第55話 奴隷商人との交渉②
金貨500枚、奴隷商人の爺さんは笑みを浮かべながらそう言い放った。
後ろの護衛二人の表情は変わらず無表情、爺さんは笑みは浮かべているが目は笑っていない。
爺さんを睨みながらついでにステータスを確認するとスキルに『算術LV4』『詐術LV3』『交渉術LV3』『鑑定LV6』『解析LV4』更に固有スキルに『鑑定眼』があった。
「驚かれるのも無理のないことです。しかしこの奴隷、歳は13歳でもちろん処女のうえに種族はダークエルフです。奴隷のオークションでこのクラスとなると金貨500枚でも安いかもしれませんぞ? ご存知かと思いますがダークエルフは魔力が高い、寿命も長いので性奴隷としても需要が引き手あまた」
「顔と喉に傷があるが?」
「ホッホ、神聖魔法の使い手に頼めば傷は治せます」
「面白い爺さんだな」
「
俺がDランクに上がったのは二日前、なるほどこの世界でも商人の武器は情報か。
「おや、普通の人ならここで驚くんですが……。では金貨500枚ではなく金貨113枚ではどうでしょうか? もちろん金貨113枚そのままでお売りするとこちらが大損です。そこで月に利子を1割ほどつけさせていただくというのはどうでしょうか?
Dランク冒険者の平均的な稼ぎは月に金貨15~20枚ほどと聞きます。決して無理な金額ではないでしょう」
月に利子が1割? 利子しか返済出来なければ利子だけで年間、金貨約135枚と利率120%以上、巫山戯た爺だ。キリの悪い枚数にしたのも誤魔化すためか? この世界では単純な計算を出来る人間も限られていた。大体一般的なDランク冒険者の稼ぎが月に金貨15~20枚? そこから宿・消耗品・装備の整備なんかを引いたら残るのは精々金貨5~10枚ほどだろう。
つまりこの爺は利子だけを永遠に搾り取る気だ。
「ふざけた爺だな」
「てめぇっ!」
獣人の護衛が武器の柄に手をかけるが、もう1人の護衛が止める。ダークエルフの少女も緊迫した空気に顔が青くなっている。
「ホッホ、どういう意味ですかな?」
「お前の言っていることは嘘ばかりだな。金貨500枚の価値があるだと? そんな価値があるなら表通りではなく、奥にいる高級な奴隷と同じ扱いをするだろう」
「生憎、中の部屋は一杯で――」
爺が言い訳をするが被せて話していく。
「傷は神聖魔法で治せると言ったな? なぜ治さない? 理由を言ってやろうか? 神聖魔法で治せば高額な御布施を要求されるからだ。とても元は取れないな、このダークエルフの姿を見てみろ。飯は満足に食べさせていないし、目と傷のせいで満足に話すこともできない。遠近感もどうだかな。魔力が高いのが魅力だと言ったな、魔法の使えないダークエルフのどこに魅力があるんだ?」
「そ、それは……」
爺の額に汗が浮かんでくる。今度は護衛の2人共、武器の柄に手をかけている。
「お前は奴隷の扱いがヘタ糞だ。本当に奴隷商なのか?」
「ぐぅ……少し言葉が過ぎるのでは」
護衛の2人は今にでも飛びかかってきそうな感じだったが、無視して入ってきた扉とは別の扉を見ながら――
「護衛を呼ぶか?」
俺が爺に伝えると今度は爺の顔が青くなった。
「待……お待ち下さい! お前たちもなにをしているっ! 武器から手を放しなさいっ!!」
護衛の二人が慌てて武器から手を放し爺へ謝っている。
「私の者が失礼いたしました」
「全員、儲かったな」
「も、儲かったですか?」
「あのままだとお前ら全員死んでいたから、命が助かって儲かったな」
全員が絶句した表情でこちらを見ていた。
「ホッホ……ユウ様は冗談が上手いですな。では幾らなら――」
テーブルに石貨を1枚放り投げる。
「石貨……1枚? そ、そんな馬鹿な」
「そいつの今の価値なんてそんなもんだろ?」
「し、しかしこれではこちらが大損です」
「そいつに払わせればいい。金額は金貨500枚に月に1割の利子」
「なっ!? ユ、ユウ様……この奴隷にそんな金額を支払う能力はございません」
「金貨500枚の価値があるなら払えるさ」
「では払えなかった際は、ユウ様が保証人になるということでよろしいでしょうか」
爺は少し落ち着いたみたいだ。営業スマイルを浮かべながら交渉してくる。
「それで構わない。ただしこいつが自分で支払いきったときは爺さんの眼を貰うぞ」
「私の眼ですか……? いったい、そんな物をどうするんですか?」
「決まっているだろう。そこのダークエルフに移植するんだよ。爺さんの眼は便利そうだからな」
静まり返った部屋で笑みを浮かべているのは今や俺だけだ。
「…………わかりました。石貨1枚でお売りしましょう。条件はこのダークエルフが金貨500枚を支払い利子は月に1割、支払えなかった際は再度、奴隷として私共の店へ返していただきます。しかしこのようなことをして必ず後悔しますよ」
爺が苦虫を噛み潰したような表情で話す。
「残念だな、便利そうな眼なのにな。とにかく、商談成立だ。そのダークエルフを風呂に入れてもっとましな服を着せてこい」
護衛の二人がこちらを睨んでいるが、爺が言うとおりにするよう伝えると、渋々ダークエルフを連れて出て行く。
「爺さん、あんたさっき後悔するって言ったが逆に俺に感謝すると思うぜ」
アイテムポーチからポーションを3本出してテーブルの上に並べる。
「感謝する? 馬鹿なそんなこと……これはポーション?」
訝しげにポーションを観ていたが爺の眼が見開く。このポーションの違いに気づいたようだ。
「さぁ、ここからが本番だ」
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