡々と指示を出す。

 娼婦と奴隷しか・・いなくなったローレンスの屋敷では、アルコムの者たちが忙しなく動き回っていた。


「それでは娼婦の処分は、こっちに任せてもらっていいんですね」

「ああ、任せる」

「奴隷は先ほどと同じように?」

「そうだな」

「どれくらいの間、奴隷たちの面倒を見ればいいですか? いえ、お金や食料の心配はしていないんですが、どれくらいの期間になるかで指示も変わってくるんで」


 ローレンスの支部にいた奴隷たちは、アルコムで面倒を見ることになっていた。

 大きな倉庫や住居を複数用意するよう指示を受けていたのは、こうなることを見越してのことだったのだろうかと、マオスはおもんばかる。


「長くても二ヶ月はかからない」

「二ヶ月ですか……」


 ローレンスを滅ぼしたとはいえ、財務大臣には多くの手駒が残っている。それらを長くとも二ヶ月以内に処理するのだろうかと、マオスはユウの戦闘力と行動力に恐れ戦く。


「あとは任せたからな」

「お任せを!

 ところで、ユウさんは今からどちらへ?」

「マゴとの約束だからな」


 そう言うと、肩にバグジーを抱えるユウは『時空魔法』で創り出した門を潜っていく。

 ユウとマゴの間でどのような約束が交わされているのかはわからないが、バグジーに待っているのは地獄だろうと、マオスはいい気味だと思うのであった。




「ぐっ…………あ…………ああっ…………な、なんだ、ここは?」


 バグジーは先ほどまでの出来事を思い出すと、慌てて起き上がろうとするのだが、身体はピクリとも動かない。


「な、なんだよこれはっ!?」


 状況を把握しようとバグジーが目を動かす。

 どうやら診察台のような台で自分は寝ているようで、身体はなにかで固定されているようであった。

 なぜ身体を拘束するモノがわからないのかと言うと、バグジーの首や腰、肘に手首と、さらに目を動かしてもまったく見えないが、どうやら膝や足首まで入念に身体を台に固定されているようで、見たくても首を上げると、そのなにかが締まって顔を起こすことができないのだ。

 しかも、どうやら衣服や身につけている魔導具などはすべて剥ぎ取られているようで、全裸なのが台に触れる身体の感触でわかる。

 だが、気分は悪くない。いや、それどころか普段から愛用している葉っぱほどではないが、高揚感に満たされているのが実感できる。


「ホッホ、お目覚めになられたようですな」

「だ、誰だてめえ! 俺が誰だかわかって、こんな真似をしてるんだろうな!!」

「ええ。バリュー財務大臣の庶子である、バグジー……ああ、家名を名乗ることすら許されていないので、ただのバグジー殿でしたな」

「こ、殺すっ! どこの誰だか知らないが、お前は必ず俺の手で殺してやる!! いいか? お前だけじゃないぞ!! お前の家族も、友人も、知り合いも全部だ!! 全員、ぶっ殺してやるっ!!」


 自らの一番触れられたくない部分をマゴになじられて、バグジーが激昂するが、身体が拘束されていてはなにもできない。


「おや? あなたは私のことを知っているはずですよ。ほら、よくご覧になってください」


 バグジーによく自分の顔が見えるようにマゴが覗き込む。


「誰が! お前みたいな爺の顔なん…………待てよ。お前、あんときの……マゴ商会の爺か?」

「ホッホ、思い出していただけたようですな。そうマゴ商会のマゴ・ピエットです」

「なにを笑ってやがる! このっ……ゲホゲホッ!」

「ああ、首を固定しているので、無理をすると首が締まって苦しいだけですよ」

「なにが目的だ? 親父への口利きか? それとも金か? 金なら好きなだけくれ――」

「違います。

 バグジー殿にお聞きしたいことがあります。素直にお答えいただくのが身のためかと」

「ああっ? 俺を脅すつもりかっ!」

「今のご自分の立場をよくご理解したほうがいい。

 私は見てのとおり、どこにでもいるような老人ですが、その気になればあなたの首を締めて殺すことなど造作もないことですよ」


 興奮していたバグジーは、マゴの言葉で我に返ったのか。身動きの取れない自分の身体に冷や汗をかく。


「わ、わかった。なにが知りたい? なんでも答える! その代り、答えたあとに俺を解放しろっ!! それが条件だっ!! いいだろ? な? な?」

「ホッホ、わかりました。

 お答えいただければ、解放することをお約束しましょう」


 解放するという言葉に、バグジーはとりあえず安堵する。


「私が知りたいのは、あなたが今まで殺してきた者たちについてです」

「待ってくれ! 今まで俺が何人殺してきたと思っているんだ! そんなこといちいち覚えてねーよ!!」

「チェスラフ・ホイヤーという男について、心当たりはありませんか?」

「そんな奴は知らねえって!」

「ではイジンカ・ホイヤーという女性についてはどうですかな? ヤルミラ・ホイヤーは?」

「イジンカ? あ、ああっ! 思い出したぞ!! チェスラフ・ホイヤーって、あのホイヤー商会のチェスラフだろ?」

「ええ、そのチェスラフ・ホイヤーの家族について、あなたの知っていることをすべて教えてください」

「わかったわかった。あの商会のことならよく覚えているんだ。なにしろあの男は――きゃははっ!」

「どうなされましたかな?」


 いきなり吹き出したバグジーを、マゴが不思議そうに見つめる。


「いや、悪い悪い。でもさ、あの家族のことを思い出したらおかしくってな。

 だってよ、私は脅しにも暴力にも屈しない! て言ってた野郎がさ。店の従業員を順番に殺してやったら、見る間にやつれていきやがんの。そこでおとなしく上納金と迷惑料で商会を明け渡せばいいものを、生意気にも断りやがってさ。

 きひひっ。ムカつくから拐ってやった! これが傑作で、チェスラフの見てる前で、あいつの妻のイジンカを犯してやったんだ! 俺が直々にな? いや、年増の女なんか趣味じゃないんだが、あのときは興奮したなっ! 悔しそうに泣いてるチェスラフの顔が良かったんだろうな!! でさ!! うちの奴らにも犯させようとしたら、チェスラフ死んでやんの!! 今まで色んな拷問や殺しはしてきたけどよ、憤死なんて初めて見たから俺も大興奮よっ!! な、あんたもそう思うだろ? まあ、チェスラフが死んだあとに、イジンカもうちの連中が犯してる最中に死んだんだけどな。チェスラフの憤死ほど興奮は覚えなかったな~。

 ああ、そうそう。娘が隠れていたのを見つけて、酸で顔を溶かしてやった。王都でも一番人の多い大通りで解放してやったんだが、酷い娘もいたもんだ。親の仇が目の前にいるってのに、泣きながら逃げて行きやがった。どういう育てかたすれば、あんな親不孝なむ――ぎゃっ!? は、はひゃがっ、おれひゃまのはひゃがっ!!」


 マゴの手にはナイフが握られていた。

 そのナイフでバグジーの鼻を切り落としたのだ。


「ホッホ、血はすぐに止まりますからご安心ください。

 こちら『懺悔のナイフ』というなんとも大層な名前なのですが、切れ味もそれほどよくない。ただ、止血効果があるんです」

「や、やくふぉくっ! やくふぉくしひゃだろうがっ!!」

「約束ですか?

 ホッホ、約束ですか……約束…………ふっ…………ふふっ………………ふざけるなっ!!」


 突然の怒声にバグジーの身体が縮こまる。

 老人が出したとは思えないほどの大声で、その声にはとてつもない怒りが込められていた。


「貴様のような屍肉に群がる蛆虫以下の男と約束? 誰がそのような約束を守るものかっ!!

 私がやりたくもない奴隷商に手を染めたのも、少しでもバリューの情報を集めるため、そしてなにより、お前に、お前にっ! お前のっ!! チェスラフを殺しっ!! イジンカを辱めっ!! ヤルミラの顔を無残な姿に変えたお前に復讐するためだっ!!」


 一気に捲し立てると、マゴはバグジーの右腕に『懺悔のナイフ』の刃を寝かせて押し当てる。


「ひゃっ!? や、やめ――ぎゃあ゛あ゛あ゛あああーっ!? いひゃっ!! いひゃいっ!! やめでぐ――おががあ゛あ゛ああぁぁっぁあ」


 ワザと薄く、皮膚を、肉を削っていく。そのたびにバグジーは激痛に身をよじろうとするが、身体が台に固定されているのでどうすることもできない。

 部屋にバグジーの絶叫が響き渡る。それでもマゴは黙々と、その作業を続ける。

 やがて、バグジーの右肘から手首までの肉が削げ落ちて骨が露出していた。


「ホッホ、次は左脚ですかな」

「いひゃだ!! いひゃだっ!! わるひゃった!! 俺がわるひゃったからっ!! もうやめでぐれーっ!! おやひっ、だずげてぐ――ぎゃあがががあ゛あ゛あ゛あ゛ああぁぁぁーっ!!」


 どれだけバグジーが泣き叫ぼうとも、ここは王都から遠く離れたカマーのマゴが所有する商館の地下室である。誰も助けには来ない。

 激痛にバグジーが気を失えば、気つけとばかりに耳を削ぎ落とし、それでも起きなければ、歯をやっとこばさみで引き抜く。

 何度も、何度も、マゴは繰り返す。バグジーが心の底から反省しようとも、その作業は夜明けまで続いた。


「終わったのか?」


 地下室から出てきたマゴを、ユウが出迎える。


「ええ……先ほど終わりました」


 復讐を終えたマゴの顔は憔悴しきっていた。


「じゃあ、約束どおりバグジーの死体をもらっていくぞ」

「私が言うのもなんですが、あのようなモノをどうするので?」

「マゴは甘いからこの程度・・・・で許すんだろうが、俺は許さない。これから何十年、何百年もかけて拷問してやる」


 マゴはそこで、ユウが『死霊魔法』を使えることを思い出す。

 あれだけバグジーを拷問で苦しめても、チェスラフたちを救えなかった自分を許せなかったマゴであったが、さらなる苦痛をユウが与えてくれるのであれば、死んだチェスラフとイジンカも自分を許してくれるだろうかと、バグジーの死体を運ぶユウを見て思うのであった。

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