第20話 自称天才魔術師④

 都市カマーには今日中に着くそうだ。あれからブラックウルフ・ゴブリンリーダーなどのランク2の魔物が出てくるようになった。

 ランク2の魔物はスキルを複数持っているのが多く、良い機会なのでパーティーでの連携を練習した。ゴブリンリーダーはゴブリンソルジャーやゴブリンメイジなどを統率しており、数匹がパーティーを組んで襲ってくる。

 ブラックウルフからはアクティブスキル『咆哮』で動きを止められ、攻撃を喰らって怪我をしたニーナにレナがヒールをしている間に、俺が牽制をしたりレナが黒魔法で攻撃する隙を作ったりなど、良い経験になったし、スキルもいくつか奪うことができた。

ちなみにゴブリンリーダーとブラックウルフのステータスは――


名前 :***

種族 :ゴブリンリーダー

ランク:2

LV :15

HP :121

MP :26

力  :78

敏捷 :36

体力 :41

知力 :22

魔力 :16

運  :7


パッシブスキル

統率LV1

棍術LV2


アクティブスキル

棍技LV1

闘技LV1


固有スキル

なし


名前 :***

種族 :ブラックウルフ

ランク:2

LV :12

HP :133

MP :22

力  :66

敏捷 :100

体力 :66

知力 :13

魔力 :12

運  :9


パッシブスキル

敏捷上昇LV1


アクティブスキル

咆哮LV1


固有スキル

なし




「ユウ、なにを創ってるの?」


 俺がさっきから創ってる物に、ニーナが興味を示したようだ。使用済みポーションの空き瓶に、道端に生えていた毒消し草と近くの川から補充した水から解毒剤を創っている。


「解毒剤だよ」


 レナにはすでに錬金術のスキルがあることはバレている。ニーナが数日前から仲良くなったようで、ベラベラ話したのでお仕置きの尻叩きはすでに済ませている。

 なぜか喜んでいるようにも見えたが……。


「レナに毒を消す魔法は教えてもらってなかった?」

「魔法を封じる魔法やスキルだってあるだろうし、MPが切れていたらどうすんだよ。それにこれはお前のために創ってるんだぞ」

「えぇっ! 私はユウかレナに治してもらうほうがいいな~」

「離れた位置で毒を喰らったらどうすんだよ」

「な……なるほど」

「……ユウはよく考えている」

「名前で呼ぶな。お前、賢者になりたいそうだな? 学校に百万マドカ? 金貨で100枚か……。まぁ、そんくらいならすぐ貯まるだろ」  

「……そんなわけない。あと、私はお前じゃないレナ……」


 ニーナが近づいて来て、ヒソヒソ話してくる。


「ユウがポーションを創ったりご飯も自給自足だったから、クエストの報酬や素材の売却はそのまま儲けになったけど、普通はポーション代・宿屋代・装備の整備や新調とかで、私たちみたいなランクの低いパーティーが金貨100枚なんて何年もかかるんだからね」

「そうなのか……。ところで賢者になると良いことでもあるのか?」

「「!?」」


 ニーナとレナがなに言ってんの? って顔でこっちを見てる。


「賢者になれば王都の城で宮廷魔術師として将来を約束されてるんだよ!」

「……それに賢者になれば様々なスキル・魔法を覚えられる」

「そもそも賢者――いや、ジョブに就いて意味あるのか? 王都で働けるのが安泰って意味はわかるけど」

「ユ……ユウ、なにを言ってるのっ!? ジョブこそ就かないと! スキル覚えられないよ?」

「……魔法も同じ」

「俺はジョブに就いてないがスキルも魔法も覚えてるし、ニーナだってスキル増えてるじゃないか」

「私はシーフのジョブに就いてるよ。だからシーフ系のスキルを覚えやすくなるんだよ。

 それに覚えてるのだって、シーフ系統のスキルばっかりだよ~」

「……私は母親が司祭だったので、白魔法を教えてもらったから使える。

 それでもジョブが魔術師なので大変だった」


 ニーナもレナも熱く語ってくるが、スキルを奪うことの出来る俺にはあまりジョブに就くメリットは感じられなかったが、ジョブに就くメリットはジョブの特性にあった。

 スキルを覚えやすくなるのと、ステータスに補正効果があるそうだ。

 賢者になれば魔法の消費が減るスキルや、魔力の上がるスキルなどがすぐに覚えれると、レナが唾が飛ぶくらい熱弁していた。

 ずっと横で話し続ける二人を無視してると、前から馬車が近づいてくる。すれ違う際に乗ってる奴を見ると、レナを馬鹿にしていた冒険者たちが乗っていた。皆、どこか落胆しているようで一様に顔が暗い。


(なんで戻ってくるんだ?)


「ユウ、カマーが見えてきたよ~」


 都市カマー、確かに都市だ。こっちの世界ではレッセル村とビビット村しか知らなかったが、伊達に王都の次にでかい都市なだけはある。都市の周りは城壁で囲まれており、門には門番らしき姿も見える。


「カマーに着いたし、お前との旅もやっと終わりだな」

「……?」


 レナが首を傾けて見てくる。


「都市カマーに着くまでの間、旅をするって話だったろうが」

「ユウ、なにを言ってるの? レナは私たちとパーティーを組むんだよ~」

「っ!? なんだよそれ! 俺は聞いてないぞ?」

「あっ、言うの忘れてた。えへへ」

「……ユウ、ニーナ、天才魔術師の私がいるこのパーティーは最強!」

「最悪だ……」

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